2.この世界の暮らし

私が生まれて2年が経った。

私が生まれたあの日、自分が置かれた状況に気づきパニックで大泣きしてしまった。
それはもう、何処にでもいそうな赤子の様にね。

それから、2年。
何度も考えに考えた結果、私は生まれ変わりをしたのだと、結論付けた。
しかも、ただの生まれ変わりではない…。前世の記憶を持ったまま、生まれ変わったのだ。
愛する旦那、愛する娘の記憶。思い返す度に私は泣いた。旦那と共に歳を取れなかったこと、娘の成長を見れなかったこと、思えば思うほど、自然に涙が止まらなかった。

そんな度に泣き叫ぶ私を甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたこの世界の母

「あなたは泣き虫ねぇ、ナマエ」

「大丈夫よぉ、愛してるわ、ナマエ」

この女性、私の母は
ビアンカ さん、と言うらしい。この島1番の美人だと、出産に立ち合った年配の女性が言っていた。
それに、私が産まれたことで仕事を休んでいるのであろう母の家に何人もの男の人が来た。子が出来ようとこの女性の魅力は落ちる事を知らないのだ。

「まっまぁ〜、これ!」

「あらぁ〜ナマエ、なあに?くれるの〜?」

「ん!」

短い手足が思うように動かないのには苦労するが、それなりにやれていると思う。中身はもうすでにおばさんだが、周りの人から可愛い可愛いともてはやされるのは気分がいいものだ。

「やだぁ〜ナマエ〜すっごく嬉しいわ〜」

そう言って笑う母は今日も綺麗。

今でも愛しい前世の記憶を思い、泣く事もあるが
こうして笑っている母を見ると不思議と涙が止まるのだから母は偉大である。

「ナマエ
愛してるわ」

ちゅっ、と可愛い音を立て私の額ににキスをする。母が1日1回は必ず行う儀式。

愛してる、幸せになって

そういう意味が込められたこの島のおまじないなんだとか。私は愛されている。そう思うとさっきとはまた違った涙が出た。急に泣き出した私を困った様に見つめた後、あの綺麗な笑みを浮かべる母も幸せそうだった。

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愛しい旦那様、愛しい娘へ

私は今、幸せに暮らしています。愛しい貴女達がどうか幸せであります様、遠い世界から祈っています。

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