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それからというもの毎日毎日、飽きることなく求婚を迫られていた
『だーかーらー!結婚はしません!』
「何でだよお!あの時握手してくれようとしたじゃんかあ!頼むから結婚してくれよお!お願いだよお!!!」
『握手なんて挨拶なんだからするでしょう?!』
場所を問わずそんな調子で、街に出れば他の女の子にも同じように迫るのだから本当にやめてほしい。
その度に私は怒るのだがそうすれば次は私に求婚を求めてくるのがいつもの流れだ
この人は誰でもいいのでは……?とすら思えた
そこで私はふと疑問に思ったことを鍛錬の休憩中に彼に投げかけた
『どうしてそこまで結婚にこだわるの?』
彼は異常なまでに結婚にこだわるのだ。
そう彼女ではなく何故結婚なのか不思議だった
その言葉にピクリと反応を示す彼は俯き、口を開いた
「俺、捨て子で誰からも必要とされずに生きてきたんだ」
え、どういうこと……?
その言葉に私は驚きを隠せない
「家族の温かさも友達と遊ぶ楽しさも分からず生きてきた。結婚すれば家族ができるし、裏切られることもない。そしたら俺も幸せになれるのかなって……」
だから女の子に声をかけたけど結局借金まみれになって、手も繋がせてもらえずで終わったんだ
私が思っていたより衝撃が大きすぎるせいかどう言葉をかければいいか分からなかった。
後半の言葉は以前、おじいちゃんから聞いていたがこんな過去があったことは知らなかった
ただ、ただ苦しくて悲しかった
「悲しい音がする」
彼はそう言った
『ど、どういうこと?』
「俺、耳がすごくいいんだ。だから注意深く聞けば心音や呼吸から感情も分かる」
寝ている時にも相手の音が分かる。
と話す彼はまた悲しい表情をしていた
『ねえ、何でそんな悲しい顔をするの?』
私の言葉に一度こちらに目を向けたが直ぐにまた俯いてしまった
「だって気持ち悪いだろう?」
自分の考えていること、行動など全てが見られている
そう思えば気持ち悪いでしょう?
と彼は話した
あぁ、そっか、彼はずっと1人だったんだ
昔の私をふと思い出してしまった
暗闇の中にただ1人立っていた
それはどれだけ悲しくて苦しいことかは分かっている
『気持ち悪くなんかないよ』
「え、」
『だってそれだけの力があってもあなたは人を疑うことも恨むこともしていない。』
そうだ、それだけ優れているものがあれば利用だって出来るのに彼はずっと人を信じたのだ
どれだけ嘘の声が聞こえても尚、信じ続けた
『だから私は気持ち悪くなんて思わない。善逸さんはとても素敵な人だよ』
手をぎゅっと握り、そう言えば瞬く間に耳まで真っ赤になる目の前の彼
このまま死んでしまうんじゃないんだろうかと不安になるほど体温も上がっていた
「へあああああ?!?!?!そ、そういうこと言われたら俺、期待しちゃうよ?!?!!何もう結婚しちゃう?!?!そういうことだよね?!?!」
情けない声を出し、先程の空気を覆すかのような興奮で話す彼を見て私は一言言った
『結婚はしないけど』
「けど?」
『お友達だったらいいよ』と。
グズグズと泣いていた彼が満面の笑みになった瞬間だった
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