2
どうしたものか、ここまでくると本当に才能がないのでは?とすら思う

鍛錬後、屋敷の近くにある池をぼぅっと眺めながら思った
これじゃダメって頭では分かっている
おじいちゃんは優しいから「恩返しだなんて考えなくていい」と言ってくれているけどダメなの
あの時、もし、おじいちゃんが来てくれなければ間違いなく私は今こんな幸せな日常を送ることは出来ていなかった
だから頑張らなくちゃいけないって思うのに……
頭ではわかっていても心が、身体がついてきてくれない

『なんで……』

涙がほろりと出そうになった時であった
突然、身の毛がよだつような感覚に襲われた

「美味しそうな臭いがする、これは稀血かぁ?」
ゆっくりと後ろを振り返ればそこに居たのは鬼だ

『あっ……』

ガクガクと震える脚
身体は完全に恐怖に飲み込まれていた
鬼が手を振り上げこちらに攻撃を仕掛けてこようとした時だった
意識が戻り、既のところで避け、鬼に背を向け走った

「追いかけっこかぁ?いいぜぇ」
気味の悪い笑みを浮かべ、追いかけ始めた

どうしたら……
どうしたらこの場を乗り切れる?
おじいちゃんのとこに戻ろうかとも考えたが迷惑はかけたくないとその考えはすぐ無くなった
でも、私の力では鬼を退治することはできない
そして、鬼の言ってた稀血って何?
考えながら走っていたせいか足元を見ておらず、木の根っこに足を引っ掛け転んでしまう

「もう終わりかあ?」

振り返ればあれだけ逃げたはずなのにすぐ後ろに鬼はいた
あぁ、もう終わりだと確信した
恩返しも出来ずここで終えるんだ
目を瞑り、くるであろう衝撃を待った
走馬灯のように思い出すおじいちゃんの言葉

「形にとらわれるな、お前のやりたいようにやればいい」

やりたいように……
呼吸をすると辺りが冷たく感じた
これは私の力のせいなのか
恐怖のせいなのかなんて分からなかった
ただもう脚の震えは止まっていた

『氷の呼吸……壱ノ型 繁吹き氷』

鬼を覆うかにように氷が降り注ぎ、動きを止め、頸へと刀を振り落とした
目を開ければ頭と身体が切り離された鬼がそこにはいた

「くそ!あと少しで……!あと少しで強くなれたっていうのに……」

鬼はそう言いながら灰となり消え去った
手に残る鬼を斬った時の感触
辺りが冷えた感覚はもう無くなっていた
今まで1度も使ったことなかった
だけど私にはきっとこれなんだ
そう思えた

屋敷に戻ればおじいちゃんが私を探していたようでこの出来事を話せば「無事で良かった」と抱きしめられた

―――――――それから数ヶ月後だ

私は氷の呼吸を形にすることが出来た
今まで出来なかったことも出来るまでには成長を遂げた
いつも通り鍛錬に励んでいれば街から帰ってきたおじいちゃんの後ろから見える俯いたままの黒髪の男の子がいた

年齢は私と同じくらいだろうか……?

「今日からお前と一緒に修行をすることになった我妻善逸だ。仲良くしてやってくれ」

おじいちゃんの言葉に私はその子の近くに行き、手を差し出した
ちらりとこちらを見る男の子はとても悲しい顔をしていた

『私の名前はみょうじ なまえ。よろしくね』
と言えば、先程までの悲しかった顔ではなくなり、すごい形相でこちらに抱きついてきた

「俺と握手してくれるなんて俺の事好きってことだよね?!きっとそうだ!絶対そうだ!!これはもう両思いってことだよね?!ねえ、結婚しよう!頼むよおお!」

まくし立てるようにその言葉を言い切れば、びーびー泣き始めた
私は突然のことに頭がついていけず呆然となる

「こらああ!善逸!!!そんなことしとらんで早く修行の準備しろお!」

頭を思い切りゲンコツで殴ればそのことにさらに喚き始める男の子
首根っこを捕まれ、ズルズル引きずられながらもこちらに目を向け「結婚しよう!」と叫び続ける様子に私は何も声をかけることが出来なかった

いや、したくなかったの間違いかもしれない
2/11
prev  next