すっと手を目の前の彼の頬に伸ばす。あぁ、おかしくなってしまったのだろうか。自分も彼も。
後戻りが出来なくなるぞ。もう、友達じゃなくなるぞ。
知ってるよ。でも止まれない。
無意味な自問自答。どうせ理性は欲に勝てない。
そこに廊下から足音が聞こえ、その次に喋り声が聞こえた。
はっと我に返り後ろに下がる。目の前には顔を真っ赤にして震える炭治郎の姿が。
なんてことをしてしまったんだ!!俺は自責の念に駆られる。
だって、炭治郎が可愛かったんだもん。仕方ないじゃん!未遂だし!!と言い訳をしてみるが、意味がない。
どうしよう。傷付けた?もし、縁を切られたら生きていけない…!
じわりと涙が出てくる。その姿を見られたくなくてふぃと顔を背ける。
もう駄目だ。見て見ぬふりは出来ない。俺は炭治郎が好きだ。好きで好きでたまらない。押さえつけていたから感情が爆発してしまったんだ。
ずりと鼻をすする。泣きたいのは炭治郎だ。男に襲われそうになったんだから。好きなやつでも無理矢理は怖いだろう。
「・・・いつ!!善逸!!」
名前を呼ばれ振り向く。俺の顔を見るなり目を丸くして、なんで泣いているんだ?と微笑みながら優しく声をかけてくれる炭治郎にさらに涙が出てくる。
「お前を襲いそうになったから」
そう言うと炭治郎は抱き締めてくれた。震えながら恐る恐る抱き締め返す。
「そんなこと考えてたのか。善逸は優しいなぁ。」
「そんなことって、男に襲われそうになったんだぞ!?」
そう叫ぶと、少し体を離して困った顔をしながら
「善逸は俺が善逸のことを好きだと気付いてたんだろう?」と問いかけてくる。
「うん。多分だったけど、女の子の所に行かないでって言われた時に確信に変わった。」
「やっぱり善逸は優しいな。好きだからいいじゃないんだな。」
炭治郎はそう呟く。
「よし!!わかったぞ善逸!!俺のことを善逸に好きになってもらう!!」
「・・・はぁ!?いやいやどういう思考回路でそうなったの!?今まで暗かったよねぇ!?シリアスだったじゃん!!ねぇ!炭治郎さん!?」
「しりあす・・・?よく分からないが、そういうことで!!明日から覚悟しておいてくれ!!」
「ちょっ!まっ!!炭治郎!?」
炭治郎は、がちゃんと生徒指導室を飛び出してしまった。
その扉に向かって「もう好きなんですけど!?」
と俺は叫ぶことしか出来なかった。
嵐の幕開けだ。
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