ふと、笑った時が可愛いな、とか。同級生と楽しそうにしていると面白くないな、とか。思えばいくらでも兆候はあったのだと思う。それを無視し続けたのは友だちの関係であっても炭治郎が俺を蔑ろにすることなんてなかったから。――まあシンプルに調子に乗ったよね。炭治郎の優しさに胡座をかいて余裕ぶっこいてた結果がコレなわけですよ。違うことなき自業自得だわ。
 ちゃんと好きだと自覚してれば、きっとあんなひどいことは言わなかったし、炭治郎にもあんな音をさせずに済んだのだ。タイムマシーンがあるなら戻らせてくれ。
でも、でも、

「俺のことを善逸に好きになってもらう!!」

……一体何してくれるんだろう。
 うへへ、と笑いが漏れて授業中なことを思い出し、慌てて口を閉じた。隣の席の奴がちらっと不審者を見る目をこちらに向けた以外授業は滞りなく進んでいく。先生がここは引っかかりやすいところだとか何とか説明してるけど相変わらず頭に入ってこない。進路は大丈夫なのか善逸!と怒鳴るイマジナリーじいちゃんには早々に脳内から退出してもらった。
 ああそうだよ困らせて傷付けて、なお受け容れてくれる炭治郎に何事もなかったかの様に甘える腹積りですよゲスだクズだお好きな暴言をどうぞ。好きな子から自分を好きになってくれるようにアピールする宣言されて、期待しない男がどこにいるって言うんだ。そんな罰当たりがいるなら俺が風紀委員長の名にかけて即粛清してやる。
 炭治郎がだぞ。あの堅物で真面目でおぼこくて可愛い炭治郎が俺に好きになって貰えるように頑張るんだぞ。俺も好きだよって伝えるのは簡単だけど、こうなれば種明かしはちょっとくらい美味しい思いしてからでもいいだろ?!むしろここは知らないフリする方が男として正解でしょうよ!?
 ああ、寝る前にハートマークのついたLINEとかきちゃったらどうしよう。ご飯に大好きって書いてあるお弁当とかベタなことしそうだな。部活入ってたら応援とかきてくれたのかなぁ。なんか適当に入っとけば良かった。炭治郎ってば大胆過ぎそんなに好きアピールされたら炭治郎の事どんどん好きになっちゃうよ。
 妄想上の炭治郎が顔を真っ赤にしてスマホと睨めっこして、朝早く起きて俺のためにお弁当を作ってくれて、俺が部活で活躍すると花の様に笑ってくれる。
 やばいこれ、妄想だけで幸せすぎて鼻血でそう。
 炭治郎が好きってこと、認めてしまえばそれはとてもしっくりきて、焦燥と虚無で埋められた胸の内を暖かく包み込んでくれる様な心地だ。
 授業が早く終わらないかとソワソワしてしまう。時計の秒針がやけに遅い。今すぐにあの優しい音の所へ飛び込みたくて、俺はチャイムの音を今か今かと待っていた。