妊娠して出産して、しばらくは働いていた。
なまえだったがあるとき何か枷が外れたかのような感覚が体を巡った。そして出産のためにしばらくクラウディアの戦艦を合わせて帰還させてくれた旦那であるクロノに訴えるべく、ご飯を食べたあと詰め寄る。

「もうやだ、クロノくん、私も子育てしたい!」
「え?してるじゃないか」
「今みたいな一時間二時間、あとは寝てるときの世話だけじゃなくて、子供たちと外にでて公園で遊んであげたい!クロノくんと一緒になって子育てしたい!」
「…?遊べばいいじゃないか?」

一緒に食器を片付けてくれるクロノはきょとりと目を丸め動きを止めてなに言ってるんだ?と首を傾げる。

「う、だって、非常勤になっても出勤日数変わらないし…夜勤なくなったくらいじゃ全然一緒に行けない…」
「というよりも、なんでなまえ、育児休暇取らないんだ?」
「育児休暇…?」
「出産だって溜め込んだ有給だっただろ?」

しどろもどろと、言葉を紡げばクロノから放たれた言葉は、まさに目から鱗が落ちるとはこのことであった。なんて馬鹿なのだろう自分は。呆然と項垂れる。その後の行動は素早かった。無言で片手を上げスライドさせ空間モニターを出し管理局本局へと繋ぐ。

「なまえ・ハラオウンです。管理課に繋げてもらえますか?はい、お願いします」

しばらく待った後担当の人物が来たためか花が飛んだ。

「えっと、なまえ・ハラオウンです!お疲れ様です。あの私しばらく育児休暇とろうと思うんですけど手続きお願いしてもいいですか?あー、はいはい。急で申し訳ないです。え、明日そちらに?はい、わかりました、では失礼します」


プツリと切れた画面を手でスライドさせ素早閉じて子供と戯れているクロノの元へと駆ける。

「クロノくーん!好き!リンディさん、お義母さんのところにも今度顔見せにいこうね」
「じゃあ休暇申請しとくよ」
「ありがと、あ、あんまり騒ぐと起きちゃうよね、気をつけなきゃ」

クロノに飛びついた体勢から体を起こし、二人の子供へタオルをかける。双子ということもあり見分けがつくようにおくるみの色を変えている。淡い赤色が男の子のコウ、淡い橙色が女の子でユウ。ファミリーネームがカタカナ表記なのでカタカナの名前で、けれど漢字にも意味をもたせるために考えた名前だ。まあ趣味に走って双子だから突拍子もない名前を名付けようとしたのを止めたのは子供たちのためだ、もちろん。文字通り日本の意味で、音を意識した名前だ。

ふにふにとほっぺたをつつきながらこの時間がとても幸せだとクロノとふたりで顔を緩めた。