なまえの実家は古くから伝わる曰く付きの名家だった。代々子供に手渡される家宝。それがラディアルークだった。

もちろん、誰でも起動することができるわけではなかった。自我も形成されない幼い頃代々の子供たち全員に1度装着される。適性からラディアルーク自身が主人を選ぶ。言い伝えとしてみょうじ家に伝わっていた。


史実として選ばれたのは初代含めて2人しかいない。なまえは3人目だった。


なまえがルークを受け継いでから2年ほどたったある日、この街に魔力反応を感じた。なまえは伝承者と認められてから、他人との関わりを極端に避けるようになった。元々の性格もあっただろうが、自信を否定されるのが何よりも嫌がった。その結果ルークに言われるまま訓練を行い、それ以外は自室にこもり娯楽へと逃げたのだ。

魔力反応を感じたその日は特に関わる気はなかった。ただ、その日を境に不可思議な現象や、明らかな魔導師ではない魔力反応を感じ取り、いい加減ルークに急かされ様子を見に行ったところ2人の少女がドッカンドッカンやり合っているのを目の当たりにした。

このとき、私、なまえは6年生だった。



その後、そのうちの1人を見つけたのはすぐだった。小学校のバスの中だった。才女と呼ばれるみょうじ家と同じく名家のアリサ・バニングスと月村すずかが両隣にいた。


その子、高町なのはの名前を知ったのは体育館で、彼女が並んだ列をたまたま見かけ、たまたま前後に並んだクラスメイトに目敏く察しられたからだ。

「みょうじさん、高町さんのこと知ってるの?」
「え?えっと、高町さん?」
「ほら、さっきじっと見てた子。高町なのはさん。白のリボンの子」
「あ、や、えっと何処かで見かけたことがあったからどこだったかなぁ、って思い出してたの」
「へえ、そうなんだ、たぶん喫茶翠屋じゃない?よくお手伝いしてるし!」
「あ、そうかも、ありがとー」

へらりと愛想良く笑い、得た情報にあの人気なお店か。とひとつ頷く。

「た、か、まち、なのは…か」

呟いた言葉は喧騒の中に飲み込まれた。







それは、本当にたまたまだった。

ルークが近場で強大な魔力反応有りと急かすので慌てて家を飛び出し、その場に向かった。

ルーク曰く、放っておくと近所にまで影響を及ぼすとのことだったので利害を兼ねて原因を詰んでおこうと、なまえを上手く操作していた。


「せっかくレベリングしてたのにー」

<<終わったらまたやればいいでしょう>>

「でも計算とかさ…」

<<先ほどの記録は私の中に入ってますから、機体が壊れるよりもいいでしょう?>>

「仕方ないなぁ」

そこまで嗜まない人にとってはどうでもいいことでも、ゲーム機が壊れるとなれば黙っていられないなまえとしては、それだけで根源を詰むために働く理由となる。

実際はゲームが壊れるよりも家が壊れる実害レベルを前提としてあげればどれほどきけんなのかはわかるのだが、所詮、ラディアルークもなまえに侵されてきているのだ。

1年ほど前兄弟から主人に似るの?とペットのような言い草に起こったのはルークとなまえだった。まぁ、似てないこともない。そのときの微笑ましそうに笑ったのは両親の反応だ。



「うあ、もしかして、これ…だよなぁ…」

家から駆けたなまえは目的のものを素早く見つけた。それは規格外に大きな海の生物だった。

なんでこれで騒ぎにならないんだ。なまえは大げさにため息をついた。






ここは家から1キロと行ったところだ。近い。跳ねて津波なんて起こされては確かにゲーム機なんておじゃんだろう。ていうか、家にあるもののほとんどがダメになってしまう。バリアジャケットを装着し、ルークに杖を出してもらい構える。


「これ、どうしたらいいんだろ」

上空に移動し思わず遠い目をして、現実逃避する

<<操られてるので、根本を封印する必要があります>>

「て、ことは非殺傷モードのがいいね、魔力刺し込むかなぁ」

<<イエッサー>>

手早く展開された魔法陣。
公園側に津波起こしたらまずいので思わず公園を背にしていた。

「アイスランサー!」

上空から32本の槍が出現しそれぞれが大型生物を特定する。なまえは掛け声とともに杖を振り下ろし発射させる。
かなりの巨大なため吸い込まれるようにそれぞれの胴体に刺さった氷の槍はうまいこと巨大生物に致命傷を与えたようだった。

<<ジュエルシードNo.V>>
「封印!」


杖から大出力の魔力が伸びジュエルシードに命中した。最終的にルークの核に引き寄せられるように吸い取られていった。封印で魔力を減らしたなまえはルークが張っていた結界とバリアジャケットを解き真夜中に溶け込むようにその身を翻した。


しばらく走ってすれ違った綺麗な金髪の少女。一瞬だけ交わった視線は吸い込まれるように漆黒に染まっていてなまえの頭から離れることはなかった。




そして今日の出来事を境に彼女、のちの後輩である、高町なのはとの接触が始まったのだった。