あらかた話終えなまえは最近話してばっかりだ。そういえばこないだもイタチにこれからのこと話したしなぁ、と妙な気だるさを覚えた。事実を話すにしろ考えて話さないといけない相手ばかりでなまえは目眩を覚え、酷く逃げたくなるが、目の前には兄と三代目。なまえは静かに彼らの言葉を待った。


「色々言いたいことはあるけど」

そう前置きした兄に視線を向ける。昔と変わらずまっすぐに私を見る。それがくすぐったくて彼の口元に意識を集中させる。

「なまえは、里のためずっと頑張ってたんだね」

兄の台詞に三代目が豪快に笑った。

「ミナト、なまえは里のために頑張ったわけじゃない。お主は眠っていたが、あの時のなまえの言ったこと今でも思い出せるわい」

懐かしむように三代目が苦笑した。
それにつられなまえは罰が悪そうに視線を逸らす。思い当たる節が多すぎる。あの時三代目を脅しまくった覚えしかないぞ…三代目根に持ちすぎじゃないですかもう!

「クシナの出産という極秘事項が漏れ、三代目の直属の暗部があっさりと殺され、結界に侵入…事実里があんな状態で、政治力、実行力ともに力あるものが関わっている可能性が極めて高い。そんな中、誰がお主ら3人の面倒を頼めるか、なまえはそう言ったんじゃよ」

「えっと…そんなこと、」
「言ってないなんて言わせんぞ?」
「……」

しらばっくれようとさりげなく訂正を入れて見たがあっさりと却下された。

「あと、そうじゃな

ーー生きているという事実を知っているのはこの場にいる自分と儂だけにして欲しい。
もし保護すると、交代制でどこから情報が漏れてしまうかわからないから、自分以外に護衛は必要ない。ーー

儂がいくら無茶だ無理だと言っても聞く耳を持たずに挙句には

ーー…隠し切れるかはわからないけど、そのための方法も大体考えてあるし、確実だ。それに、子供でも貫きたい思いはあるんだよーーじゃったか?なまえよ。」

自分の黒歴史が掘り返させる気分ってこんな感じなのだろうか。けれど私はその選択を選んだこと、今でも後悔していない。

それに、わたしは、一人の力じゃ無理だったけど、たしかに護りきれたと思ってる。

チラリと兄の様子を伺うように見やれば目を見開いて呆然と口を開いていた。わなわなと震えたあと信じられない、と言った様子で三代目を見ていた。

「なまえが、そんなことを…?」

「うむ。」

「なまえが…」

沈黙してしまったミナトになまえは居心地の悪さを感じる。なまえにとっては彼らが生存し、ナルトと共に生活する。それだけを目標に今まで努力してきたのだ。他人に否定されてもなんとも思わないが、兄だけには、ミナトだけには否定されたくなかった。

ぎゅっと拳を握りしめる。

「なまえ、ゴメンね」
「……?」
「不甲斐ないお兄ちゃんでゴメン」
「な…に、いってる、の?」
「家族のこと大事にできなくてごめん、幼かった妹に押し付けるように眠りについてごめん、今も昔も、甘やかせなくて、心細くしてゴメンね…。

なまえ、ナルトのことありがとう」

ゴメンねと謝るミナトに、なまえは涙を溢れさせた。ちがう。一つ一つのごめんになまえは首を振って答えた。

違う。違う。
私は今まで、忙しくて、遊びたいざかりのはずの兄さんが少しでも私と一緒に過ごしてくれて嬉しかった。感謝こそすれども謝られることなんかない。
久々に私に家族の暖かさを教えてくれた兄さんに、私は生きていて欲しかった。そのためには、力の出し惜しみなんて考えもしなかった。たとえバレたって、異端だって思われても、一人で暮らすことになったとしても大切な3人が笑って過ごせる時を私が見たかったから。

「なまえは今まで我儘なんて言ってこなかった。そんななまえに甘えてたのは俺だったんだよ」
「兄さん…」
「俺はね、火影様と話をしてたんだ。5歳で甘えたがる年齢なのに我儘を全く言わないなまえの事を。なまえは俺達に遠慮して言えなかったんだと思ってた。だからなまえの初めての我儘はたとえどんなことでも受け入れようって。
…まさな初めての我儘が俺たち家族のためなんて思いもよらなかったけどね」

ミナトの言葉に当時のことを思い出したのか火影が苦笑いを浮かべた。

「わ、たし、昔も、今も、誰かと意見をぶつけることとか苦手で、兄さんのこと、いつも尊敬してた。私がひっくり返ったってできないことをこともなげに簡単にできる兄さんの後ろに隠れて、いつも過ごしてた。

年の離れた私を兄さんは凄く可愛がってくれて絶望していた私を救ってくれたんだよ。本当はね、兄さんもナルトもクシナさんも、木ノ葉じゃない何処か別のところに匿ってしまおうとも考えた。

でもね、兄さんの居場所を守りたかったから」


全部全部行き当たりばったりになった自分が何よりも許せなくて、なまえは悔しかった。10年も眠りにつかせてしまった。歯を噛み締めるなまえに火影は瞠目した。


「なまえよ、今まで言わなかったがお主は不甲斐ない儂の代わりに里を守り、救った。それだけでも十分に恩義がある」

なまえは忍としては当時新米であったが、魔導師としては一流だった。一体一(サシ)での敗北は考えられなかった。それだけの自負もあり、実績もあった。それなのに、だ。逃がしてしまった彼の責任をなまえ自身が重たく受け止めていた。

普段そこまで深く考え込まないなまえは、自分がいかにこの事件を軽く考えていたのか、舐めていたのか突きつけられた結果だった。

「なまえ、俺はね、キミのこと誇りに思う。」
「………っ…」
「なまえがいてくれて、クシナや俺が亡くならずにすんだ。あの時なまえが叱咤してくれたから。」
「も、もう、いいよ。そんな済んだ話…ナルトも帰ってきちゃう…急いで4代目が復帰したことを里に知らせなきゃ…」
「もう一日二日くらい家族でゆっくりする時間くらいあろうて。なまえとナルトとミナト3人で、な。」
「先生…」
「…ん、ありがと。てことは私の任務誰か代わりに行ってくれるの?」

なまえは翌日に入ってる任務を思いだし頬をかく。火影は仕方ないと苦笑しカカシにでも頼む。と続けた。

「家族、水入らずだねなまえ」
「うん、うん!」

二度となくしたくないと誓った家族。なまえは時間がかかったが目覚めたミナトの回復に心から喜んだ。