お茶をすすり、リンディがほっこりほおを緩めていたが、クロノの「艦長」という嗜めに彼女は苦笑いを浮かべもう一口啜ってから話を始めた。


「ふう、それでね?あなたを呼んだ理由は、あなたの持っているロストロギア…異世界に存在した高度な魔法技術の遺産物、ジュエルシードについてなの。」

「ジュエルシード…」

ジュエルシードとは、私がこの間封印した青い色をした物だろう。ルークがそんなこといっていたような気がする。

「そう、今、私たち時空管理局は地球の鳴海市を中心に散らばってしまったジュエルシードを集めているの。ジュエルシードはね、全部で21個存在し、一つ一つが強大な「魔力」の結晶体で、周囲の生物が抱いた願望を叶える特性があるの…それも自覚の有る無しにかかわらずに。純粋に、願いの通り叶えられるのならそこまで大きな問題にはならないわ。だけど…」

「ジュエルシードは、力が強過ぎて願望が歪に叶えられてしまうんだ」


「なるほど、どんな願いかはわかりませんが、これまで鳴海市で起きていた不思議な現象については納得できました。それで、時空管理局…でしたっけ、あなたたちは私が封印したそのジュエルシードを使う予定なんですか?」

「使う予定はさらさらない。ただ、それを欲しっている人物がいるのはたしかだ。」

欲しっている人物…なまえはこの場にいない金色の髪をした少女を思い出した。そういえば、あの子はなのはと対峙していたな。ちらりとなのはを見れば掌を握りしめじっと話を聞いていた。


「ジュエルシードが渡らないようにするため、今は回収を急いでいるんだ。」

クロノがそう締めれば、リンディがさらに続ける。

「なまえさんが持っていることで、もしかしたら、狙われる可能性や不必要な戦いが生まれるかもしれないわ。」

「つまり…、回避するために、これをよこせっていいたいんですよね。」

「寄越せ、とは人聞き悪いわ、たしかに返すことは出来なくなるけれど…そうね、見返りも何もないことになるものね、困ったわ…なまえさん、なにか希望はあるかしら」

希望って言われても そんな大層な要望も願望もない。人とあまり関わらず、ストレスなく、ゆったりのんびり過ごせればそれだけで満足ななまえにとってあまりに壮大で意味のない質問だった。


「えっと…別に…」
「あら、困ったわね…」
「というか、私には不要の産物なので別にあなたたちに渡そうが、その、欲している人に渡ろうが別に…」
「なまえさん!?」
「それは駄目だ。」

私のヤル気のない声になのはが悲鳴に近い声をクロノが睨みを利かせる。

「あ、はは。じょーだんですよ」

「なまえさんがいうと冗談に聞こえないですよぅ…」

なのははがっくりと大げさに肩を落とした。そんなこといわれても、私だって冗談くらい言うよ普通に。と頬をかく。

「えっと、とりあえず、ルーク」

愛機に告げればポゥと音を発しジュエルシードが現れ手に取る。特に感慨もなく目の前の何か言いたげなクロノに渡し、なまえは立ち上がる。

「えっと……」

これで要件がすんだのなら、帰りたいんだけども…と告げようと口を開いた瞬間ブザー音が鳴り響く。このエマージェンシーコールになまえは頭痛を覚える。

これは酷い。

フラグ回収乙。

SNSや某掲示板でこんな返事が来そうな流れになまえはこのまま流れに身を任すことに決めた。






「どうしてこうなった」

ため息とともに吐き出た言葉。
目は座り、杖を構えるなまえは目の前の出来事から意識をそらし認めるのを拒む。

<<ごめんなさいね、無関係なあなたまで巻き込んでしまって>>
「いやー、」

リンディからの念話に、現在海の上のなまえは曖昧にへらりと笑う。心の内で本当に。と内心つけたすことを忘れずに。

どうやらあちらさんが動き出したようでなぜか、本当になぜか私まで着いてくることになってしまった。頭をかきながらまあ、ここまで着いてきちゃったし仕方ないな、と腹を括る。

あーあ、もう日が暮れちゃうぞ…


「フェイトちゃん!」

大きく波打つ現場に着いた時には、なのはにフェイトと呼ばれた少女が荒くロストロギアに全力で挑んでいた。

なまえはその少女を見て、ん?と何か思い当たる。このすれ違った子だ。あの日見かけた光景をうろ覚えながらに蘇り、なんかすっごく深い闇を背負っているような目をしていた、と余分なことを考えつつなまえがどうするべきか悩んでいるところなのはからの声が掛かる。


「すみませんなまえさん!私に行かせて下さい!」
「え、あ、はぁ、どうぞ」
「ハイっ、ありがとうございます!」


元気に飛び出したなのはを見てなまえはルークに声をかける。

「じゃあなのはが負けた時のために大きいの用意しようか。」


ルークのOKという返事を聞いて辺りを見回す。ちょうど海の上で、水もたっぷりあるし…これなら魔力少なく済む。
なまえはなのはの邪魔にならない位置をザッと測り停止する。


見据える先にはいくつものジュエルシードが魔力共鳴し渦を巻いて海水で竜巻が生成されていた。