死ぬと言われ全力でやらない奴は命がおしくないんだと思います。膝をつき両手を床につけ肩で息をする。

 思わず生死を彷徨いかけた。
 やり方を知っていてもそんなにすぐにできるものじゃないんだね。まあ普通に考えたらそうか。

 これは何度も練習しなければ。ここでいうと修行だっけ?モラウが「まあこんなもんか」と呟いたのが聞こえた。できの悪い弟子ですみません。

「これから毎日一人で"燃"
俺といるときは"念"を並行してやっていけ」

 さらさらとノートに字を書く
 意思の強さ、である燃。これは念の精度につながる。確かに一人でもできる。頷き返事する。

 先ほど説明された中には念についての内容もあった。
纏(テン)とは、オーラが拡散しないように体の周囲にとどめる技術。纏を行うと体が頑丈になり、常人より若さを保つことができる。
 絶(ゼツ)とは、全身の精孔を閉じ、自分の体から発散されるオーラを絶つ技術。気配を絶ったり、疲労回復を行うときに用いられる。
 練(レン)とは、体内でオーラを練り精孔を一気に開き、通常以上にオーラを放出する技術のこと。
 そして発(ハツ)とは自分のオーラを自在に操る技術。念能力の集大成。必殺技ともいわれる。

 これらは一朝一夕でできる技術ではないことはあらかじめ説明されている。

 取り出したタオルで汗を拭き取り首にかける。深呼吸を2.3度行い、よし。と頷く。

「続けてください。」

「纏をそのまんま持続させとけ」

 自然に一度出来てしまえばあとは慣れるだけだ。常にこれができていれば格段と危険もなくなる。纏に揺らぎがあるのが感覚として捉えられる。揺らぎを無くす、安定させる。そのためには自然体で心を落ちつかせろ。

視線を落とし目を閉じる。

 どれだけ経過したのか。モラウが終わっていいぞと声を出した。

「お前初め纏のオーラが渦を巻いてて何事かと思ったがやっと落ち着いたな。」

「オーラが渦巻く…」

「ああ、まあ普通こんなに早く纏ができることなんてほぼねぇよ。次までに纏の修行続けておけよ」

「あ、はい」

「じゃあ明日から直接この部屋を訪ねる」

「わかりました。ありがとうございます」

 モラウが部屋を出た後床に座り込む
 あー疲れた。


 お師匠である彼は驚くほどヒントを言わない。自分の感覚と私の感覚とが同じなはずがないからしかたないとは思う。でもとても不安なのだ。知識としては知っていても経験がない。

 だけど、私は知識がある。

 目を閉じ開いた精孔を閉じる。そんなイメージを実践してみる。

「これやると回復が早くなるんだっけ?」

 点を行う方がいいんだろうけどうーん…と悩んでいたらそのまま眠りについてしまい気がついたら朝。

 慌ててシャワーを浴びて着替えを済ませる。
 そんなことをしていたらなるほど、確かに纏が揺らいでいる。とても歪だ。これは早めにマスターしなければ初心者ですとおおっぴらにしているようなものだな。深呼吸をし乱れた心を落ち着かせる。

「うっし、」

 目を開け両腕に纏っているオーラを見て、揺らぎが収まったことに頷き早朝練習である魔法の特訓に出かけるためコートを羽織り帽子を深くかぶる。

「ちょっと今日は遅かったかな。」

 ルークはセットアップした状態で袖の長いコートで存在を隠す。ちょっと走って人目につかなさそうな場所に簡単な結界を張って誤認させておく。

「久々にどかんと一発大きいの放ちたいね。
なのはやヴィータなら喜んで相手してくれるんだけどね」

 ベルトポーチに入れていたカートリッジも使っていないので減ってはいないがこれからを考えると余分に作り置きしておいた方がいい気もする。

 この世界は死と隣り合わせだしね。

 とんとんとん、と小さな魔力球で飲み干した空き缶をリフティングの要領で当てていく。

 精度をあげる簡単な訓練だ。とりあえず続けられるところといっていたら切りが無いため500を目処に切り上げる。

 そのあとは起動してあるルークを使っての狙撃の訓練。グローブ型からフォルムチェンジしてロッド…つまり杖に変形させる。

 空き缶を空高くまで弾きあげそれを狙う。

<<シューティングモード>>

 ルークが照準を合わせる。なまえがトリガーを引くと細く長い一本の水色の線が空き缶を目指し一直線に飛んで行った。


「ん、こんなもんかな」

 ルークを肩にとんっと乗せそういえばルークがもっとちゃんとした練習しないと鈍ってしまいます、と小言をいう。

「わかってるよ、ごめんね、リンカーコアの負荷もう一段階上げよう。」

  いくら制御装置をつけているといってもこればかりは鍛える方法が今のところこれしかない。実はこの負荷とんでもなくしんどい。慣れるまでが一番大変。ぶっ倒れないように気をつけなければ。ユーノ曰く普通だったら指一本動かすこともままならないらしい。

 なのはも私も相変わらずの魔力馬鹿だよな、苦笑いを浮かべ体を伸ばす

 軽く魔法を使った後は念の修行だ。