現在起こっている出来事をぼんやりと膝を抱え頬杖をつきながらただ眺める。

元気だなぁ。

あくびを噛み締めながら率直な感想が漏れた。休める時に休めばいいのに。というかだ、なぜ私はここにいるんだろう。落ちそうになる瞼をギリギリで耐えながらも憮然とする。

ほんと、意外なことに、驚きが隠せない。

なまえは額を膝に押し当て眠りの体制をとった。そう、いつの間にかゴンは眠り落ちており、キルアはその場にいなかった。
ネテロが受話器を持ち機長にゆっくり進めておくれ、と告げてる際私は自身に唖然とした。

うそだろ、仕事先で何徹してきたんだよ、別に1日2日寝ないでも問題ないだろ自分。あれか、退行したから?退行しちゃったから??体力も許容量も昔に戻ったってこと??

なまえは頭を抱えてまじか…と嘆いた。


「おじょーさんは挑戦せんのか?」

「……」

「ん?」

「え?」

……。

若干の間を置きなまえはネテロが話しかけていたことに気がつく。からかうように笑われたなまえは首を傾げてたいのを押しとどめへらりと笑った。もちろん、笑って誤魔化してしまおうという算段だった。

するとダムダムとネテロはボールを跳ねさせた。

「ほれ、とってみ?」

ネテロに言われるがままに相対したなまえは、何テンポかずれた後、一気に活性化したせいか残っていた気だるさを、手を当て欠伸を噛みしめることで脳に酸素を送った。

ようやくまとまってきた頭に一つ頷いてなまえは口を開いた。

「あの、これ、なにか意味あります、かね?」

「ん?ライセンスいらんのかね」

「や、わざわざこんなこと…」

しなくても普通に望めばとれるし、というわけにもいかず後半の台詞は音にならずネテロに届かなかった。

「まあ、ちょっとしたゲームじゃよげぇむ」

げぇむ、わざわざ間違えるために言い直さなくても…となまえは苦笑を漏らした。
しかしゲームか。となまえはごちる。

「それってなんでもありなんです?」

口角が釣り上がり珍しく生き生きとした。
どうせならこっちのゲームもちょっとくらいやって見たいと競技場のときから思っていたのだ。ハンター試験が終わったら数日やってみるか、と笑みがこみあがる。

片眉がピクリと動いたネテロになまえは片腕を伸ばす。その様子を見て顎髭を撫でつけながらにんまりと笑った。

「そうじゃのぅ…好きにしてよいぞ」

「わぁい」

どーも、と笑ったなまえは大きく一歩踏み出した。その、一歩でネテロの懐まで入ったなまえは腰に構えていた腕を伸ばし振り切った。もちろんネテロもなまえも纏の状態を維持している。

攻撃したキルアの足の方に激痛の走る足なんてもはや鉛だ。ネテロはゴンやキルアにしていたような片腕片足というお遊びをせずに受け流すように防いでいた。


小手調べの様な攻防が進みなまえは力を足に込め後退した。
間をあけ様子を伺っているとネテロが笑い出した。

「聞いていたとおりじゃの」
「…師匠から、ですよね、」
「モラウは優秀な弟子を持ったようじゃ」
「ど、どうも」


心当たりがあったなまえはフォッフォッと笑う目の前の人物と相対しつつそりゃまあハンター試験は年末が締め切りなわけで実際間に合うはずがないわけで、モラウが直談判してくれたと考えるのが普通だ、と苦笑した。しかし、こうも面白おかしく話されるととんでもなく居心地が悪い。

「しかしモラウは戦闘方面はからっきしじゃろ?独学か?」
「そんなようなもんです…」
「ふーむ、それにしては型が…」

片手にのせ、肩の上に位置しているボールを を見ながらなまえは意識を集中させ魔力球を操作する。

「お主、操作系かね?」
「は…、?」

なまえはバレた衝撃ではなく、何をしようとしていたのかがバレてしまったことに戸惑った。

「儂も長年色々な猛者と戦ってきたのでな、感も鋭いじゃろ?」

ニィっと笑うネテロになまえも内心にんまりと笑った。

残念、でした。私は操作、具現化系よりの紛れもない特質系です。音を出すわけでもなくなまえは何かを察知したネテロが避けるのと同時に勢いよく魔力球をボールに命中させた。

プシュゥ、と音が鳴る。

「あー、ボール割れちゃった」

萎んだそれを持ち上げながらなまえは眉を下げた。

勿体無いことしちゃったと検討違いのことをぼやくなまえにネテロは笑いながら「油断したわい」と顎髭を撫でながらなまえに告げる。

「念弾か?精度もすごいのぅ放出系もなかなかじゃな」
「は、はは」

ボールの成れの果てをネテロに返せばしげしげと手に取りそれを見やる。

「お主は合格じゃな」
「…」

にんまりと笑うネテロにこれは何かあるなと思わず口の端がひきつる。この狸め。と内心罵り、その次の言葉を待つ。


「じゃが、ハンター試験は受けてもらおうかの。もちろん、試験に落ちてもハンター証はやろう」

ある程度予想はしていたが流石にこれはめんどくさいと思う。落ちるわけないだろ?と目の前の老人は目で笑っていた。人の気持ちに疎い私にでもわかったんだ。彼は隠してなんかいない。

「はい」

わかりました。と告げればネテロはつまらなそうに「なんじゃ、もう少しリアクションがあってもよいじゃろ?」なんていう。

リアクション….、ねぇ….、頬に指を当てそのまま引き延ばす。リアクションもなにもそこまで表情豊かじゃないんだけどなぁ。

私の目的はライセンスが貰えればその過程がどうであれなんでもいいんだから、返答はイエス or はいなんだけど。とりあえずネテロの言葉に頷きながら、最終的に到着までゴンの世話を見ていることになった。