にしても熟練の達人なだけあってネテロ会長はすごいなぁ、とこれがこの世界で一番強い人か、と先ほどまでいた飄々とした老人を思い浮かべる。

やだなぁ、本局のなまくらと違ってあの人熟練度が違うよ…まあ比べるのも烏滸がましいんだけど…
今回のはほんとたまたま、偶然、うまく言っただけで、私の能力を警戒されてたら今頃返り討ちだったな、と嘆息する。





トリックタワーに降りついて辺りを観察していると、昨夜あれほど(寝てたのでぶっちゃけ見ていないが)動いていたゴンは朝から笑顔で元気に挨拶してきた。

「なまえ!おはよー!」
「お、おはよ…う」

キラキラとして見える笑顔になんでこの子こんなに元気なんたよ。と苦笑した。

年?年なの?と頬に手を当て若さについて考えこむなまえのことをゴンは笑いながら首を傾げることで黙殺した。

「朝はありがとう、おかけでぐっすり寝れたよ」
「おい、ゴン。なにかあったのか?」

レオリオが首をひねりながらゴンを呼びかける。

「なんでもない!」
「いや、そうは言うがなまえが頭抱えてウンウン唸ってっぞ?」
「えへへ、実は昨日ちょっとなまえにお世話になっちゃって」


ゴンかーわーいーいーと別の意味で悶絶するなまえにクラピカはギョッとたじろいだ。

そんなことを気にせず肩をプルプルと震わせるなまえにキルアが「おーい、大丈夫かよ」と体調を伺うよう少し覗き込んでいた。

気遣うような目になまえは内心吐露した。猫目の天使!銀髪天パ!素直!いい子!抱き枕みたいにぎゅうぎゅうしたい!何度も言うが、彼女はオタクなのだ。ゲーオタ、アニオタ、本の虫なのである。ここ最近は子育てで遠ざかっていたがこれでも昔は立派なオタクだったのである。小さい頃はそんなことをしてばかりいたせいで残念なコミュ力となってしまったが。

そんな残念な奴でも管理局の売れっ子教導官だったなまえは現場から離れ、よし、これから溜め込んだゲームをやるぞ、っと意気込んでいたところだったのだ。

うずうずと疼く胸の内に唇をペロリと舐めて落ち着かせる。テンションが上がりすぎて俯いて震えたなまえの様子にキルアはぞくりと悪寒が走り一歩引いたのは余談である。

ハッとしたなまえはこほんと咳払いし

「だ、大丈夫、です。」

ほんとかよ、と疑いの眼差しでジロリとみるキルアになまえはへらりと笑い返した。あらためて感じた。この身長差がつらい。何が悲しくて私はこんな10歳児なんかに成り下がったのか。どうして彼らよりも年下なのか。もし年上ならばめいいっぱい愛でるのに。くそう、と惜しみながら彼らからゆっくりと距離を取る。

「んっと、ちょっと向こうの方見てくるね」
「気をつけるんだぞ」

クラピカから忠告を受け了解の意を込め頷く。ちょっとここクリアするまでお別れです。ちょっと残念に思いながら、合格したからか試験を楽しむ余裕ができてきたなまえは後輩の訓練を思い出した。

あれに比べたらマシだよねー。

人のこと言えない訓練だったがまあ、そこは陸戦か空戦かの違いだ。なのはが空戦にいったから陸戦魔導師を鍛えることも、決意した理由のひとつだけども。あの子はいつだって全力全開だった。飛べなくなった時期もあったけど、血のにじむ努力で彼女は現場復帰したのだ。そして自分の道を見つけたのだ

慎重に足を進めたなまえは回転する床を見つけた。よーいしょ、っと踏み抜くと3メートルほどの高さだった

どうやら一人みたいだ。くるんと一回転し着地したなまえは視線を巡らす

この殺風景な空間の中一箇所だけ異様な雰囲気を醸し出していた

<<んっと、"此の道は弱肉強食、鎬を削ってもらう。衆寡敵せず命惜しくば引き返すべし">>
<<また妙な言い回しをしますね>>

なまえが念話でつぶやくように口ずさみ終えるとシンッと辺りは静まり返る。それになまえはホッと息を吐いた。どうやらひとりで進む道のようだ。

日本人には暗号にもなっていない諺になまえは笑った。

引き返すべしって、どうやって引き返すんだよとつっこみながらも内容を読み取ったなまえはプレートの内容が変化したことに気がついた。

「え…?これのこと?」

"勇気あるものは装着し、窪みに嵌めよ。扉を開かれん。"

装着って、つけなきゃダメなの?
なまえは怪訝そうに指にはめた指輪は見るからに曰く付きのもので、禍々しいオーラを放っていた。

グローブの上につけることとなった指輪は何故か違和感なくはめることができ、念能力ですか笑えねぇとぼやいた。

めいいっぱい腕を伸ばせばやっと届く距離に窪みがあった。おいなんのイジメだよと小柄ななまえはキレかける。

「よっし!」

開いた扉をみてなまえはガッツポーズをとる。これだけでなまえは試験をクリアしたかのような達成感があった。

『ようこそ、弱肉強食猛者の道へ』

ひっひっひ、と笑いながらアナウンスが流れた。ハウリングしたのかキィイイインと甲高い耳に付く音が鳴り響いた。思わず耳を塞ぐ

「うっ」

『イヤァ、この道に来たのが君みたいな子供だなんてねぇ。ならあの注意書きが読めなくても仕方がないね。しょうがない。ではルール説明をするよ』

試験管に馬鹿にされ舐められている現実に自分の背の高さを思わず呪う。

なまえは人の目がないことで随分と大胆に行動できた。

「"弱いものは強いものに喰われる道。そのために激しく争ってくれ、ちなみにここは大多数対1人だ、命惜しくばそのまま時間経過を待て。"こんなところですよね

あと、このリングからして念の使用は認められてるみたいだけどオーラを半分まで抑える呪印が刻んであるみたいだから、たしかにオーラを消費し過ぎたら命に関わってきますね…驚きの受験者落としだ」

『………ふむ…なるほどなるほど。』


くっくっく、と笑う試験管はなまえにこう告げた。

『そこまで理解してこの場にいるということはこの試験を受ける自信があるということだねぇ!此の道は一番戦闘数が多い道だ覚悟しておくれ』

ブツリと切られると奥の道が開いた。

わらわらと湧いてくる死刑囚たちに思わずため息をはく。どの世界でも犯罪者は多いね。
獲物を持っているのはどうやらいないようだった。それでもやはり念能力者が何人か紛れ込んでいる。

彼らは高みの見物をしてるのか後ろの方でニヤニヤと笑っていた。

「ジワジワいたぶってやるよおチビちゃん」

こいつらも、また、試験に参加する対価として刑期を短縮するのか。舐めきった視線と幾つもの邪な視線を浴びたなまえは、フードの下で据わった目で周りを見渡した。

<<シフトチェンジ>>

予備動作なくルークに指示を出す。こういう時私の他に魔導師がいないから念話ってホント便利。誰に聞かれる心配がない。

裾から出しているようにロッドを取り出したなまえに軽い笑がぶつかった。

「そんなちゃちなオモチャでいいのかい?おチビちゃん」

一気にこられてもどちらでも構わない私はのんきに構えてるこいつらに若干の呆れを含めたため息をついた。

「あの、この戦いの勝敗の付け方は戦闘不能?それとも戦意喪失?まいったの一言?それか死ですか?」

「ああん?ぶっ!ははっ!そうだなぁ、死、でいいんじゃねぇか?なぁおまえら?」
「あっはは!OKOK」
「嬢ちゃんは別に参ったでも戦闘不能でもいいがな!その後のことは責任取れないけどなぁ?」
「おいおいおまえロリコンかよ」
「うっせぇよ!子供だといえ女だろ?!」
「そう、だよなぁ?」

口々に下品に笑い出す彼らになまえはめんどくさいな。と眉を潜めた。普段、非殺傷モードの中、その耳障りな下品な言葉に非殺傷モードを解除してしまう。なんだよ仲間意識でもあるのか。そして耳に付く会話に吐き気がする。

せっかく妥協してあげようと思ったのにな。となまえは杖を振り下ろす。

辺り一面銀色世界となったなまえは凍りつく彼らを置いてなまえはゆっくりと開いていく扉をくぐった。

「つーか、ルークはおもちゃじゃないっつの。」
トン、と杖を方に乗せ苦々しくため息を吐き捨てて次の場まで歩みを進める。