先ほどのフロアにいた20〜30名ほどの方はなまえに自身の運命を託してくれ、次のフロアへの道を開いてくれた。

「ありがとうございます。なんとか交渉してみます。」

「期待せずに待ってるよ嬢ちゃん」
「試験、頑張れよ!」
「囚人どもをぶっ飛ばしてやれ!」

そんな激励の波になまえはへらりと笑って答えた。

「できないことは言わないよ」

うおおおおお!盛り上がったリングに、そう言った張本人が照れ臭そうに頬をかいて視線を彷徨わせる。

じゃあ。といって別れたなまえはドアを開く。続いた道をすすめば狭い道幅、左右の床は…ない。なまえはフードをかぶりなおしてふむ、と頷く。

これがまだ魔導師になって間もない時だったら、泣き叫んでいただろう…胸に手を当ててそんなことを思う。なんたって小心者に定評があるなまえだ。いつだってルークに叱咤されながら前に進んできた。家族からは呆れられていたし。そんなことを考えながら一歩、また一歩と足を進めた。


下から想像よりも風が吹く。円をすれば今度は先ほどよりは少ない…数人隠れている。魔力球をつかい足元を照らして(これは、突き落とされるフラグか?容赦ないな)と苦笑い。

ガッタン

そんな音が静穏に飲まれていた部屋に響く。
立ち止まり前を見据えると風を切る音が横切った。

魔力球に照らされたそれは鈍く光る鉛色。一直線にタイミングをあわせて全て同時に並ぶ。しかも風の抵抗をものともせずテンポが早い。見事にタイミングをずらさないそれらになまえは受からせる気ないんじゃねぇのこれと感嘆した。

ここまで計算された見事な振り子だとこの試験念を習得した者じゃなければ間違いなく不合格だ。そしてこの腕輪。これで念を半分以下にさせるためさらに合格率は激減。

やるじゃないか。となまえはフードの下で笑みを作る。

<<ルーク、いくよ>>

<<オーライ マスター>>

「ぶち抜け!エターナルブレイク!」

特大サイズの魔法をやるわけではないので、杖ではなくグローブで魔力を出力する。ドゴォッと勢い良く噴射するそれに反動で押し返されないように足場をキープ。

見事に見通しの良くなった屋内に、手首を撫でながらにんまりと口端をあげたところで、やりすぎちゃったと肩を竦めるなまえに、この場に他の人物かいたら激しく引かれただろう。

魔力に当てられ魔力酔いを起こしたのか、純粋に魔力ダメージを受けたのか、待ち伏せしていたであろう囚人を素通りする。


しばらく歩いてなまえは少し開けた空間に出た。

8畳くらい、か?いや、そんなことより、と思考を目の前の台座に向ける。

スタートと似通ったそれに要約この手錠という名の腕輪が外れるのかと安堵するが、文字盤を読み盛大に息を吐いた。

「ま、まだ残り時間は60時間残ってるし。余裕もってつけるかな〜…」

大きく息を吐いた後、頬が思わず引きつるが、文字盤に再び目を向け腕輪を見やる。

「ゴールまで腕輪をつけたまま短く平坦な道か、腕輪を外して長く困難な道…ねぇ…」

デジャヴ

その単語が頭を過るが頭を振りそれを払う。
となると、だ。

「やることは、一つだよね」
<<オーライマスター>>

なまえが選び、片腕を穴に入れる。窪みから鍵が転がり落ちるのを拾い、両腕の腕輪を外す。時計が変わりとして随分役立ったな、タイマーだったけど…とまたも思考が流れる。

まあ、この状況になったら、取る行動は一つだろう。

2度目の!レッツ破壊活動!

入ってすぐの入り口でドカンと一発やらかして見事ゴールまでたどり着いた。

扉を開ける前にしっかりとフードをかぶり、気配を断つ。のっそり、ゆったり入り睡眠大勢に入ったなまえは、アナウンスも聞かずにそのまま寝落ちてしまった。