なまえは曇る頭とぼやける視界を叱咤し、横たわるなまえのそばで、膝を曲げ両頬に手をつけにこやかに見下ろすピエロに隠しもせずげんなりとなる。

「おはよう◆」
「おはよー、ございます…」
「うん 。君が起きるのずっと待ってたんだ」

あ。これはめんどくさいフラグだ。確実に嬲られる。なまえは根拠もなくそう判断する。

ふるり、と肩を震わし

なん、なんです?となまえが問えば、にっこりと笑いかけられ、一層警戒心を強めた。

「試験前にあまり話が出来なかったし、お話しシたいナァって」

お断りします。その言葉が言えずになまえはヒィ、と息を飲む。覗き込むようにピエロの形の良い目が細く細く細められ、薄く見える濁った眼球を直視し激しく動悸する。

ぞわぞわという悪寒と、悪いことがばれてしまったかのような居心地の悪さに吐き気がした。


「やだなぁ、怯えないでよ◆まーだなんにもしていないじゃないか」

彼の目には怯えたように映ったのか。そうか。まあ間違えではない。なぜか下ろされていたフードを再び被り直しなまえは内心ホッと息をはいた。もちろんその素振りは見せない。

痛い。視線がいたい。

なまえは握りしめていた拳をそっと解き、ゆっくりと起き上がる。

「あの、」
「トランプでもやる?ポーカー?大富豪?七並べ?ババ抜き?」

ポーカー以外二人で出来ねーじゃないか。なまえは内心ゲンナリしながらポーカーで、と答える。もちろん断る術もなきにしもあらずだが、穏便に済ませるにはなにかやるしかない。

ならば手段と術(すべ)をしっている彼のオハコでも構わない。

ちなみにポーカーの確率は知っているだろうか。だいたいだが説明しよう。ワンペアが2.4回に1度。2ペアが1/21。3カードが1/47。ストレートが1/283。フラッシュが1/508。フルハウスが1/694。4カードが1/4165。ストレートフラッシュがだいたい1/8万。ロイヤルストレートフラッシュが1/649740。そう、ストレートフラッシュはだいたい65万回行って1回出るか出ないか、なのだ。
それをこの貼り付けた笑みの下で楽しそうに10連続出している。もしかしなくてもイカサマである。ゲーマーにあるまじき暴徒である。なまえは眉間にしわを寄せながら手札を見る。スートを見れば綺麗に赤一色。しかもハートである。しかも10回連続。つまりフラッシュ確定なのである。なにこれ怖い。機嫌良く笑うピエロになまえはこれが普通の人との試合だと役強いのになー。負け試合(しかも出来合いの)をひたすらやらされる身にもなれよと息を吐いた。こんなクッソつまらないゲームゲームと認めんぞ。ゲーマーとして認めない。

「………フラッシュ」

「あぁ、またボクの勝ちだね」

「……あの、ほんとにこれ楽しい…?」

ヒソカの勝ち確ゲー。私はつまらない。私が配ってもカードに細工されていてはどうしようもない。もうほんと勘弁してくれ。
いくら全捨てしても結果は同じとかある意味苦行だ。

「そうだねぇ、飽きてきたしトランプタワーでも作る?」

もうヒソカおまえハウス!帰れ!言わないけど!言えないけど!



げんなりとした頃、カタカタと音を立て現れたイルミさん(仮)、あ、いや、ギタラクルさん。忘れてたなんてそんなわけない。それ幸いにとなまえは、子供らしく欠伸をした。つい2時間ほど前まで寝ていたわけだが、まあ、八百長の試合が退屈で思わず出てしまったのだ。

「おや、眠い?」
「んー…」
「まだ時間もあるし、寝ていても構わないよ◆」

ヒソカの言葉にカタカタと音を出し、彼を凝視するギタラクルを寝ぼけ眼で捉え、その素直な反応に同意した。

「ボクがちゃーんとみといてあげるからね★」

「ヘンタイ」

「………ど、どうも……」

ギタラクルが零した言葉を無視しにこやかに笑うピエロに大げさに息を吐いてしまった。イルミさん、貴方とは彼についてのみ話し合いができると思います。



(子猫みたいだねー)
(懐かないかなー◆)