4歳になったころ、それはもう驚きの連続だった。兄さんは火影になり、クシナさんと同居し始めた。というよりも結婚をした。そこはいい。むしろ喜ばしいことです。けれどそこじゃないんだ。



誘 拐 さ れ ま し た


あら、こんにちは。と笑われたかと思われる顔で頭を撫でようと伸ばされる手におとなしくしていたら、まさかの彼でした。おい変化なんてしてんじゃねぇよ。いきなり頭とか知らない人が撫でようとしたら固まるだろこのオカマ野郎!

荒んだ気持ちを代弁するかのようにゆらゆらとオーラが揺らめく。口が悪いのは気が緩んだ自分に対しての戒めである。

寝たふりを決め込む私は目を閉じたまま体が不自由なことに気がつく。ゆったりと円を張り辺りの様子を伺えばひーふーみーよー五人か。1人は変態として、あとは誰だ?

「ふふ、いい子に寝ているのよ?」

近くにいることは把握していたが、ふさりと髪を撫でられると体が強張る。それ自体を私は無視し探知に意識を向ける。
なぜか彼には殺意が伺えない。ふふ、と笑って扉から出て行く。これは、ロリコ…え?と自身の思考が空気を読めていないことに絶望する。

そしてそこで驚いたことに、ルークから応答があった。この4年間なかったそれに目を見開く。

文字通り跳ね起きる。

(ルーク!!ルーク!)
<<………>>

(応答してルーク!)
<<……………>>

ジジジと、ノイズしか聞こえないがこれは確かに念話である。どこか故障しているのだろうか?それとも封印?結界が貼られてる?だから私に検知できなかったのか。ここに来たことによって繋がらないが、念話自体は繋がっている。

「くそ、故障してる?リカバリーじゃ治り切らなかった?」

遠慮なく締め付けられている腕に硬を行えばブチリと音を立ててちぎれ落ちる。うーん、さすが万能ですね。

繋がらない。ってことは結界か。魔力を外に漏らさない結界がこの世界にあることにびっくりだ。魔法陣を展開しエリアサーチを使う。
デバイスがないため時間がかかるが闇雲に動き回るよりも効率的である。床に魔法陣を展開し、床一面に水色の円が広がる。サーチャーを飛ばし視覚を同化させる。

しばらく巡回していれば幾多に札を貼られた奇妙な箱が置いてあった。大蛇丸はそれに手を伸ばし開くーーー、と同時に魔力を感じた。見つけた!瞬間的にサーチャーを大蛇丸にぶつける。何が起きたかわからない彼は辺りを見回し手に持っていた箱を落とす。

警戒した彼は構えながらも不敵に笑う。

「どこから侵入したのかしら」

3つのサーチャーにルークを回収するため魔力を込める。展開させた魔法陣は転送魔法だ。

軸を指定し、魔法陣に手を付ける。

(ルーク!)
<<マス、ター、>>
(クリスタルリカバリー手動展開オン!)


唱え魔力を供給すれば傷が付いた腕輪のボディが綺麗になる。

(いけるよねセット!)
<<セットアップ>>

腕輪(待機)では目立つ。そのためグローブ(起動)状態に形状を変化させ誤認させる。これならいつでも戦える。ついでにバリアジャケットも装備する。羽織りはそのままだ。



「あら、起きたの?」

イラつきを隠していない彼はなまえが縛られていないことに眉を潜めた。

(あっぶなあー、ルーク、言いたいことや聞きたいことたくさんあるけど後回しね)
<<オーライマスター>>

立っているだけの少女に違和感を覚えた大蛇丸は口周りをペロリと舐め、粘質な視線でねっとりとなまえを見る。

「貴方、侵入者は見なかった?」
「し、しんにゅーしゃ?」
「ここに誰か来なかったかしら?」

4歳児と言う事で意味がわかっていないのだと思われたのだろう。言い直された言葉に目を瞬けば、ふう、と溜息をつかれた。

なんだよ失礼だな。なまえは漠然と思う。疑われていないのならここは否定しない方が良い。肯定もしない方が得策だ。

「4代目のお姫様というから興味を持ったのだけど、こんなにオツムの弱い子だとはね」

「う、あ、」

言い返したい!ぐっと挑発を我慢して口を閉ざす。すると「あら」と意外そうに声を上げる。何かに気がついた?なまえは内心目を細め様子を伺う。

「泣き叫ばないだけ上出来かしらね」

ゆっくりと手が伸びる。一歩後退。

「ふふ。面白いわねあなた。頭の弱いお姫様で、泣き叫んで助けを請うかと思えばこの殺気にも体が反応する。四代目は一体どんな育て方をしたのかしら」

口はしを釣り上げてを引っ込める様子にも気を抜かない。ここを大破してそれに乗じて逃げてもいいんだが足で追いつかれたらたまらない。最良案は兄が来てくれることなんだけど。なまえはそこまで考えてあっさり否定する。ただでさえ忙しいのに頼っちゃダメだ。やっぱりハンターの前に、忍者の前に魔導師だもの。魔導師たるもの全力全開でいかなきゃ。勝つ気でやるよ。負けるビジョンなんて考えない。

「おにーさん、ここもう直ぐ崩れちゃうよ」
「え?」
「さっきの人がそう言ってた。わたし帰らないと」

後ろ手に杖を生成し隠を使い魔法陣を展開させる。
そのままルークに念話で大型魔法を準備させる。

『鳴り響く轟音
我が元に来れ
激流なる厄災』

「トレンチャルカスケイド」

とん、と杖をつけばドドドドド!と激しい滝がこの建物を襲う。崩れた瓦礫の合間を縫いで建物の外に出る。

「うーわー」

自分がやったにしろ酷いもんだ。
ルークいつの間にか魔力ダメージ以外の緩衝ダメージまで解除してる。私意外には囚われの身はいないみたいだしなんにも問題はないかな。ぼんやりとその光景を眺め、杖を解除する。

キョロリと辺りを見回せばそこは林というよりも森の中という印象をもった。今の時間が分からない身としては薄暗いそこは肝が冷える。

今日帰りが遅かったらクシナさん心配して兄さんに詰め寄ったらどうしようか。私に持たしてるこのクナイで一発のはずなんだけど、如何せん使えるのは兄さんだけだ。
これ幸いと業務から逃げるんじゃないだろうか。怒られるのは私だよそんなの嫌だなぁ。

そうこうしているうちに目の前に立ちはだかった物陰に陰鬱になる。

「じゃま、です」

冷気をを手にまといそのまま勢い良く届く範囲で殴り入れる。物陰、巨大な熊は腹部を凍らせ背中を下に倒れる。

<<マスター、ご心配かけまして>>
「本当だよルーク、寂しかった。私を見つけてくれてありがとね」
「びっくりして生きた心地しなかったよ」
「それはオレの台詞かな。」
「んえ?」
<<…?>>

目の待てに突如現れた我が兄上さま、兼火影さまは大層ご立腹でした。おお、そんな兄さんもかっこいいよ…