現れた兄、ミナトが腕を組み大層ご立腹な様子でなまえを見下ろす。なまえは冷や汗を垂らし足を一歩引く。

「にーさん…」

「早めに帰宅したらなまえはいないし、クシナにきいても朝早く出たっきり帰ってきてないっていうし。なまえ、門限は覚えてる?」

「あ、ぅ、ご、5時…です…」

この年にもなって、どういうよりも、ミナトから怒られたことがなかったためそちらの衝撃が強かった。いつもドロドロに甘やかしてくれる兄は存在せず、そこにいたのは保護者としての彼だった。

「そうだよね、今はもう6時半だよなまえ
心配になって探しに行こうとしたら森の方ですごい音が聞こえて、そこになまえがいたんだ。どれだけ心臓に悪かったか」

ピクリと反応したなまえにミナトは気がつく。

「なまえ、さっき生きた心地しなかったって言ってたけど怪我は?あそこにいたの?」

なまえの肩に手を起き地面に膝をつけてなまえと目を合わそうとするミナトはさりげなくそらしているなまえに咎めるように名前を呼ぶ。ビクッと体が震えた様子にもう一度怪我は?と問う。

「ケガしてないです、あ、あのねなまえ、あそこにいたよ」

観念したように恐る恐るいうなまえにミナトはどうしてそんなとこに行ったんだ!と怒鳴りたい気持ちを呑み込む。

「なまえ、なまえは賢いからちゃんと状況を理解してるんだよね。何があったか説明できる?」

兄としての心配をグッと抑え込み火影としての役割を遂行するためになまえの目を見つめる。

その視線に、なまえは視線を彷徨わせ一瞬、うるり、と泣きそうに顔をしかめた。それを耐えるようにグッと手を握りしたを向いた。そんな様子にミナトは一度目の衝撃を受けた。(物心ついてからけして泣かなかったなまえが…)ミナトにとってなまえはどんなに厳しい修行を課しても弱音も小言も一切吐かなかった少女がこんな耐えるように泣く姿は想像できなかった。いつだって自分の妹は自分の光だったのだから。そしてそんな妹の言葉に二度目の衝撃を受けることとなる。

「さとのなか、あるいてたら、『こんにちは』ってはなしかけられて、いつの間にか知らないところでなまえねてて、起きたら知らない髪の長い人いて」

ポツリポツリと話すなまえにミナトは目を見開いてもう一度確認を取るように妹の状態を確認する。

「その人怒ってて知らない人来たか、って言って、そしたら大きな音が聞こえて、なまえ崩れた間から逃げてきたの」

「なまえ、ほんとに、ほんとに痛いところない?我慢してない?」

兄として耐えられず再三の確認をとる。ミナトは思った、なまえの話からして彼女は誘拐されたのだろう。侵入者、もしくは内通者があの家屋を壊したのだろう。妹がそんな大変な目にあっていたなんて知らなかった自分は大切な家族すら自分で守れなかったのだと悔いる。なまえが自力で脱出できたのは奇跡だ。ミナトはなまえを抱え込み謝罪を口にする。

「助けに行けなくてごめん、心細い時に、怖い時にそばにいてあげられなくてごめんね、生きててほんと良かった」

抱え込まれた反対の意味でなまえは内心申し訳なさでいっぱいだった。
自分の不注意で誘拐された挙句、自分で起こした災害にミナトは心の底から心配してくれているのだ。兄の肩口に顔をうずめて、彼の羽織をしっかり握ってごめんなさい。と謝る。

そんな妹をミナトは誤った解釈をする。
いくら修行していても、いくら物分りが良くても、なまえはまだ4歳なんだ。自分の大事な妹で、両親の大切な忘れ形見なんだ。けれど自分は火影で、自分を良としない反対のモノや、他の里から狙われる可能性は十分に考えられたはずだ。現に妹は狙われてしまった。その証拠に妹は傷一つ負っていない。人質としての利用価値としては傷なんてつけられなかったのだろう。いや、考えなかったわけじゃない。そのためになまえは修行を欠かさず行うように言ってある。けれど軽視していたと言えなくもない。細部まで配慮していなかった過去の自分を怒鳴りつけてしまいたい。

「なまえ、クシナのところに帰ろう。今日は疲れたね」

「ん、にーさん、ごめ…ごめんね…」

「なまえさえ無事なら、それで兄さんは安心だよ」

額を合わせミナトは謝る妹に笑いかける。
送り届けたら今回の件についての調査に自分も加わろう。なまえを抱え直し飛雷神の術で家に帰宅する。そのあとクシナにこっぴどく怒られた後、無事でよかったと抱きしめられたなまえはもう一度謝罪の言葉を零した。