それからミナトは予想通りバタバタと忙しそうに駆けずり回っていた。なまえ用にクシナヘしっかりと修行内容と厳重に注意を言い残して。

基礎体力よりも今は技を覚えた方がいいらしく、持久力をつけた後は何があっても逃げられるように、実践的な技が多めだった。縄抜けの術、分身の術、影分身の術、身代わりの術、瞬身の術を主に徹底的に反復練習を行っていた。あとは今まで通りのチャクラコントロールだ。みっちりねっちょりとクシナとミナトに鍛えられたなまえは、クシナのおめでたを伝えられた。

「あかちゃん?」
「なまえはお姉ちゃんになるってば」
「そっ…かぁー」

ついに彼女の口からあと1年の歳月が申告された。やっぱり私はめいいっぱい愛情を持って育ててくれたこの二人を守りたいと思う。もしそのために、私の能力がバレても仕方がないことだ。それだけでこの二人が、生きて行くことができるなんて、お釣りが出てしまう。もし私の力が足りずに死んでしまっても、この二人だけは絶対に、ナルトと共に助けるんだ。


「どうかした?」

ミナトとクシナは手をつないでいる。私から見てもラブラブだ。目を細め手でクシナのお腹を撫でる私を、ミナトはもう片方の手で撫でる。

「なまえ、弟守れるくらい、うんと、強い忍者になるよ!」
「じゃあ弟が生まれる前までではその人見知り治さなきゃってばね」
「う、あ、」

クシナのセリフとミナトの笑い声になまえは眉を下げ肩を落とした。
いつだって治したいとは思ってきたんだけどな。すっかり幼児が板についていたなまえはしょんぼりと重い空気を背負う。

「まずは、オレたち以外にも動揺せず話せるようになることからだね。」
「明日ミコトのところに行くんだけど、なまえもついてくるってば?」
「う、うー」

頭をフル回転させるなまえに残された選択肢は彼らの悲しい顔はさせない、の一択でコクリ、と時間をかけて頷いたのだった。



当日、そこで出会った人物に目を瞬かせた。

「なまえ、同い年だって」
「う、あ、えっと、あの、はじ、めまして、
なまえです…」

クシナに背中を押され言われるがままにしどろもどろと言葉を紡ぐ様に自分は何年下である同い年相手にこうも言葉が詰まるんだよ畜生と涙を飲み込んだ。

「はじめまして、俺はうちはイタチ。よろしくたのむ」

「こ、こちらこそ、よろしく、です。」

え?同い年?え?となまえはチラチラとイタチの顔を伺う。よろしく頼むって普通4歳や5歳児は言わないよ。ぎゅーとクシナの服を掴んでいればイタチの隣にいた女性は膝を折り微笑んだ。

「初めまして、なまえちゃん。私はうちはミコト、イタチの母です。よろしくね」

「よ!ろしくおねがいします」

ぺこりとお辞儀をし裏返った声をなかったことにしたいと切に思った。ミコトとクシナはクスクスと笑う。クシナに背中を押され「イタチくんと遊んでおいで」と促された。空気を読んだイタチは「こっち」と襖を素早く開けてなまえを待っていた。

行ってきます、とクシナに伝え後を追う。そのあと笑い声が響いて見えないのに二人一緒に振り返ったのは内緒だ。

案内されたそこはイタチの自室なのか、おもちゃが幾つか置かれていた。他に巻物や書物が置かれている。この年にしてこの落ち着きよう、内容は分からないがまあ活字の山なんだろうと想像がついた。

「ゆっくりしてて」
「ありがとう」
腰を落ち着けたら変に気を張っていた自分の緊張も解ける。まさか、彼と同い年だったことに動揺が走ったなんて言えるわけもなく大人しく巻物や書物をしげしげと眺める。

「おもちゃ使ってていいよ」

イタチの台詞にお礼を伝え再び目線を巻物にむける。さすがうちは一族といったところか、子供に持たせている量ではなかった。また内容も子供向けではないんだろうことは想像ついた。


「気になるなら読んでもいいよ」
「えっ?」
「さっきからずっとそわそわ棚を見てるから。」
「いいの?」
「問題ないよ」

早速見させてもらった巻物は火遁の巻物だった。流石に火遁系の一家なことはある。さらりと目を通し再び巻直して、次の巻物に目を通す。それを何度か繰り返して首が痛くなってきたと頭を回す。そのときイタチがこちらを見ていることに気が付いた。どうやら随分集中していたようだ。

「おもしろい?」
「え?」
「かなり熱心だったから」

どうやら何度か声をかけてくれていたみたいだ。それは申し訳ないことをした。無視したわけじゃない。慌ててそういえば、分かってると頷いたイタチはお茶とお菓子を勧めてくれた。

ホッとする味のお茶に顔を緩める。どうやらあれから2時間は経っていたらしい。

「また読むのか?」
「あ、なにかしたい事あった?」

そう問えば別にないと言われる。じゃあもう1度巻物でも読もうかな。そう言って手を伸ばす。


なぜか次の日もまた、その次の日も訪れることとなった私は二人して眈々と巻物や書物を読みふけるだけに3時間ほどともに過ごし続ける日々を送っていた。


そんな中、数少ない水遁や氷遁を見つけることができた。やはり炎に相性の悪い水や氷は少ないのか。と諦めていたところイタチに何を探しているのか問われた。正直に水とか氷と答えれば考え込んだあと席を立ったたあと、数本の巻物と書物を持ってきてくれた。

「これ」
「え、あ、わあ!ありがと…!」
「なまえは水の属性変化なのか?」
「うん、イタチは火なんだよね。」

あれだけの書物に火ばかりあれば気がつかないわけがない。あとは雷や風についてもいくつか見つけたがそれも火を補助するか威力の強いかのどちらかだった。

巻物が気になりスルリと広げる。
ざっと見たところ幅広く技が乗ってる。水遁相手の対応策ばかりだったがなるほど、と頷くことばかりだった。これはぜひ覚えておきたい。あとから読み直したくなった時のためにルークにこの巻物たちの内容を記憶させておこう。魔力を込めルークと巻物を魔力を通し接続させる。数本そうして体を伸ばす。最近やること多くてこの体もつか心配になる。キャパシティオーバーである。

「なまえ、そろそろ時間」
「あ、うん。今日はありがとう」

お邪魔しました、といってうちは家を後にする。あれから厳しくなった門限管理に私は一切遅れることなく日々過ごしている。その一役をかっているのはイタチだった。時間になるとどれだけ集中してても帰宅するように促す彼は、何度も思うけれど達観し過ぎな気がした。時々うたた寝している様子を見ると年相応に見えるのだけれど。ああ、帰宅に影分身も考えたのだが、結局はミナトに影分身はバレるだろうし、早々と諦めた。技に関しては影分身に経験値として詰め込んで、ギリギリ6時10分前に解除することにしている。