「封印の事もあるし…出産には立ち会うよ。先に行って準備しておくから」

ミナトが心配そうにクシナに向けて言う。ヒルゼンは一瞬目を伏せ申し訳ないと表情を作り、けれど言葉に有無を言わせないそれがあった。

「前任のミト様がそうだった…出産の時、封印が解けそうになったのじゃ。
もしもの事を考えすまぬが里から少し離れた結界の中で出産してもらう事になった。ミナトとワシの妻ビワコと暗部のタジを付き添わせる…これも全て極秘とする!

もちろん護衛も付けるが、全てワシ直轄の暗部じゃ…」

「場所まではアチシが案内する。そろそろ移動しておくえ!」

ヒルゼンの妻、ビワコが快活にいう。確かに彼女は医療忍術が使える。もしもの時はとても頼りになる。

「ハイ…ありがとうございます」


こーそり、覗いてますなまえです。
流石に一流の忍たちにバレたら曲者扱いされるので、誰もいないこの部屋で自由に魔法陣を展開している。誕生日から3日後、どうして予定日がそのまま出産日になるのだろうと首を傾げたくなったが実際生まれるため黙認することにした。

ここは二人について行こうとサーチャーをもうひとつ飛ばす。ちょ、兄さん飛雷神の術で行きやがった!ちくしょうと、眉を寄せながら大人しくクシナについて行くことにする

「一応お前の出産行事は極秘じゃえ
移動までの間、知り合いがいても接触はなるべく避けるのじゃ」

「ハイ…すみません」

「それからじゃ…里から離れると言っても極秘事項!陣痛が来てもあまり大声を出すでないぞぇ!」

「あっ…はい…!」


こっそりと話をするふたりにまあ元から知ってる私は素知らぬ顔でふたりのあとをつきまとう。結界、私が張ったらダメかな。まあ、予定通りにいこう。一瞬違う方法が頭によぎるがそれじゃあだめだ。転移魔法を使い出産場所の近くである森の一角に着地する。今まで時間があればために貯めて作り置いていたカートリッジを入れてあるポシェットを無意識に確認する。まったく、別の世界に来てからさらに魔法が上達するなんて思いもしなかったよ。苦手だった結界魔法やら補助魔法がどんどん出来るようになったのはまあある意味魔導師としては良かったのかもしれない。
念によってさらにバリエーションも増えたし、これからチャクラでさらに増えるだろう。

何度でもいうよ、私がこの世界にいる時点でここはもう原作なんて関係ないよ。パラレルワールドなんだ。どれだけ壊そうが壊さないでおこうが、私の意思で決める。あの家族は壊したくないから、この両手で救える命を守るために私は戦うよ。





「うあぁあー!!!
痛いってばね〜!!!」



クシナの叫び声にビクリと肩を揺らす。
経験者の私なら理解はしてあげられる。確かに痛い。我慢なんて出来るはずがない、今までで一番痛い痛みだった。クシナの叫び声に忘れていた痛みを思い出して悪寒が走る。

「くう〜!!」

「あの〜こんな大声で痛がるクシナを
初めて見たのですが…これは…大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫じゃえ!それよりはお前は九尾の封印をちゃんと見とれ!」

「しかし…これは…」

クシナを心配そうに見下ろすミナトはオロオロと戸惑い冷や汗を流す。

「四代目火影ともあろうもんがオタオタすなえ!!男なら痛さでとーにくたばっとる!
じゃが女は強い!!」

ビワコの一括の後、そのままクシナを見ていたミナトは<ズズズ>とチャクラが揺らぎ出したのを感じ取った。もちろん、外にいたなまえもそれを感じ取っていた。

「!」

<グオオ>という唸り声によりさらに九尾がクシナの体から出ようと暴れているのが伝わる。

「うああう〜!!」

強い!九尾が出ようともがいている!!ミナトは封印式に手を置きチャクラを込める。

「がんばれクシナ!がんばれナルト!」
「うっ〜〜〜っ!」

「頭は出た!!もう少しじゃえ!クシナ!」
「がんばってクシナさん!!」

[グオオオオ]

抵抗する九尾の唸り声にミナトはたまらず叫ぶ。

「ナルトォー!早く出てこーい!
九尾は出てくるなァー!!」

「う〜〜〜〜〜〜!!」

「おぎゃあ!!おぎゃあ!!」

「お湯じゃ!」

「………産まれた…」

「おぎゃあ おぎゃあ!!」

「元気な男の子じゃえ!!」

「ハハ………!オレも今日から父親だ……!!」

「ナルト………やっと会えた…」


ハアハァと荒い息を整え、滲み出た涙がほおを伝う。息をつきナルトに擦り寄るクシナにその場にいる人物全員が歓喜する。なまえはそこで準備しておいた魔法陣を素早く発動する。
「よし!クシナ!出産したばかりで大変だけど…九尾を完全に押さえ込むよ!」

いち早く切り替えたミナトが封印式に手をのばす。スッと衣擦れが聞こえる。来た!なまえはバリアジャケットを身にまとい一つの魔法陣を展開する。

「ぎゃああ!!」
「キャ!」

一瞬のうちに倒れた2人にミナトは驚き声を上げる。

「!!」

「ビワコ様!タジ!」

「四代目火影ミナト…人柱力から離れろ…でなければこの子の寿命は1分で終わる」

そういって現れた仮面をつけた人物にナルトは既に奪われていた。