<八卦封印>


なまえはその術の名を聞いて目を見開きミナトへと振り向いた。やはりそうなるのか、と。だが、やはり切り離しておいて正解だった。最悪死ぬ恐れはなくなったのだから。

「させるかァァァァ!!」

それは鬼気迫っていた。時空間忍術だろうか、なまえは顔を顰め舌を打った。
まさかこんなにも早く結界魔法が敗れるなんて。チャクラと魔法の関係が把握できてない、根本的な忍との経験値が足りない。

こんなことなら苦手でもなんでも確実に封時結界を施せばよかった。

なんだかんだいってマダラは素性を割らさないようにうちはの力を見せていなかった。

陸戦魔導師の腕の見せどころ、と行きたいところだが、相手にほぼ物理はきかない。思い出すなぁ、と殺伐としたこの空気の中不思議と昔のことが頭によぎる。よく、なぜ空戦魔導師じゃないのか、と尋ねられすぎて陸戦魔導師の価値が低いと見られている考えが気に食わない時期が自分にもあった。空戦魔導師に引き抜かれそうになることも多々あった。問答無用に限定制御をつけられ囚われそうになったこともある。

それでも、自分の道を歩いてきたんだ。

貫いてきた道だから私は、負けたくないなんて思うのかな。

「ライジングシューター!」

7発の氷の塊を生成しながら打ち出すこの魔法は威力は低めだが速攻性に優れ牽制にはもってこいだ。真後ろから殴られる痛みを感じた。

「っーーーー!?」
「邪魔だ」
「グっ」

驚き振り返ったところ脇腹を思い切り蹴られ炎が降り襲ってきた。なまえはその威力に地面まで吹き飛んだ。焦りが生んだ隙だった。

マダラの炎は記憶上、一人のチャクラでは防ぎきれなかったはずだ。目の前に迫ってる塊に手をかざしシールドを展開する。なまえの手から放たれた水色の光が大きく咲き誇って炎の威力を抑え込むべく、削るように押しあっていた。なまえは歯を食いしばり後方をちらりと見た。衝撃で里に被害が及んでしまう可能性がある。後ろにある里やクシナたちの存在を確認しグローブのカートリッジをロードする。両手が塞がってたら印も組めないじゃないか。


それにしてもいつの間に仮面の男は影分身をしていたのか。急がなければミナトやクシナ、ナルトがヤバイ。結局原作は変わらないの?戸惑い弱気になりかけた瞬間なまえの身体が浮いた。



「兄さん!?」
「ん!なまえ、遅くなってごめんね」

私に持たせた飛雷神の術の印が刻まれたクナイまで飛んで一瞬で違う場に辿り着いた。ここは、森?

「兄さんあの人は?」
「九尾が封印されたらすぐにいなくなったよ」
「そっかぁー、…私全然役に立たなかったね、大きな口叩いときながら結局…」

グッと手を握りしめ唇を噛む。自分の力を過信しすぎた結果が、これだ。助けるつもりが助けられて、結局逃がしてしまった。

「なまえ、顔上げて。」
「……」

眉間にシワを寄せ渋面顔を上げたなまえとミナトの視線は合わない。

「よく聞いてなまえ、時間がないんだ。」

その言葉に目を見開く。どういうことだ、とミナトの顔を凝視する。

「俺とクシナはしばらく眠りについてしまう。」

「なまえのおかげで最悪の結果、俺とクシナが死んでなまえとナルトだけが残るという終わりは免れた。」

「けれどクシナは一度九尾が抜かれてしまってる、反動で深い眠りに落ちてしまっている。」

「俺も、もう少ししたら」

ミナトの言葉一つ一つにおどろき、絶句していたなまえは堰を切ったように声を荒げた。

「やだよ!だって、なまえ頑張ったよ!?兄さんとクシナさんと、ナルトがっ笑って一緒にいられるように頑張ったのに…兄さん達がいなくなったらなまえ、なまえ…なんのために…」

なまえがボロボロと泣き出した途端ミナトが悲痛で顔を歪めた。

「だって兄さんナルトずっと待ってた、クシナさんもずっと、ずぅと、幸せだって、なんで、兄さんもっと封印、選べた!」

なまえの言葉にミナトも声を殺して泣いていた。なまえが睨みつけると同時にごめん、ごめんね、と縋るように謝られた。

「絶対、3人の元に戻ってくるからなまえ、それまで、ナルトとクシナのこと、頼んだよ」

う"ー!と威嚇する猫のようななまえをしっかりと抱きしめたミナトは「三代目」と、呼び掛けた。

「なんじゃ…」
「なまえのこと、ナルトのこと、よろしくお願いします。お聞きの通り俺とクシナはしばらく眠りについてしまう。なまえはしっかりしてるけど一人で何かをするには幼すぎるナルトもまだ生まれたばかりだ、どうか、」

ミナトの言葉に抱きしめられたなまえは嫌だ嫌だと首を振り続ける。三代目は重い息を吐き「しかと聞き届けた。」と詰まる声を発した。


「じいちゃ!」
「なまえ、わかるじゃろう、封印の反動なんじゃ。いつ目覚めるかもわからない。覚悟を決めよ」

「っーーーー!」

開いた目がグラグラと揺らぐ。

「…っ早く起きなきゃ、ナルトにあることないこと吹き込んでやる、んだから…」
「そ、それは困るなぁ」
「クシナさん寂しくさせたら許さないよ」
「う、うん。努力する」
「なまえのこと、知りたいんでしょ?」
「うん、起きたらちゃんと俺にも説明してもらうからね」

その時になったら忘れてるかもね。なまえはそう言って笑った。ぎゅう、と再び抱き締めたふたりは任せたよ、任せられたよ。と言い笑いあった。





くたりとしたミナトをなまえは支えこんで座っていた。

「じいちゃん、」
ポツリとなまえは呟いた。静かな森の中響いたその声に三代目は答えた。

「なんじゃ?重かろう、儂も手伝おう」
「いい。…あの、さ……私が3人の世話する。」
「…自分がなにを言っておるのか、理解しておるのか…?」
「してるよ。うずまきクシナ、波風ミナト、それとナルトも私が保護する」
「お主のような子供がそんなこと…」
「このふたりには九尾が封印されているんだ。悪用なんでされたくないし、そもそも、上が信用できない。」

その言葉に三代目は鋭い眼光をなまえへ向けた。何が言いたい、と。気圧する雰囲気、オーラを放ち三代目重い口を開いた。

「それは、」
「クシナさんの出産という極秘事項が漏れ、三代目の直属の暗部があっさりと殺され、結界に侵入…事実里があんな状態だ。政治力、実行力ともに力あるものが関わっている可能性が極めて高い。そんな中、誰が頼めます?」

へにゃり、泣き腫らして少し痛みのする頭を傾げいつもより顔を崩し眉を下げて笑う。火影が口を噤むのがわかった。私の言いたいことが伝わったようだ。

「お主が、それを防げると?」

「何点か条件さえ呑んで頂ければ、少なくとも、暗部の人に人員を割いていただかなくてもいい程度には2人を隠し守り通せると思います。」

「…きこうか。」

その言葉になまえは片手を地面につけ結界を張る。当たりが青色く変色しているのはご愛嬌だろう。

「これは…」
「私が苦手な結界ですよ。ですがこれが一番性能が良い。」
「お主は…一体…」

ミナトを抱え直し影分身を呼ぶ。結界が張ってあるがコピーならばオリジナルの位置は把握できるだけの能力は備わっているはずだ。

「それは兄さんが目を覚ましたらの約束なので、まだ言えないです。私が提示する条件は言葉でいう分には簡単です。ただし実行は私の一存じゃ出来ません。いま、四代目が深い眠りについているため、判断は三代目に委ねられてしまう。」

「ふむ、」

「私が言いたいことの根本はーつです。
ーーーーふたりを生存不明という扱いをしてください。」

「…は…?」

間の抜けた声がなまえの耳に届いた。三代目は口をあんぐりと開けたまま静止した。

「生きているという事実を知っているのはこの場にいる私と三代目だけ、ということでお願いしたいのです。」

「もし保護するとなると、交代制でどこから情報が漏れてしまうかわからないので、やっぱり私以外に護衛はいりません。」

「あ、でも、死んだって事実は必要ないです。兄さんが戻った時に四代目の席が、亡くなってたらがっかりするだろうから」

そこまで言い、三代目を見上げれば彼はハッとしたように口を開いた。それはやや怒気の孕んだ声色であったが想定の内容であった。

「彼らのチャクラは到底隠し切れるものではない!それにお主はまだ幼子だ、そこをよく考えよ!」

「…たしかに隠し切れるかはわからないけど、それでも多数に匿われるよりも、確実です。そのための方法も大体考えてるし、それに、子供でも貫きたい思いはあるんだよ!じいちゃん!」

キッと睨みつけ駄々っ子のようにミナトを抱きかかえる。三代目は頭を抱えた。ミナトはよくなまえのことを自慢していた。手のかからない頭のいい、いい子だ、と。相対してみてたしかに頭のいい子供だとは思う。聡すぎる気もするが。わがままを言わない、手のかからないいい子がこんな提案してくるはずがないじゃなかろうか、ミナトよ。ヒルゼンは胃を抑え、湧き上がる気分をぐっと堪えた。
「「いつか、なまえが初めて言ったわがままを叶えてやりたいんです。」ミナトが言った言葉じゃ。儂も叶えてやりたいと思う、が、ちと度を越えとるとは思わんか?」

「思わない。」

「はぁー…なまえよ意固地になっておるようじゃの」

三代目は大きくため息をついた。同時になまえも息を吐いた。

「私の最終手段としては家族そろって雲隠れなんだけど、さすがにまずいかなって私も頑張って譲歩してるんですよ、これでも」

だって私忍じゃないもん、里抜けとか言われても罰せられないし。と脅される三代目は頭痛を覚えた。

「面倒見れなかったらどうするつもりなんじゃ」

「なまえさんができないことが言うわけないよ」

「その自身はどこから…」

三代目が項垂れるとなまえは顔をあげ自分の影を朗らかに迎え入れた。

「あ、やっときた、ありがとね」


クシナとナルトを迎え入れたなまえはようやくほっとした顔を見せた。ごめんね、と一度呟いてからなまえは三代目をみた

「あの、別に脅したいわけじゃないんです、私三代目は信用してます。ですが、信用ならない人物がいて、もし人質に彼らを取られたら私が爆発しちゃうので、任せてくれないでしょうか。ちなみに爆発しちゃうと辺り一面銀世界になったり里の大半がどっかんしちゃうんですけど、私もそれしたいわけじゃないんです」


驚くほどに饒舌ななまえは隠していない本心をつらつらと述べてしまった。
ヒルゼンは脅しだろ、と口元を引きつらせた。なまえはダメかな、と頬をかきながらの返事を待つ。

「………仕方ない、何かあったら儂が責任を負おう。」

「…!ありがとうございます!」

こちらはこちらでやっておくから、なまえも何かあったらすぐに連絡しなさい。と遠い目をしながら言われなんかほんとすいませんと、なまえは謝罪を心の中で述べた。

「三代目がいたら百人力ですね!」
上司は脅して上げる。をモットーに過ごしてきたなまえはヒルゼンにも同様に実行していた。それにノセられるヒルゼンもヒルゼンだな、とへラリと笑い早速準備を始めた。