「こりゃ、また、」

私の丹精こめた作品にか、ドヤ顔しながら見せた私にか、三代目は呆れ返った声を挙げた。




自宅の地下に階段を作り、地下書庫をつくり、その一角に仕掛けを作った。
すぅ、と手をスライドさせ表れた空間モニターのボタンを押して扉を開いく。開いた近未来な建物に満足そうになまえは頷く。

「この建物は…お主一人で?」
「んー、まあ。すごくリアルなプログラムっていってもわからないと思うけど、まあリアルな幻術みたいな感じ。ある程度タンク積んどいたし、私も補給するから大丈夫。」

結界に関してはちょっと考えがあるから私の歪な結界でしばらくもたせるしかない。魔力にものを言わせて結界を構築させる。
だんだんと子供らしさを捨てていくなまえに三代目は頭を悩ませる。

波風なまえは明らかな異質だった。初めはその成りを隠していたのか九尾の事件の一件から特に顕著となった。里が復興に全力を尽くしている時なまえは姿をけして現れなかったと思えばこんなものを作っていたのか。ミナトとクシナに取り付けられた生命維持装置に、出来上がった立派な室内見上げ顔を引きつらせる。

なまえから報告を受けここまで訪れてきたが、これが幻術?いくら幻術返しを試みても解ける気配がない。異質であることは疎い自分にもよくわかる。これを5歳のこの少女が作ったのだというのならば、この子は、

「なまえ、こんなものを作って身体は平気なのか?」

「…うん、今の所は問題ないよ。じいちゃんは私を心配してくれるんだね、質問も核心を付かないのばかりだ。いったいどうして?」

考えて見たんだけど全然わからないや。そう言って首を傾げるなまえは内容さえ目を閉じれば年相応で、けれどしかし懐疑に慣れているようだった。

「なまえにはなまえの深い事情とやらがあるんじゃろう?」
「そうだけど、上の人たちから私のこと説明しろって言われたんじゃないの?」
「それはそうじゃが…」
「生まれた時から知っている私を三代目は疑うことが出来ないんだよね、ごめんね、厄介者で…」

なまえが瞼を伏せてそう言った。ヒルゼンはなまえの真意を見定めるべくジッとなまえを見つめる。しばらくそうしているとヒルゼンは頭を振った。

「なまえ、率直に言おう。上はお主を危惧しておる。お主のその力を、その知性を。」
「もし、私がその上の立場でも危惧するから、当然といえば当然…かな」
「問題は、その力をお主が隠していたということじゃ。」


ヒルゼンの言葉になまえは笑みを消した。仮面の男と向き合っていたときですら、笑っていた少女が。なまえは内心思った内容に自嘲した。それは空気に伝わって音となった。

「話してどーなるんだか」

底冷えた声にヒルゼンの肝は冷えた。過ったのは数週間前ミナトの影に隠れて無邪気に笑うなまえの姿だった。あの子がこんな風に笑うなんて考えても見なかった。

「なまえ…?」

「自分が認知していない力は全て脅威かつ猛威なんでしょうね、きっと。反対の立場になればわかるじゃないですか、自分の能力の開示は生命線なわけですよ?共同戦を張るわけでもなく、自分が知っていなければ不安だからと言う点だけでたった5歳の子供に死ね、と言うんですか?」

ぽつりぽつりとなまえは吐き出すように口を開く。

「ただちょっと他の子供と違うだけで、そうやって翻すじゃないですか。
三代目が、腹を割って話そうと言うなら私は話しますよ?

そうです、私は異端ですよ。でもただ、できることが他人より多くて、他より早熟で頭の回転が子供らしくないだけの、家族が大好きな5歳児ですよ?にーさんや、クシナさんが大切にしているこの里を、ナルトが笑って過ごすための里を守りたいって思ってるだけなのに、普通に、平和に、過ごしてきた私を邪魔した挙句、里を救った私や人柱力を、脅威になるから早いうちに懐柔しておこうなんて魂胆丸見えな、上層部に、私は従いたくないよ。じーちゃん」

二人を寝かした重力操作の出来るの寝台になまえは近づき変わらない顔色にホッと息を吐く。

ヒルゼンは年不相応な考えをするなまえに無言を貫いた。ここで動揺してしまえば少女に負けを認めてしまうことになる。いくら孫のように可愛いなまえだろうが今は四代目がいない今自分が火影なのだ。

「そんなわけなかろう、なまえよ、どうしてそんな卑屈な考えをする。」
「少なからず、私はみてきたから。信頼できる人はいても信用ならない人がいたらそれは間違いなく伝わってしまう。だから、私はあなたをここに呼んだんだよ三代目。」
「どういう…」
「私は、三代目を尊敬してます、もちろん信用も。信頼だってしたいと思ってる。」

なまえはパタパタとある一角に駆け寄る。そこはなまえが記憶しているものとそれに準ずる私の立場を記述として残したものだ。他人に見られたら確実に正気の沙汰を問われるものだ。

「もし、私が、裏切ったり信用ならなくなったらこれを見てください。一応暗号化しましたが、解読班には渡さないで。兄さんの家族がいる限り、私は木の葉の味方のつもりだから。」

そこまでなまえがいうといつものへらりとした顔で笑った。ヒルゼンは何故かその変わりように薄ら寒いものを覚えた。

「まあ怖い話はここまでにしよーよ、じーちゃん。私が言いたい事たぶんわかってくれただろうし、」

それに、となまえは続けてヒルゼンをみる。

「ここに入ることができるのは私と、じーちゃんだけだから。たとえどんな人だろうがここには足を踏み込めないし、感知も不可能だから、安心して任せてくれて構わないよ」

それ以外は何人たりとも踏み込ませない、なまえの笑みにはそんな迫力があった。5歳児に怯むなんて、とも脳を掠めたが相手はあの九尾と渡り合った5歳児だ。暗部の中でも話がひっきりなしに持ち上がっている。上層部からも、将来有望なんかではない、即戦力だ、と。

「そのようじゃな…」

ヒルゼンはため息をついて応、と答える。本日の目的の一つにしていた内容に対し先手を打たれてしまった形となってしまったが、こちらも形として聞いておかなければならない。

「それと、ナルトはこちらで預かろうと思うのじゃが…」

「却下」

「そういうと思っとったよ」

表情を変えずに目を細めたなまえは流石に5歳児と言い張るのは無理だろう、とルークは思った。

「なまえは忍になるのか?」
「あ、アカデミーには通おうと思ってるんですけど…」
「ふむ、なら儂が手続きをしておこうか」
「えぇ?!」
「お主の保護者は今生存不明なんじゃろう?」

パチリ、と右目を閉じウインクする三代目になまえは嬉しそうに顔を輝かせた。

「じいちゃんっありがと!」

感極まり、駆け寄り飛びつけば三代目はやれやれ、と苦笑した

「これからさらに忙しくなるのぉ」