*視点がコロコロ変わります





久々にであったなまえは一瞬戸惑い複雑そうにへらりと笑った。そんななまえにイタチは声変わりした低い声で音を発した。

「どうした?」

仏頂面に落ち着いた声を乗せイタチはなまえに尋ねた。

その平然とした顔になまえは目を細める。

「風の噂でね、イタチがとっても困ってるって聞いてね」

「なんのことだ?」

「……ーー。」

「……?」


ブワリと吹いた風に声がかき消され、イタチは眉を寄せ口を開いた。なまえは聞こえなかったみたいだと、他人事のように呟いた。考えが口に出てる。いつものやりとりをしようとは思った。が、小さく謝罪したイタチはもう一度尋ねてみるもなまえは何事もなかったようへらりと笑い、

「なんでもない…いや、幼馴染に相談してごらんよ」

朗らかに告げた言葉に目を見開く。その話は誰にもしていない。上層部のみの極秘内容が頭によぎる。なまえの言葉がハッタリだとは何故か思わなかった。

「どこでそれを…!」

「えー、と、そこまで睨まれる謂れはないと思うんだけど…なあ…?」

「茶化すな、関係ないだろう」

「うえー、やだなぁ。兄さんの里が幼馴染の手で荒れるって、関係ないこと?」

さらりと告げた内容に目に見える狼狽えを見せてしまった。いけない、昔からなまえと会話するとなまえのペースに引き込まれてしまう。ギリッと歯を噛み締めなまえを睨みつける。





なまえはこれはまた一仕事だとため息をつく。あからさまに話を避けたことは彼にはばれているだろうなと、内心苦笑した。

「イタチだって兄さんのこと慕ってたじゃないか、兄さんがいなくなったからって間違いを正さずにこのままなんて、私は認めないよ」

「なまえ…」

兄さんが目を覚ますまでは、兄さんの大事なものは持てる力を持って全力で守るって決めたから。ふへ、と息を吐いて笑ってみせればイタチは目を伏せて沈黙した。

「断ってもいいけど、私が全力で叩き潰すよ」

「それは、断ってもいいとは言わない」
「終わったらさ、弟たちと一緒にお団子食べに行こうよ」

「おまえは、いつも人の話を聞かないな…」

「このためにたくさん考えたからね」


忍装飾の下からキラリと光ルークが3GBほとの記録量ですが。と文字を滑らしたあと結界を展開した。なにいってんのイメージ入ってるって言ったて3GBって文書だとアホみたいに重いぞ…?とルークに突っ込む。ユラリと変化した彼の両目を察し、

「記憶、無くす、とか無しだよ?人の命かかってるんだから。」

手をはらりと振る。

「相変わらず、だな」

「あー…。……いつも言うんだけどさ、私は
別にいい人じゃないんだよ。もちろんいい忍びでもないし。」

いいハンターでも、いい魔術師でもなかったし。自分の有益を第一に考えて、仕事上守るべき人を守ってきただけで。考えれば考えるほど私なんかよりもよっぽど優秀で人間的に優れていた私の後輩たちは本当にすごいと思う。尊敬もする。だけど、私には無理だから、

「私はこの両手で救える人しか救わない、
救えないから。だから、こんなにもすぐ近くにあるキミを悲しませたくないと思うのは私のエゴだ。

私のために、私に救われてよ。」

こんなにも自分に違和感のある本音を告げるのは心底差し伸べた手をとって欲しい。私は取引なんてできる性格はしていない。自分の考えていることを説明するのも苦手だ。何も考えずに本音で喋って、私自身口をかみしめた。

「おまえは、なまえは、本当に…」

「…イタチ…?」

「俺は…」

「イタチは何にもしなくていいんだよ」

「馬鹿をいうな!」

へらりと笑ったなまえにイタチは怒鳴りつけた。馬鹿って言われてもなあ…たしかに馬鹿だけど…私って相変わらずこういう説得向いて無いなぁ。深々とため息をついたなまえはチラリとイタチを見やる。

怒気に満ちている、というわけじゃないが私の言葉に反感を覚えたのは確かだろう。

「これはうちはの問題だ。」

「うん。でも、つまり里の問題でしょ?
えー、と、ん、イタチ、こんな堂々巡り要らないよ」

「失敗は許されないんだぞ?」
「成功率8割りだけど、イタチが罪をかぶる必要は一切ないよ」
「……」
「さっきも言ったと思うけど、手だし無用だよ。計画に、作戦にイタチは含まれてないから。」

「…….、」
「自分でやるとか、手を出すと言うなら隔離するよ」


するりと細められた目にイタチは硬直する。
なまえは俺にも姉のように接する。いや、接しているように俺は感じる。成績は俺の方が上でも、いつだって俺の一歩前を歩いている。なまえは勘違いも多いが練る計画に不思議と穴がない。本人は纏めるのが苦手だと言っているが、一晩経過すると、本当になまえが考えたのか、というものを提出していた。それにしてはならないことは幼い頃からなまえから教わっていた。

なまえのこの目には何故か逆らえない。自分の運命をなまえに託すことに抵抗がないわけじゃない。全てをなまえに押し付けるのは違うと思う。だが、なまえは俺に手を出すなという。手のひらを握りしめればタラリと一筋の血液が流れた。

「できる気がするんだよ」

へらりと笑うなまえに託したのは、正しかったのか、それとも間違っていたのか。
よかった、とほおを緩めたなまえを見て、俺もだ。と内心で呟いた。