とある教室で目を覚ました。
私はたしか、希望ヶ峰学園に入学……
そこまで考えて(ああ。)と一人頷く。あたりを見回すと手書きされた入学案内を見つける。幼稚園児の落書きのような入学案内を手に(おちょくられてんのかな。)と内心そんなことを思いながら"玄関ホールに集合"に従いのんびりと歩く。無意識に絶を行ってしまうのは前の世界の名残だろうか。


今度は"ここ"か。


歩きながら頭を働かせる。いくら思い返してみても、存在する記憶は学園に入学するよりも前のもの。確かに学園時代の記憶は消されている。綺麗さっぱりと。これはある意味技術力の勝利ってやつですかね。

記憶にない私は黒幕に敗れ、記憶を失ったのか、それとも自分から記憶を差し出したのか。そこまで考えて苦笑した。たかが一般人に私が負けるはずないじゃないか、と。ならば自分の意思で記憶を失う選択をしたのだろう。(ねぇ?ルーク)そう回答を求めれば<<イエス、マスター>>と返ってくる。ああ、ルークがいるだけでこんなにも心強い。


さあついた。下げていた視線を少しだけあげて薄暗いそこに目を向ける。どうやらまだ人は集まっていないようだった。

焦っても仕方が無い。のんびりと待つことにしよう。

私はここの学園で何を見せたんだろうか。いままでの世界では魔力や念、チャクラといったそんな特殊な力があるところだった。

身体を落ち着かせることで感じ取れるそれらにひっそりと目を細める。どれもこれもこの学園では有利にも不利にもなる。もし疑われたら弁解の余地もない。いや、弁解はもちろんするけれど。

学園にくる前の私はたしか"超高校級の影"という呼称をもらっていたはずだ。意識して残したそれは前の世界の名残でもある。忍者にも滅多にばれなかったんだ。人間には恐らくバレる心配はないと思っても大丈夫だろう。

ただし問題が消えたわけではない。いくら気配を消せたとしても、唯一私を脅かすものこの学園のいたるところにある監視カメラだ。あれに姿が写っては意味がない。たしか、入浴場にはカメラがないんだっけ…あとトイレの個室。いや、個室から外に煙…チャクラの残渣が上がったら大変だ。カメラに写ってしまう。

とりあえず口外しなければ、見られなければバレる心配はない。魔法の展開もキチンと気配を確認したら問題はない。超高校級のメンツの行動を把握するためにサーチの魔法と隠をつかっておこう。

全く、この世界も中々に厄介だ。
身体をなまらせないようにしなきゃな。

そこまで考えてようやく主人公が到着した。ああ、もうそんな時間か。

ゆるりと淀みない動作で絶を解くと、とある一人の人物と目があった。そのまま視線を外し全員に目を向ける。


この人たちが超高校級、ね。

このくらいの年の子を見ると後輩のなのはたちを思い出す。逡巡したのちああ、これもずいぶんと昔の記憶だな…と、ひとり陰鬱になっていると主人公が私の方へ向かって来た。

彼以外は一様に驚いているらしい。ああ、二名を除いて。

「ボクは苗木誠、よろしくね。」

皆の視線を一斉に浴びているせいか彼は戸惑った様子で手を差し出した。握手ですね。ふむ。ここまで静かなら周りにもこの自己紹介は聞こえるだろう。

「ええっと、私はみょうじなまえです。……こちらこそよろしくね、苗木くん。」

へラリと顔を緩め笑って手を握り返せば彼は安心した様で笑い返して来た。手を話した後も口を開いた。

「みょうじさんって何の超高校級なの?」

入学するまえにネットで検索したんだけど名前に記憶がないんだ。と続いた台詞に苦笑いを返した。

「だろうね、でも、そんなに自慢できるものじゃないんだ。」

「え、そうなの?気になる。ボクもこの中の人たちと比べられないくらいで、僕自身は一般人なんだ。今までラッキーなんて程遠かったのに、超高校級の幸運ってひとりだけ抽選枠みたいなものなんだ」

「そうなんだ、私もそう変わらないなぁ。答え言っちゃうとね、影の薄さなんて、なんの取り柄も無い気がしない?ここにいるみんな一度は耳にしたことある人達ばかりで私場違いみたいで」

コミュ障のわりに苗木にはつらつらと動く舌が憎らしい。案の定苗木も固まっていた。いきなり影の薄いやつと自分で言い出したんだもね、そりゃあ驚くわ。どうやら私との挨拶が最後だったようで十神が「いつまでも自己紹介している場合じゃないぞ」と鋭くいいはなった。もしかして誘拐なのでは、そんな雰囲気にざわつく玄関ホールにプツンと音がしてチャイムが響き渡り、放送が流れ出した。

『あーあー、マイクテス、マイクテス、校内放送ー、校内放送ー』

愉快げに聞こえたそれにおもわず眉を潜める。

仕方なく、告げられた体育館へと向かうがそこは明るいだけで特に何も無く、訝しがりながら壇上付近に皆足を進めた。

ひっそりと再び絶を行い様子見のつもりで入学式をぼんやりと見る。

黒幕にルークの存在が知られているか。今の問題はそれだ。念のためにこの世界来る前、つまりナルトの世界でルークが見つかったとき念を施した。これがある限り心配事は減るが、魔法の存在を知られてることにイコールするのではないかと身構えてしまう。

<<知られてる可能性は限りなくゼロに近いです>>

ルークが察したのか念話で語りかける。
なるほど。記憶に無い私もそれだけ慎重だったんだろう。

私の今所持しているチカラは生命線なのだから。同時に毒にも薬にもなる。無闇矢鱈に攻撃さえされなければ防御に徹しなくても問題はないだろう。
咄嗟に纏を行えばガトリングガンくらいは問題ない、はずである。
よく考えなくてもチートだなぁ。


この世界の私はどう考えても宝の持ち腐れだ。