ある日ある朝、尻餅をついた形で手を握られ


「あなたが好きです
 守らせてください」

「…えー…っと……?」

 じっと真剣な眼差しで見上げられ、なんでこんなことになったのか…自分でも良くわからない。



 まずは現状確認。この人は球磨川禊…先輩。うん、とてつもなく否定したいが間違いない。

 マイナス十三組の変態たち…おっと失礼、マイナス組のリーダーとも呼べる人、だと記憶している。『』(括弧)をつけながらすがり付きたくなるような嘘をつくと風の噂で聞いたことがある気がする。すがり付きたくなるような嘘ってなんだろう。

 そして私はうん、ちょっとやんちゃ盛りな1年11組の女子高生である。ちょっとばかり特異体質はあるけれども。人外の域に達することなんてそんなことあるわけがない


 んでもってそんな私と彼の接点と言えば……なんだろう…。ひきつった笑みで呑気に考えていたらいつの間にか手をひかれ抱きすくめられていた。

「は…?え!?ちょ!」

 あわてふためき思わず突飛ばせば今度は球磨川先輩が尻餅をついていた。おもわずやってしまった、と頭を抱え込みたくなったが球磨川先輩は両手を床について座り込み下を向いたまま微動だにしなかった。


「く、球磨川先輩…?」

「『僕じゃやっぱり役不足かな』『伝わり方があれだったか』『ならどうだろ、お試しで僕にしばらく守られてよ』『そしたらキッパリ諦めるからさ!』『あ、信じてくれなんて言わないし、もちろんほら、見返りは裸エプロンでいいよ!』」

「…ん?」

 なんなんだ。球磨川先輩のペースについていけずポカンと口を開けたまま聞いていれば、なんだか不穏な単語がちらほら聞こえて思わず待ったをかけた。

「私、なんかに狙われてるの?」

「『えっ、いやいやそういうわけじゃないよ』『うーんそういう切り換えしできたのか、僕的にはこう張り倒すとかそんな展開を予想してたんだけどな、恥じらいを全面に押し出してくれても最高なんだけど』『おかしいな…ちょっとシュミレーションしたなかで確かにその回答もあったことは確かなんだけどな理想としては顔を赤く染めながら裸エプロンとか!バカじゃないの!ていうかなんで馴れ馴れしく手なんて握って…!挙げ句に抱きついてるのよこの変態!っなんて罵られると興奮したんだけどなんだかヤケに冷静だねもしかして経験済み?慣れちゃってた?』」


 なんかもう、やだこの人どこから突っ込んでいいのかわからないなにこれ突っ込み待ち?ねえ何希望してるの?訴えたら勝てるよやだお金もったいないとりあえず顔貸せ。一発殴らせろ

「『ちょ、なんで無言で拳握るの?いたいよイタイイタイそれ絶対に痛いよねえそれはだめだよ』『えっ?ちょっ?!』」

 問答無用にぐしゃり、思わず硬を纏って殴り飛ば…叩き潰してしまった。硬をしていたから感触は鈍くなっていたから微妙だがもしかしたら手にそんな感触が伝わってきたかも知れない相変わらずの威力に苦笑いして、キュウっと伸された球磨川先輩に手を合わせて合掌を送る。勿論変態が治りますようにと願いを込めしばらく顔も見たくないな、とため息をついた。


「今日は厄日だ」