「それでみょうじさん、貴方は何か見つけたかしら」

霧切さんは何かを探るように私をジッと見つめそう切り出した。

「え?私?」

まさか話をふられるとは思ってなかった。
いや、そうでもないか。彼女は超高校級のーー…なのだから。そういったものの類には鋭いのだろう。

「そう、だね、私が思ったのは監視カメラの数かな。」

むしろそれしかほぼ見ていないようなものだ。霧切はどういうことだ、と首を傾げる。他のメンバーも同様だ。十神様はイライラした様子で早く答えろと睨んでいる。朝比奈は頭にはてなを浮かべていた。

「えっと、監視カメラって名前の通り監視するためにあるわけだけど…」
「そうですな」

山田が鼻息荒くし同意する。

「ここの監視カメラはあからさますぎると思うんだ。」

「あからさますぎる?」

「うん。あの大きな監視カメラ、多分解像度かなりいいと思う。範囲まではわからないけど、カメラの遠間隔つまり距離的に。どんな細部も見逃さないようにするためっていうだけならそれは殺人を犯したクロのことをこの黒幕が把握するためだとおもうんだ。つまりあれだけの個数で賄えるならそのカメラはかなり性能がいいってことだと思う。」

頷いて聞いていた不二咲も同じことを感じていたのだろう。しかしクロの段階で顔を青くし震え出した。霧切も口元に手を当て考える仕草をし、それで?と続きを促した。みんな考え込んだり顔を青くしたりと表情は一様だ。

「資金は豊富だってモノクマは言ってた。でも、なら別にカメラの存在をあからさまにする必要はないと思うんだ。でも合えてそれをしなかった。つまり監視カメラにはもっと、監視以外にもべつの役目があるんだと思うっていうのが私の考え。」

霧切、十神以外ポカンと口を開けていた。喋りすぎたか、とひとり焦り「ゴメンね、長々と。私もまだよくわかってないんだ。」一言付け加え謝罪を告げる。

「待て」

十神が目を細め鋭く此方を見据えた。目は座っている。

「なるほど、みょうじだったか?お前の考えも一理ある。ならお前の考えを最後まで言うってものが筋じゃないか?お前はまだ言ってないことがある。」

そうだろう?と鼻で笑いギロリと睨みつけられる。

おふう、そんなに私はわかりやすいか。十神の言葉で全員の目がこちらに向く。
この視線にもだいぶ慣れたな、頭で別のことを考えてゆっくりと口を開く。

「まだ、仮定のただの想像なんだ。」
「ああ。監視カメラの話は初めからキサマの妄想だな。」
「ちょ、そんなこといわなくても!」
「女子には優しくいこーぜ!?」

意外にも江ノ島と桑田が私を援護する。
朝比奈はあわあわと私と十神をいったりきたり見返していた。その十神は早く答えろと睨んだだけだった。仕方ないな、と目線を下げる。


「たぶん、これは放送されているまたは、その予定なんじゃないかと私は考えてる。」


息を呑む音と言うものが何人も重なるとこうもはっきり聞こえるモノなのか、漠然とそう思った。そうだろう。これは確実に絶望への一歩を踏み出した。それでも続ける。

「もし、この想像が正しかった場合、人を殺した瞬間、そしてもし本当に外に出れたならそれは逆に自分自身…そのことが全国に知られていると言うことになる」

悪趣味に悪趣味を重ねたとんでもない絶望だ。この黒幕は根本的に狂っている。

たぶん、この絶句は一瞬でも誰かを殺そうともしくは殺されるんではないか、と考えていた人物たちのものだろう。

たしかに出たいなら殺せ。そう言っていた。それがルールだと。だけど出たあとのことはモノクマは何も言わなかった。この外のことも。

不二咲が震える手で私の手を握った。
もう一度カメラをよく調べてみよう。
掠れた声でそう呟いた。

「不二咲さん…」

言葉を和らげるために想像や仮定の話として進めてきたがこれは事実であるとみて間違いない。私が知っているモノクマはたしかに言っていた。希望たちが絶望するのを外の奴等がみて絶望するのが楽しい。のような内容だった気がする。本当悪趣味である。

流石に調べても配信や録画、生放映されているかなんてわからない。プログラムをつくる不二咲さんにもわからなかったようだ。パソコンの周辺機器であるがただ繋げるだけとは違うみたいだ。私にはさっぱりわからなかった。

しょんぼりしてふたりで戻るとどうやら解散が近いらしい。寄る時間もそろそろでまた明日探索を続けるらしい。そうだね、遅いからご飯食べて明日の朝シャワーを浴びよう。

今日一日ずっと歩きっぱなしだったのか。道理で疲れるしお腹が空くわけだ。調理場に入れば中には苗木くんがいた。

「あれ?苗木くん」
「え!?あ、ああ、みょうじさんかぁ」
「や、あの、脅かしたみたいになってごめんね」
「ううん、ボクが気がつかなかっただけだし。」

気にしないでと笑う彼にこっそり絶を解けばきょとりと惚けた顔になり違和感があったのだろう首を傾げた。

「あれ?みょうじさん…なんか…」

言葉が見つからないのだろう不思議そうにしていてもそのことに対しては何も聞かれなかった。

「あ、りんごがある。わーヨーグルトも!」

「え!?みょうじさんご飯それだけ!?」

苗木の言葉に頷けばえええ!と大げさにおどろかれる。な、なんだなんだ。と身構えたら「ちゃんと食べなきゃ体がもたないよ」と怒られてしまった。

リンゴでも十分お腹が膨れるのになぁなんて考え今日は夜時間も近いから明日からキチンと食べるよ、と伝えれば渋々と納得したようだった。

「でもみょうじさんすごいね」

苗木が切り出した話に首を傾げる。

「さっきの会議だよ、あそこまでよく考えられるっていうか…」

「うーん、そうだね、基本私も支離滅裂な感じだしそんなつもりは全然なかったんだよ。」

「え?そうなの?」

「うん。話ながらぼんやり思ってたことを形にして結果そうなっちゃっただけで。いつもは、私の友達…知り合いがね、どんなに悪い人でもその人の言い分をしっかりと受け止めて最善の策を一緒に探すんだ。」

「それは…たとえ、こんな…不可解な場所にいても?」

そんなことが貫けるのかと苗木くんにしては硬くなった声質でいった

「こんな状況になったことはないとは思うけど、私はあの時一つの可能性それを提示しただけなんだ。きっと彼女たちはそうすると思って。
こんな状況になって、みんな何が善で何が悪かわかっていないんだと思う。それでも、それでも私は苗木くん、きみがーーううん、なんでもない。」

にへら、と笑い食器を重ね合わせる片付けは数枚だすぐに終わる。

「え、なに?気になるよ!」

「ふは、苗木くん、夜時間がくるよ、食堂閉まっちゃうから早くでよう!」

苗木の背中をグイグイと押して今までであった彼らたちを思い出した。
みーんな、正義感だけは一人前以上だったんだから。全くもう、と一人笑って部屋へとたどり着いた。

「苗木くん、送ってくれてありがとね、また明日」
「う、うん。」

それじゃあ、といって別れた私はおもむろにベッドへダイブした。ああ疲れた。

信じてるよ苗木くん。キミもそのひとりに含まれることを。

ボフリと枕に顔を埋めて睡魔に抗わず眠りについた。