さて、"やること"と言ってもまあ気配を断って鍵をかけて幻術かけてルークと話ながら魔法展開するだけなんですけど。ヒソカのビデオ見た時も思ったけどビデオっていうかカメラにも念って有効なのが嬉しいよね。本当になんで見えないんだろう。ピッキング防止されてる扉らしいし、鍵かかってる扉は空くのを待つしかない。だけれども、それにはワンアクション起こすしかない。

ああもう、毎回おもうけど!私は頭脳派じゃないんだよちくしょう。カメラに背を向け幻術をかける。何か不自然な動作してると勘付かれると動きづらくなる。

第一にまずやることは盗聴器だ。さがすぞー大神さんにしっかりと触られたからね、取りあえず服を脱ぐ。襟裏などもしっかり確認をとる。うん、いらない心配だったようだ。制服を再び着直す。

私の魔力は水色である。そのため外だったらいいのだが、室内だと目立つ。サーチの魔法を発動するため念には念をいれしっかりと魔方陣を構築し展開する。スーパーボール大の15個の球を"隠"で隠す。またそれとは別のサーチの魔法をつかう。何日持つかなー
一週間くらい持てばいいけど。忍者相手に4日もったこの魔法ならこの世界では特に問題なく追跡できるだろう。

夕食時にでもそれぞれ追跡させとけばいいか。これくらいならルークがいればお手の物である。

(さてさてこれからどうなることやら)
<<黒幕の動向が気になるところですね>>
(まあここは一種のパラレルワールドだ。私を含んだ時点でその事実は変わらない。大事なのは慌てないこと、だね。たとえどんなに記憶のない出来事が起きても、まずはいつも通り把握から入るよ。)
<<オーライ、マスター>>
(ごめんね、メンテナンスはもうちょっと待ってね)
<<ノープロブレムです。>>
(ん?)
<<メンテナンスは実施済みです>>
(ああ、もしかして記憶のない私がやったのか)
<<イエスマスター>>

短く答えたルークになるほどこれはきちんと予測できていたようだ。記憶のない私が行ったことが今の自分の助けになってる。

ああ、私の念能力のひとつは機械修理屋(メカニックメンテナンス)である。これはまあ、制約でこのラディアルーク限定であるが。ハンターの世界で1番の危惧を取り除きたかったのだ。自動修復にも限度があるし、相棒にはいつだって万全の状態でいて欲しい。

ただ、これは酷すぎる状態だと反動で半日自分が起きれなくなるというとんでもデメリットがある。だからまあ、悪くなる前にできるだけメンテナンスをしたいってわけなのだが今は問題なさそうだ。

こんこん、とノックオンが聞こえた。もしかしたら朝日奈たちかと思ったが、違うようだ。カメラを一瞥し背を向け幻術をとく。もう一度聞こえたノックオンに慌てて扉をあける。

「お、またせしました、」

苗木くん、と出そうになる声を飲み込みチラリと彼自身を見れば手に何やら持っていた。

「ごめんね、急にきちゃって」

笑いながら言う彼に首を振る。別に来ても何の問題はない。何の用かと尋ねれば「これ、良かったら食べて」と差し出された。

その手にはお盆があり、どうやら一食分ではないようだった。簡単にできるものばかりだが、ずいぶん美味しそうに盛り付けてある。

「簡単なもので、わるいんだけど…」
「え!?これ苗木くんがつくったの!?」
「え!う、うん。迷惑だったかなごめん」

あわあわとお盆を引き戻そうとするので慌てて受け取る。
「ごめん、びっくりしただけなんだ。すごく嬉しいありがとうね」

どうやら茶碗がふたつあるということは彼自身の分も含まれているらしい。

チラリと彼を見て中へ促す。

「…入る?」
「いいの?」
「初めからそのつもりだったくせに」
「や、なんていうか礼儀として一応断っておくべきかなぁって…」
「ふーん?ここまで準備しといて苗木くん変わってるね、娯楽なんかないけどいいよ入って」
「お、お邪魔します」

ビクビクしながら入ってくる苗木くんに別にとって食ったりしないし襲わないのになーと苦笑い。


「いただきます。」
「い、いただきます…」

席というかベッドに座る。椅子は苗木くんに使ってもらっている。ん、まい。もきゅもきゅ食べていれば苗木くんは手を止めこちらを見ていた。

「そんなに心配しなくても、んまいです。苗木くんも早くたべなよ」

「う、うんそうだね。」

ようやく食べ始めた彼に心配性だなぁと笑う。

「苗木くんって素敵なお嫁さんになりそうだね」
もきゅもきゅごっくん。飲み込んでから口を開く。お茶を啜る。ああうまい。

案の定固まる彼をわらえば複雑だと眉間にシワがよりくちをもごもごと動かした。「お嫁さんって…」
「こんなに甲斐甲斐しい主夫さんなら素敵な家庭になるんだろうなぁ」
「か、かてい…」

一体彼は何を想像したのだろうか。ぼふんっと真っ赤に上気させそのまま固まってしまった。なんていうか、すまん。悪気はあったんだ。

「それで、そんな苗木くんは何か用だった?舞園さんと探偵ごっこしてなかった?」
「…っえ!……あ、え??」

意識が迷子だったのだろう。何を聞かれたのか把握できてない様子だ。なんだろう。笑ってたら悪いんだろうけど、すごく可愛い。
ごめんと素直に謝る彼に好感が持てる。

「いや、私の方こそごめんね、からかっちゃって。」

もう一度同じように伝えてみればどうしてそれを?と首を傾げた。

「特に用はないんだけど…みょうじさん、探偵ごっこって?」

「あれ?食堂で会話してなかった?舞園さんが苗木くんの超高校級の助手になるっていうからてっきり苗木くん探偵なのかと」

「ああ、なるほど…そう、なるのかな…
ん?ってあれ?あの時みょうじさんいたの?」

「うん?」

苗木はあれ?っと首を捻る。

「みょうじさん、あのとき、いや、でも」
「落ち着いて、苗木くん」
「あ、…ごめん」

頭を抱え出して悩み出した彼にもしかしたらただ単に気がついていなかっただけだと指摘してあげれば、なんとも言い難い顔をされた。なんていうんだ、表現でいうとダックスフンドが伏せをしているような…いや、これじゃあ伝わらないか。

「うう、ごめんね」
「いいよ、ちなみに私は君たち二人が会話してる最中に入ったからそれもあったのかもしれないね。」
「そ、そうなんだ、声かけてくれてもよかったのに」

ここでひとつ、私は固まった。
自分から話しかける?無理無理無理。え?なんて話しかけるのそれって。それが舞園さんだろうが苗木くんだろうが朝日奈ちゃんだろうが不二咲ちゃんだろうが無理だよ。何を話したらいいの?だって用事もないのに話しかけるとか、え?なにそれ、ちょっとよくわからない。

ぐるぐるぐる目まぐるしく回転する思考にショートしかける。なんだそれは。未知の領域だ。

「よ、よく考えたら、わたし意識してじぶんから話しかけようとしたこと、ない、かも」

しれない。思わず呟くと苗木は戸惑い驚いた。いま、こうやって向き合って話せているのに、そんなことあるのか。が、ふとおもいなおす。いや、でも、それもありえるのか?彼女は超高校級の影だ。会話の必要性など、些細なことなのかもしれない。だから彼女は人と会話するとき目が合うと、無意識に目を逸らすのか。

一人納得して苗木は笑う。

超高校級の人も、たしかに人間なんだな、と。でもこの中で、こんなにも人間臭いのは彼女くらいかもしれない。苗木が笑っているのに気がついたからか複雑そうな顔をして、笑いかければ戸惑いを隠しきれず、目線を彷徨わせ、落ち着いた自分の手を握ってそれを見つめる。

「な、なんで、わらってる、のかな」

くそ、可愛いなぁ。苗木はへらりと零すように笑い返した。

ーーーーーーーーー
苗木くんのターン!