あああ、もう、なんで苗木くんに笑われているんだ。あれか、なのはたちやキルアに言われてきたコミュ障とやらがそんなにもおかしいのか。だめだ、しにたい。なんでこんなにも私は成長しないんだ。何回繰り返してるんだ。変われよ成長しろよと内心頭を抱える。
くそう、キルアのやつ、私に敵わないからって言葉でいじめてきた恨みは未だ深いぞ。
ギリギリと手を握りしめ睨みつけながら仕方なく、話を進めようとこちらから譲歩する。
「そ、それで、あ、のさ苗木くん。」
動揺が隠し切れていないのは把握している問題ない。思わず何の呪いだと泣きたくなる。
いつの間にか空になった食器を盆に乗せながら苗木は「なに?」と微笑んだ。なんだその微笑ましそうな目は。思わず問い詰めたくなったが何やら意地が勝ってしまった。
「いや、あの、調査?探索?はどうだったの?」
これ昔の教え子がみたら思いっきり指差して笑ってくるな。重たいため息をつく。
「あー、うん、あんまり進展はないよ。ただ、倉庫はモノクマに言ったら解放してくれたよ。色々服とかあったよ」
「えっほんとに!?」
「うん、もしよかったら後で一緒に行く?」
「うん。苗木くんもまだ取りに行ってないんだ?」
「ん、そんなとこ」
倉庫の解放ってこんなに早かったかな。いくらゲームをしたからといって覚えてることは実際かなり少ないんだな。ふむ、と頷いて手を合わせる。
「苗木くんごちそうさまでした、すごく美味しかった」
「みょうじさん、気がつくと偏食してるんだもん。びっくりしたよ。」
「ええ?別にあるもの食べてるだけなんどけどな」
「バランスよく食べなきゃ、ここには病気になっても医者はいないんだからね。」
「は、はーい」
苗木がガチで母親体質である。盆に食器を乗せ持ち上げるとかっさわれる。ん?と首をひねれば、「ボクが運ぶよ」と笑いかけられる。片付けくらいはします。そう頭を下げれば、「じゃあお願いします」と同じように頭を下げられた。
なんだこいつ人間できてやがる。
ああ、そうだ。彼にあらかじめ伝えておかなければならないことがあったんだ。がしり、と彼の制服を掴む。
かちゃんと食器の揺れる音がした。
「あの、さ、」
なんて切り出したらいいのか、そこまで考えていなかったため視線が泳ぐ。えっと、なんていえばいいんだ。もし、誰かから部屋交換を持ち出されても交換しないで?いや、それか、持ち出されたのが女の子なら私の部屋を提案してくれ?んん?どうしよう。私と舞園さんの部屋はかなり遠いからマップさえ見ればすぐに判断がつく。だけど、苗木の部屋でなければトリックは使えない。うーん?こまったな。
ああ、でも提案しても舞園さんの場合断って押し切りそう。うーん苗木くん押し弱そうだもんなぁ。
悶々と考えていたら盆を置いた苗木がジッと私を見ていた。
「えっと…?」
なんだろう、と視線が合わないようにずらして様子をみれば彼はよくわからない目をしていた。何にも考えていない虚無の目しているようにも感じた。
ああ、これだから人間不信気味な私は人との対話が苦手だ。相手の感情が理解できない。そのまま、表面通りに捉えてしまう。忍びは裏の裏をかけ。よくカカシに教わった言葉だ。仲間を大切に思えないやつはそれ以上のクズだ。信じなければ、言わなかったら、きっと彼女と桑田くんは被害者とクロとして亡くなってしまう。そんなのはだめだ。
「苗木くん」
「え、な、なに?」
「なえぎくん、優しいからすぐに付け込まれちゃうと思うんだ。」
「へ?」
心底何を言っているのかわからないという顔をされる。うん、彼はそれでいいんだ。
「私はそのお人好しな性格好きだよ。苗木くんのおかげでみんなと私ちゃんと会話できるし。けどやっぱり苗木くんちょっとお人好しすぎるよ。」
「え、ええ?みょうじさん?」
「苗木くん、キミさ、もし私が一人でいるの怖いっていったら一緒にいようとするでしょ」
「うえええ!?」
「いようとするでしょ?」
「う…、たぶん、?」
「それ、舞園さんがもし、誰か尋ねてきたみたいなんだけど怖くて、ってきたら?」
「え、っと、どうだろ…部屋を交換、してあげるかな、」
「ほら、苗木くんお人好しすぎるよ」
「ええ!?さっきからみょうじさんのいいたいことがわからないよ」
私がキッパリと言い放つと、困惑したように、苗木は説明を求める。
「苗木くん、君のお人好しは君の美徳だと思うよ。私はすごく好きだよ。でもそのお人好しを利用しようとする人はいくらでもいるんだ。」
「みょうじさん…」
「人間追い詰められたら何をするかわからないから。苗木くんはそれをキチンと覚えておいて。」
言いたいことは言い終えたため彼の裾を離し、シワになってしまったそれを軽く伸ばす。彼の身体が一瞬ビクッと跳ねたがまあ、ご愛嬌だろう。
「あ、じゃあ早く片付けますかー」
のんびりいうと、彼は再び盆を手に持ちドアの方へ歩き出した。手早く先回りしてドアを開けて待機しておく。鍵をしっかりかけて食堂へと歩みを進める。
廊下には誰もいないようだ。みんな食堂や探索中なのかな。いや、倉庫が解放したって言ってたから部屋の整理でもしてるのかも。
食堂へ行くと不二咲がいた。ひとりでいるのは珍しいなと首をかしげる。
「不二咲さんだ」
苗木も不二咲に気がつく。
喉でも渇いたのかな?と苗木がいうのでそうかもしれないね。と返す。当たり障りなく会話をしながら片付けに入れば、苗木は食器片付けておくね。と洗ったものを拭いていき食器を戻していった。淀みない気遣いに気が付いたら笑いが漏れていた。
「やっぱ苗木くんお人好しすぎるよ」
片付けくらいはさせてくれればいいのに。続けてそういえば、いいんだ。と笑い返される。
「だってみょうじさんはそんなお人好しが好きなんでしょ?」
「は…い…?」
たしかにそう言った。しかもさっき。なんだろう一本取られたというか、ギャルゲー攻略されてる気分である。苗木という主人公に攻略されているんではないだろうか。あ、いやもともと貢ぎゲーでもあった気もするけど…
「だからいいんだ。」
「そ、そうなんだ…」
大変です最近の若者がよくわからない。
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零