夕方になり大神さんと朝日奈ちゃんとセレスさんとで大浴場に入った。それなりに長い髪をまとめてタオルの中にしまいこむ。

中々にいい湯である。

「あら、みょうじさん、そんな腕輪してました?」

「あーホントだーアンクルって感じだねぇー」

「うん、ずっとしてたよ」

「へえ、それ水に濡らしても大丈夫なの?」

まあ長時間でなければ大丈夫なんだけど。念の一種である。ていうか応用の”周”をしているだけだ。壊れたらたまったものじゃないから。朝日奈に問題ないよ。と返せば私の腕を持ちげキラキラとした目でルークを見つめた。

「うわぁ、結構綺麗なんだねー」

まじまじと見る朝日奈に思わずでしょ?と誇らしげに笑う。

「これどうしたの?」

「ん?これは生まれた時からずっと一緒にいる大切な相棒だよ」

「ふむ、家に伝わる家宝というものか?」

「うーん?そんな感じなのかなぁ、私の宝物で唯一無二な物であることは確かなんだけど」

とりあえずこの世界でのことを言っておけば当たり障りはない。家宝か、面白い例えだ。家での宝ではないがこれがあれば本当二、なんだだってできる。ゆるりと撫でてセレスを見る。

「セレスさんは?何か大切なものある?」
「わたくしですか?」

話を振られるとは思っていなかったのだろう。きょとりと目を丸めそしてしたたかに微笑んだ。ジリジリと近寄る私を一瞥し

「そうですわね、やはりお金、ですか。」

「お金?」

「そういえば、セレスさんは超高校級のギャンブラーだったけ?」

彼女はふふ、と綺麗に笑い目を細める。

ギャンブラーかぁ、とセレスの隣まで来た私は手をぱしゃんと湯につけ思う。彼女の夢は稼いだお金でナイトを雇って豪遊するんだったか。なんていうか、人それぞれだと痛感した。
私なんて夢見る年齢すぎちゃったよ。みんなと同い年だけど。

「ギャンブルってどんなゲーム対象にしてるの?」

「そうですね、今まで負けたことのないものは、麻雀やポーカーですわね、」

「へー…じゃあセレスさんって運がとってもいいんだね。」

「え?」

のんびりといった口調でずり落ちかけたタオルを押さえながら言えばセレスは首を傾げる。

「どうしてですか?」
「え?だって、ポーカーや麻雀ってかなり運に左右されるゲームなんだよね。セレスさんって表情を抑えるの上手そうだけどこればっかりはイカサマしようが嘘を付くのがうまかろうが一度も負けた事が無いのはセレスさん自身が強運だからだと私は思うよ」

もしかしたら、セレスさんが超高校級の幸運なのかもね。と言えばセレスはポカンと口を開け固まる。言っててくさいなぁ、自分と思わないこともない。ていうかクサすぎるよ。照れくさい。
照れを隠せずえへへ、と笑えば「みょうじさん…」とつぶやいたセレスと目があった。わたわた、と視線を外す私にクスリと笑い、「ふふ、どうやら私たち似たもの同士のようですわね」と微笑まれた。セレスもそうだがここにいるみんな美人さんや可愛い子ばかりだからなんだか最近目が肥えてきたな。と片隅で思う。セレスに「そうだね」と、返したところで朝日奈が会話に入ってきた。

「みょうじちゃん!」

朝日奈はガバリと立ち上がった。立ちくらみおきちゃうぞ。と思うが体にタオルを巻いておらず、そのプロポーションに絶句した。服の上からも充分理解していたがなんなんだこのスタイルの差は。人間に差別与えすぎだろう。と自分の貧相な身体つきを思い返しひとり頭をかかえる。

「どうかしました?」
「や、なんでもない…」

そんな私を気遣ってくれるセレスの存在も今は若干のダメージを与える。細いんですよみなさん。

「あ、朝日奈ちゃんどうかした?」

「や、みょうじちゃんがセレスちゃんと楽しそうに話してたから私たちももっと腹割って話せないかと思って!」

ニコニコと輝かんばかりにいう朝日奈にセレスと顔を見合わせる。お互いに吹き出しコクリと頷けば朝日奈はバシャンッと水音を立て並んで座っていた私たちに抱きついていた。

「ゲボ、コホッ」
「朝日奈ちゃん、苦しいよ」

セレスが噎せたのか重たい咳をしている。軽く私が庇ったのだが湯が跳ねたらしい。あとは驚いて空気が勢い良く気管にはいったのだろう。

「さくらちゃん!」
「ム。我もいいのか?」
「さくらちゃん、うん、いっぱい話そう」

私が名前を呼べば驚いて目を開け手を握りしめ、笑った。

「よろしく頼むみょうじ」

「こちらこそ、さくらちゃん」

少しだけ3人と距離が縮まったそんな平和な(非)日常。