目を閉じ"円"を広げる。
サーチついてるので意識をむけるだけでもいいのだけれど、念には念を入れてよりタイミングを図るならこちらだ。
呼吸するように把握できてしまう。そんな簡単な話に私はきっと傭兵だろうがなんだろうが関係ない存在なんだろうな、と口元を緩める。これが驕りに繋がらないことを祈る。
ある意味人外である。人で有ることには違いないんだけれど。
久々にゲームでもしたいな。超高校級のゲーマーまではいかないにしてもそれなりにゲームや漫画、アニメが好きな私にこの私生活は耐えられないよ。
自室でうーん、と体を伸ばす。これから忙しくなるのかな。頭の端でそんなことを考える。
ゆったりと扉を開けて歩き出す。
そしてそこには、記憶通りに余裕が一切無い人物ががいた。
「目先にあるエサに飛びついちゃだめだよ。こんなご時世なんだから。」
「だ、誰だ!!」
彼は部屋の扉を閉めると包丁を構えて勢い良く振り返った。その片手には工具セットが見える。
「そんなもの振り回すと危ないよ」
「みょうじ…おまえも俺を殺しに来たのか!!!?」
「そんなことないんだけ、ど」
「うるせえ!」
5歩ほど開いていた彼との距離は狙いを済ましたように鋭く包丁を突いてくる彼によって縮められる。予想通りの行動に体が反応し手首に手刀を落とす。そのまま包丁を奪い取れば瞳孔が開き興奮状態の彼は「[D:12436]ぁあああ!!!!」奇声をあげて殴りかかってくる。足を引っ掛けそのまま首の後ろに再び手刀を入れ気絶させる。ぐったりと倒れた彼にゆるく声を漏らす
「ごめんね、桑田くん一旦頭冷やそうね」
腹部から抱えるように桑田を持ち上げる。
また起きたらキチンと話をしよう。ズリズリと引きずりながら自室へと戻るため鍵を使い中に入る。彼をベッドに寝かせ、椅子にもたれかかるように座る。
さてこの包丁はタオルにでもくるんでおきますかね。
あれから一時間経たないうちに桑田は目を覚ました。辺りを見回し、そこが自分の部屋で無いことに気づいた彼は跳ね起きて周りを警戒し始める。
私に気がつかない彼にいつも通りのんびりした声色を響かせる。
「おはよう、桑田くん。目は覚めた?」
みょうじ、そうつぶやく桑田は手負いの狼のように警戒心を露わしていた。
「お前もオレを殺す気か!」
「え?死にたいの?」
「んなわきゃねーだろ!!ふざけんな!!」
「なら、そんなことしないよ。こんなところにきてまで手を染めたくないしね。で?こんな夜中に君の行動について説明できる?」
「はあ?わっけわかんねえよ!んな言葉信じられるか!!」
ぐるるる、と威嚇する彼を横目に見てため息をつく。
「はいはい、君が人間不信なのはよくわかった。私のことが信じられないのもよーくわかった。私に君は説得できるかわからない、ただ今ここ部屋にいるうちは保護されてるんだからね。まだ君は被害者になれる。」
「アホ言ってんじゃねーぞみょうじ!」
「ほんとだよ桑田くん。まだ大丈夫だから、説明してみて」
「オレは!殺されそうになったんだよ!だからっ正当防衛だ!そうだ正当防衛防衛なんだ」
「そっか、大丈夫、落ち着いて。今ここに君を狙う人はいないよ。誰にどうやって殺されそうになったの?」
子供に話しかけるように一言一句丁寧に紡ぐ。桑田の肩から力が抜け落ちる。
「ま、舞園から…手紙で呼び出されて、オレ、部屋まで、そしたら包丁で襲いかかってきて、気がついたら刀で応戦してた
包丁奪い取って逆にころ、殺してやろうって、おれ、オレ、逃げた舞園をシャワールームの扉こじ開けようと部屋まで工具セット取りに行って…」
「それで私にあった?」
焦点の会わない桑田に酷だとは思うが粘り強く待ち説明してもらう。自分のしでかしたことをきっちりと理解してもらいたい。
「おれ、動揺して、お前に切りかか、わりい」
「んーん、私に怪我はないし 桑田くんのその気持ちわからないでもないよ。謝ってくれたらそれでいいよ。」
魔導師や騎士、念能力者、忍者と比べたら可愛いもんだよほんと。悟りを開いたようにフッ、と息をつくように笑えば、桑田は「ほんと、ごめん」と頭を下げた。
「うん。桑田くん呼び出されたのってどうやって呼び出されたの?」
「は…?どうやっててふつーに手紙がドアの隙間に挟まってたぜ」
「それまだある?」
「あー、あぁ、ある。ほら」
そう言って丸まった紙を取り出す。や、読めないことはないんだけど。
「ぐっちゃぐちゃだねー…」
「やー、それはほら、なぁ?」
「桑田くん、明日、食堂に行ったら舞園さんに罪をなすりつけられてると思うよ。」
「は!?」
「君が訪れてきて襲いかかられたって」
「はぁー!?」
「むしろこれは確定だと思っていいよ。むしろならない方がおかしい」
「オレは襲われた方だっての!」
しかたないじゃないか。超高校級のアイドルと野球選手ならば世間的に有利なのはアイドルの方だよ。手をぱたぱたと振りそういえば驚愕したままの顔をそのままに口をパクパクと動かした。
「でもまあ間違ってはないけど、事実と食い違うのはよろしくないよね」
「間違ってねーって…」
「え?だって君、舞園さん殺しにもどるつもりだったんでしょ?」
「なっ!」
瞠目させ顔を青くする桑田に現実を突きつける。
「いくら桑田くんが舞園さんに呼び出された被害者だとしても、私が止めなきゃ君も殺人鬼だよ、踏みとどまれるところでそうしなかったんだからね。そんで未遂とはいえ私も被害者なわけです。まあこれはいいんだけど。
それを紆余曲折して、彼女が、君に襲われたって訴えればみんな君を疑うよ。いくら君が否定しようと残念ながら女の子の涙の方が信憑性高いんだよね。」
絶句する桑田をチラリと視界に入れて可哀想なことしてるなぁと内心苦笑いを漏らす。
「そんなわけで、さっきも言ったとおり誰かを犠牲にするというこれからの結論は私が納得できないんで、論破(ぶちこわ)させていただきますよ」
へらり、とわらう私を桑田は不審げに見る。
「とりあえず桑田くん、朝疑われてね」
「はあ?!アホじゃねーの!?なんでわざわざ自分から疑うような奴がいるんだよ」
「大丈夫大丈夫、言ったよね、助けるんだって 。最終的に助かるんだよ、ちょっとくらい我慢してもらえるとありがたいんだけどな、別の方法考えるのもめんどくさいし」
「ぜってー最後のが本音だろーが」
顔をしかめて言う彼に笑う。
「うん、ごめんね、でも元気になったみたいで良かったよ」
なっ!?はぁ?と照れを隠さない桑田に若いなー、と顔をゆるめる。
「んで?どーすんのみょうじチャン
こーなったらとことん付き合えばいいんだろ?」
「うんうん。とりあえず朝我慢してくれるだけでいいよ。あと呼び出しの手紙と手についた金箔を落とさないでくれたら勝てますぜ兄貴」
「楽しそうだな…」
グッタリと肩を落とす桑田にへらりと笑返せば明らかに人選ミスってる!と頭を抱えられた。それはまあ、否定しないけれども本人の前で言うなよまったく。
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零