白雪のstkはじめました。なまえです。

いや、そんなに大層な事はしていませんが、寝る時以外1時間ずつ様子を隠宅"リトリート"から伺うようにしています。白雪のプライベートもあるしね。

その他は持ち込んだゲームでゆったり生活しています。あと鍛錬ね。忘れてないよ護衛だもの。

先ほど様子を見た一時間後白雪はなにやら船に乗った様子。先ほどまで王子様と一緒に馬車に乗っていたのだが、別行動らしい。どうやら山に薬草を取りに行くとのこと。港街までは白雪の王子様が直々に送ってくださった様子。私の仕事ほとんどないなぁ。まあいい事だ。
この世界に無いものは変に目立ち騒ぎになる可能性が高いため、極力使用を避けたい。人前で使うことを避ける意味でなまえは隠宅"リトリート"内で生活しているのだ。改築しトレーニング室を増築したなまえは悠々自適な生活数日を過ごしていた。

ルークから映し出される映像(音声有)とともに今日の晩御飯の下ごしらえを始める。
あぁ、ちなみに晩御飯はハンバーグだ。ケチャップ派である。材料は買いだめするので冷蔵庫に大量にある。

白雪の採取中なまえはゆったりとした時間を過ごした。のちのちこの機会を利用し白雪と話に行けば良かったと思うなど今は思いもしないで。

「山は庭みたいだからそんなに心配はしてないけど…」
<<マスター!>>
「わっ…」

突然のルークの呼び掛けになまえはモニターを反射的に見る。なまえから言わすと鬱蒼と生い茂る森で白雪の背後へ人が降り立つ。彼女の首筋に手刀を落としそのまま山奥まで運んでいった。

「あらー。」
<<呑気ですねマスター。>>
「や、なんか、誘拐犯の言葉で白雪が大事にされるって分かったからね…とりあえず迎えに…行きますかー」

隠宅"リトリート"内からでるとなまえは白雪のいる館まで転移した。眠ってる白雪に危害が及んでいないこと確認しなまえはふと彼女の王子様は何をやっているのだろうとデバイスを振るった。彼は王宮の執務室にて机にかじりついていた。

「まだご存じないようだね…じゃあ気がつかないうちに助けましょうかね。」
<<命の危険が迫る前に、ですか?>>
「そりゃそうさ。あの子は戦う術を持っていないんだから。」
<<戦う術…私の知る彼女はそんなヤワな女性ではなかったはずです>>
「……珍しく静観を希望するね、ルーク」


なまえが淡々と静かに目を細める。
なまえとルークの関係は年月を重ね、対等になっている。なまえの意見をルークは尊重し、ルークの意見をなまえは尊重する。これは白雪と出会う前からお互いがお互いしか頼れるものがなくなったその時から主従から対等に変わった。

「ラディアルークはインテリジェントデバイスだから私よりもうん10倍も頭がいい。だからルーク、キミがそう言うなら静観するよ。」
<<彼女の強さと、彼の誠実さを信頼してみませんか。>>
「大事な彼女をみすみす売られるような相手白雪には任せられない。」
<<マスター、あなたは自分にも他人にも厳しすぎます。彼女が共に歩みを進めたいと願った相手、信じてみたらいかがですか?>>
「……う…」
<<彼女を守るのは自分の勤めだ、なんて義務感や責任感じているのはわかっています>>
「や、あの…」
<<何も生命の危機に直面するまで待てと言っているのではありません>>
「わ、わかってるよ…。ルークも随分彼女を気に入ってるね」
<<マスターがいなければ、彼女を選ぶ程度には>>
「………なっ!?」

ルークのセリフにわなわな、と肩が震える。
「ル、ルークさん…?」

なまえが恐る恐る声をかけて目を瞬く。
<<まぁ、貴方がいるので選びませんが。>>
「………うん…。」
<<照れないでください、気持ち悪いです。>>
「辛辣だなあ!?」

コントが始まったのかと思ったが、ルークの気持ちはわかった。うん。ちょっとだけ傷ついてちょっとだけ、嬉しかった。

<<運命共同体、なのでしょう?>>

「敵わないなあ、」

<<お互い様です>>

はぁい。となまえが笑い、しばし無言タイムとなる。日が落ち切ったところでお姫様が目を覚ました。誘拐犯と会話し、樽を蹴り、縄を解き、瓶を照明に投げつけ誘拐犯に引火させを転がした。なまえはポカンと口を開けた。

<<言ったでしょう?ただでは転ばないと。>>
「カッコいいなぁ…」

へらりとなまえが笑えばやっと調子を戻しましたね。とルークがいう。
<<無理に普段通りに過ごそうとするので心配しました。>>
「……ごめん」
<<強がりは貴方の十八番ですから。ここから、彼女から目を離さないことです。>>
「うん……ふふ、」

思わず笑って仕舞えば即座に反応するルーク。

<<何を笑っているんですか?>>
「怒らないで、ルーク。ただ、昔を思い出すってだけ。君を初めて装着した頃のね」
<<あの時の貴方には苦労させられました。>>
「うわ、御説教は後にしてよー。今は生命の恩人の危機なんだから。」

ドアをガチャガチャと鳴らす音が聞こえる。なまえは白雪が逃げ始めたのだと判断し警戒を最大限にあげた。

「夜が明けたね…」

場に似つかわしくない、きれいな空気の中、朝日が昇り始め小さくつぶやく。

白雪が窓に手をかけるのが見えた。なんの戸惑いもなく二階から降りる姿にさすが山育ちと言わずにはいられない。少しもたつきながらも前を向く姿にすぐにでも手を差し伸べたくなるが、<<マスター。>>とルークの呼びかけでその手を引っ込める。

<<王子様の登場です>>

「…!」