別れた先で待ち受けていたのはむさ苦しい筋肉を身に纏った漢たち。
気まずい思い?するわけがない。確かに居心地は最悪だが陸戦魔導隊の教導官だったのだこれ位どうとでもなる。ああ、暫く彼らにも会えないのかそう思うと寂しい気分になる。クロノくん捜してくれてるかな。そうだといいな。優秀で有能な補佐官たちや艦内チームがついてるんだ彼は大丈夫だろう。
ここがどこの惑星かわからない今むやみやたらと行動を起こすのはマズイのかもしれない。だがそんなことは知らん。私は早く帰りたいんだ。QOL維持の次は帰宅方法である。

ジロジロとやたら煩わしい視線を、考え事でやり過ごしようやく受付まで来れた。

ふとみたら想定外に高い受付に顔が引きつる。なまえの鼻先くらいに受付がある。一体どういうことか。あらためて見回すと私の頭は彼らの胸の高さにもみたないではないか。先ほどのシトラさんは私より5cmほど、シオンさんは15cm高い程度だったからあまり気にならなかったが、周りの彼らはどう軽く見積もってみても30cmは違うではないか頭2つ分は違う。

これはどういうことなのか、と首を傾げてみるが自分を基準としているせいか、いまいち理解が追いつかなかった。というよりも予測を理解したくなかった。

<<マスター>>
ルークから念話で反応があった。念のためというよりも普段からコートをを羽織っているからかどうやら光は漏れていないようだ。

どうしたの?と問いかければ魔力反応とは別のものをこの建物の中から感知したという。一つ頷いて受付のお姉さんに用紙を渡した。ら、首を傾げられた。

「これはあなたの国の言葉かしら?」
「え…」

まさかの言語違いでした。普通に会話が成立していたので共通しているものだとばかり思っていた。しまったしまった。

「あ、すみません、うーんと…代筆お願いできますか…?」

できるということなので名と生年月日格闘経験などを簡単に答えて中へと入った。

天空競技場の中ではそれはもうたくさんの人がいる。一瞬瞠目してからルークの呼びかけに返答する。

(その魔力とは別の反応もっと詳しく解析できる?)

ああ、こんな時エイミィがいたらと頭を抱えたくなった。SSSランクの魔導師といっても万能人間というわけではない。解析系統は私の分野ではない。というよりも悲しいかな、私自身判断することが苦手だ。流れで生きて来たらこんなことになっていたーー、なんてしょっちゅうである。

<<オーライ、やってみます>>

まあ先ほども思ったがこの愛機と一緒だったことが不幸中の幸いだ。唯一の生命線なのだから。いくらサポートするだけだといってもそれだ毛けでもだいぶ魔力の減りや安定感に違いがでる。

私も目を閉じて探って見る。サーチの魔法じゃ今回は意味がないのはもとより、自分の感覚だけが頼りだった。

ふ、と頭によぎる。

(天空競技場、てんくう、きょうぎじょう?)

あれ?それってまさか?その場で当たりを見回す。あたりには漢たちばかり。下卑た視線を浴びているのも感じたがそれだけじゃない。あのリング、そしてあの審判たち。遠目からだけれどもおそらく見覚えがある。

うそだろ、思わず肩を落とす。その時ちょうど自分の番号が呼ばれた。

リングにのぼり対戦相手と向かい合えば彼方此方から野次が飛んでくる。まあ内容は「おいおい!相手は嬢ちゃんじゃねーか!」「ここは子供がお遊びにくる場じゃねーんだぞ!とっとと帰りな!」「対戦相手ラッキーだなー羨ましいぜ!」「嬢ちゃんに大怪我おわすなよー」なんて色々である。ていうかまあ女で甘く見られているのは全く構わない。こんなこというとクロノに怒られるけど、逆にそれを利用していっていいくらいだから。嬢ちゃんやら子供やらは流石怒るよ。だって私結婚してるし子供いるし。

腕を組んでにんまり厭らしく笑う対戦相手に「どうぞよろしく」と一礼。相手は鼻で笑っていた。はい、アウト。だめだめ。挨拶できないなんて私の生徒たちよりも脳筋だ。そして中身がしれてる。

審判の始め!という号のあと腕を組んだままいきなり話し出した。

「おれは嬢ちゃんだろうが子供だろうが関係ないからなー?大怪我負っても恨、む、ナ!」

どかーん。

思わずグローブに魔力を込めてそのまま正面からこちらも遠慮なく殴らせていただきました。

「いつ、いかなる時でも、全力で。相手に誠意をもって闘いなよ。」

顔面を殴りたかったけれど脳揺らして後遺症とかごめんだから遠慮をなくしてそのまま鳩尾を殴りあげた。喧騒に包まれていた会場が静かになったのがわかったが今日は何だか疲れていた。意識がないのはわかっていたけれど思わず口走った。

「何が遠慮しないだ、大怪我負っても恨むなよ、だ。この木偶の坊」

ということで、50階に進めましたヤッター。
どうやら次の階からは10階ずつ上がるようだ。ということはだ。宿がない。落ち着いて考え事ができる場が欲しかったのだが仕方ない。口座を作成してくれたそうなので通帳を見ながらあるく。ふむ、5万か。一泊いくらなんだろう。まあいざとなれば野宿でもなんでもいいや。

そうのんびり建物を出た時だった。

「なまえ!」

呼びかけられ視線をめぐらせばそこにいたのは数時間前に別れたシトラさんとシオンさんが揃って樹の下で手を降っていた。

「えーと、どうしたんですか?」
「さっきの戦いみたよ!やるじゃないか!」
「ああ、200階クラスの試合が早く終わったから下におりて観戦してきたんだ。なまえお前強かったんだなぁ。」

ぐりぐりと頭を撫でれありがとうございます。とかすれた声を出してしまった。