桑田の一言によりみょうじに視線が一斉に集まる。もとより集まるとわかっていたそれらはみょうじにとってとるに足らないないものだったのか、肩をあげて見せた彼女に十神は何かを言うつもりで口を開いた。
「そうなんだよォ〜ようやく舞園サンが決意したのにねー、まあ桑田クンに返り討ちにあってけど!
うぷぷ!その桑田クンもみょうじサンのありとあらゆる機転のせいでせっかくの殺し合い学園生活が台無しだよ!!んもう!邪魔しちゃダメじゃないか!ボクはガッカリしましたよ!」
「「…!?」」
いきなり登場したモノクマにその場の全員が驚き声のした方を向く。向く、といっても実際は桑田の真後ろにいきなり出現したわけだが。登場だけは神出鬼没ってことなのか…?
みょうじは顔に出さず内心首を傾げる。
「はあ。」
ゲェ!?と驚きの声を出した桑田を一瞥し全員がモノクマを見下ろす。それは特に何も感情が篭っておらず、ギリギリとモノクマが歯ぎしりする音と他のメンバーが息を飲む音が鮮明に耳に残る。
舞園の側についていたみょうじは再びおもむろに彼女の頭を撫でちょっとごめんね。そういい体ごとモノクマに向き合った。
「あー、の、さ?一応確認するけど、たとえ舞園さんと桑田君どちらが殺しを成功させても、ここから出られるわけじゃないんでしょ?だって放送してるんだもんね。こんな大掛かりなことをするくらいだし、それだけで出れるはずがないよ。」
ねえ、ほかにも何か重大なことがあるんじゃないの?驚く周囲を放置しみょうじが無表情にモノクマを見つめる。ギリギリと悔しそうに歯ぎしりをしていたモノクマはもう存在しておらず代わりにニタリ、と口を釣り上げた。
「おい、コイツの言っていることは本当なのか」
「みょうじちゃん…それ、」
「ま、まだ何か有るっていいいいうの!?」
「おいおい…いい加減勘弁してくんねーべか」
「みょうじ、なまえ殿…?流石に妄想の範疇から逸脱しすぎなんでは!?」
「殺人に成功したもの、がこの学園から出られる…はずですわよね」
一気に騒がしくなった周囲にモノクマは口元に丸い手を当てクププと愉快げに笑った。
「ナニナニ?オマエラもしかしてただ殺すだけでここから出られるとでも本当に思ってたの?」
「甘い、甘いよっ!ミルクチョコレートに蜂蜜と砂糖をいれてさらに生クリームを乗せるくらい甘いよ!激甘だよ!」
「ふざけるな。お前が言ったんだろう? 殺人を犯した者は卒業出来るとな…」
入学式でのモノクマの言葉をそのまま受け取るなら、"殺人に成功した舞園、または桑田"はこの学園から出る事が出来る。しかしその言葉を聞いて、モノクマは肩を上下に揺らして笑い出す。
みょうじはその甘すぎると言われた例えに口元を抑えた。それは食べ物じゃない、と顔をしかめた。
「うぷぷ…だってさ… 甘い…甘すぎるッ!
むしろ…本当の絶望的お楽しみはこれからじゃん!!」
「たのしみ…?」
モノクマが何度か口にした"絶望"の言葉ーーーもちろん殺し合いをさせる事は大前提なのだろう。モノクマの言葉を借りるのなら本当にみょうじ達にさせたかったのは、どうやらこれから説明される"お楽しみ"の方だった。
みょうじたちは体育館に集まるように、とモノクマに言われ、渋々重たい腰を持ち上げた。
ぴょこん!と現れ、こほん、とモノクマが咳払いをして見せた。
「お集まりアリガトウゴザイマス!では、ここで…!! 『卒業』に関する補足ルールの説明を始めます!! 『誰かを殺した者だけが卒業出来る』という点は、以前、説明した通りですが… その際に、必ず守っていただければならない約束があったよね?」
「校則の6条目の項目ですわね… 自分が殺人を犯したクロだと、他の生徒に知られてはならない… その点を言っておられるのでしょう?」
本来ならば"殺人"という行為自体、おおっぴらにするものではない。みょうじはこの世界以外にも2つ異世界を廻っており、どれも命と隣合わせの宿命だったが、その価値観は変わることはなかった。むしろ、さらに命の尊さを知ったのだ。まあ、学園生活において常識が通用するとは思っていないが、それは、うん、みょうじ自身も規格外な面がある。彼女はどうにかする気満々であった。
セレスの言葉にみょうじは電子生徒手帳を開く。
「そう、ただ殺すだけじゃ駄目なの。 他の生徒に知られないように殺さなければならないの! で、その条件がクリア出来ているかどうかを査定する
為のシステムとして… 殺人が起きた一定時間後に、『学級裁判』を開く事とします!」
『学級裁判』モノクマの言葉に耳を傾けている生徒達はタラリと冷や汗が頬につたう。
モノクマは学級裁判が殺人が起きた数時間後に行われ、学級裁判とはその他の生徒である"シロ"が殺人を犯した"クロ"をつきとめる為のものであるという事を舞台の上、さらには教台に乗りクルクルとまわりながら話出した。
その回転がピタリ、と止まりモノクマは声のトーンを落とし淡々と話出した。
「学級裁判では『身内に潜んだクロは誰か?』を、オマエラに議論してもらいます。 その結果は、学級裁判の最後に行われる"投票"により決定されます。 そこで、オマエラが導き出した答えが正解だった場合は… 秩序を乱したクロだけが"おしおき"となりますので、残った他のメンバーは共同生活を続けてください。 ただし…もし間違った人物をクロとしてしまった場合は… 罪を逃れたクロだけが生き残り、残ったシロ全員が"おしおき"されてしまいます。 その場合、もちろん共同生活は強制終了となります!
ああ、そうそうみょうじサンの質問なんだけどね、舞園さんは自分が桑田クンを殺して外に出た後、罪をなすりつけた苗木クンも誰かを殺して出てくればいいと思ってたみたいだけど、つまり、残念ながら考えが甘かったようだね! うぷぷ桑田クンに関してもおんなじ!この学級裁判で明かされたら"おしおき"されちゃうってわけです!
というわけで、以上、これが学級裁判のルールなのですッ!!」
この青ざめ絶望的な顔をした生徒たちを見るのが心底楽しいのだろう。みょうじは只々まっすぐにモノクマを見た。
→
零