しばらくここからは出られないがここの物は自由に使える旨を告げなまえは隠宅"リトリート"を後にした。

暫くして私のしていることって軟禁なんじゃ?え?監禁?と頭を過る。違う違う。隔離だよ隔離。

皆が散策している時間だということを確認し、彼らに追いつくために歩みを進めた。円をしながらしばらく歩みを進めるとなまえは声をかけられた。


んん?どうして後ろから?

そう思いなまえは振り返りながら目を細める。

「なまえさん、よかったやっと見つけた。」
「………」
「あれ、どうしたの?」

動揺で言葉が出ないなまえに彼は不思議そうに首を傾げた。なまえとしてはどうしてわかったの?気配を消しているのに?と疑問を口にしたい衝動にかられる。
もちろん我慢したが。


円をしながら歩いていたなまえは、絶をしているというより気配を絶っているよりは、消しているというレベルであった。

念を覚えている者や、かつての兄ならば分かるだろうが、ただの一般人である苗木が気付いたことに動揺していたのだ。

「…あの、なまえさん?」

「…あ、いや、なま、え…」

苗木の困惑した顔になまえはハッと意識を戻し、気配云々は言うはずもなく、話のネタとして気になったことをあげる。

すると彼は不思議そうにしていたが、えっ!?と目を開きやっと気が付いたのか腕ををブンブンと振り「迷惑だったかな?」となまえを窺う様に覗き込んだ。無言で一歩下がり、首を横に振る。内心何言ってんだコイツ、となまえは苗木のコミュ力の高さにドン引いていた。
照れ臭そうに頬をかき、それからホッと胸を撫で下ろす目の前の人物になまえは知らず知らず眉を潜めた。



「なまえさん気配薄いから探すの苦労ちゃった」
「え、あ、ごめ…」
「謝らないで、なまえさんもやっぱり超高校級なんだなぁって思いながら探してただけだなら」
「………はあ…それで、何か用事?」

朗らかに笑う苗木になまえは意味がわかんねー…と先を促す。

「えっ、あ、いや!ただ、なまえさんが居なくて、みんなに聞いても知らないっていうから何かあったんじゃないかって心配になって…その、あの…」


なるほど、皆に迷惑をかけてしまったわけか。

「あー、うーん、こんな状況だもんね…それにしても、よく私がここにいるってわかったね」

なまえが純粋に思った疑問を苗木は事もなげに、なまえさんがなんとなくこっちにいる気がして…と笑った。

その言葉になまえは戦慄した。

(まさか…いや、もしそんな…)

もしそれが事実なら彼にはさらに注意が必要だ。照れたように笑う苗木になまえは危惧する。これがなまえの悪い癖だった。注意深いようで察しは良いのだが、その察しは何か言わなければならないことがある。というレベルで行動に移さず考え込んでしまう。そこで、"隙"ができる。

「どうしたの?」

なまえが意識を戻すと、顔と顔が5cmほどの間しかなく、近すぎて焦点の合わないなまえは一歩後退する。

(油断、した…)

なまえはバクバクと煩い心拍を感じながら内心冷や汗をたらす。これが戦場なら死んでたぞ私…。なまえは引きつる頬を感じながらなんとか言うべきことを口にした。


「あ、の、苗木くん、近くない?」
「えっ?あ…あははは、つい…」

(ついなんだ…)

びっくりだわ。幾度となく見せつけられるコミュ力の高さになまえは彼と私は違う人種なのだと理解した。おけ、把握した。

ズレた思考に気がついたのか、純粋に話題を返るためなのか彼はとにかく!っと口調を強めた。

「みんな心配するし、こんな時に一人で行動なんてダメだよ?」
「う、うん…」


へらりと笑って頷けば、「じゃあみんなのところに戻ろう」と手を差し出した。
………え、何この手。マジマジと見つめる私に苗木は首を傾げる。行かないの?そんな雰囲気にどことなくこの手を取れと匂わせてくる彼を一瞥し構わず隣を過ぎた。

「えっなまえさん?」
「早く行こうよ」

みんなが待ってるんでしょ?へらりと笑むと、苗木が肩を落とす様子を横目で捉える。霧切さんに言った言葉を思い出した。攻略、ねぇ…?

残念、まだまだ好感度不足。
いまだ、私が胸を焦がすのはアノ人だけ

何度も何度も繰り返した世界になまえは幾度も絶望して切望した。

幼い時ルークに選ばれ、あの人に出会い運命を始めて信じた。こんな風に切り離されたときはその運命を恨んだ。どうして私なのか。幾年も年がすぎ、けれど一度も、死を経験できずにただ年を重ねただけだった。

私の精神が子供へ大人へと振り回される。生きるための力だが戦力のみが強化させられ、ずっと心は摩耗し続けていた。

守りたいと思ったものは全てが私のまえからいなくなった。この世界もどうせ同じ。だけど、違う世界にくるたび何度でも試してしまう。もしかして、と思ってしまう。彼らが生きているのかも分からないのに、それを望んでしまう。それだけの年が過ぎてしまったのだ。

この世界に自我を持ってしまった瞬間から味わった絶望は、急速に加速した。

私を帰してよ。

音を乗せずに漏れた空気。けれど胸を押さえて立ちつくすなまえをすぐ近くにいた苗木ははっきりと見ていた。

不思議そうに、心配そうに、そして嬉しそうな感情を彼女の愛機であるラディアルークは捉えた。

<<マスター>>

「あっ…」
「大丈夫?なまえさん、やっぱり江ノ島さんのこと…」
「や、あ、う、ごめん…ぼうっとしてた…」
「うん!行こう」

ルークから声をかけられ意識を取り戻したなまえ。江ノ島のことで気分が悪いのでは?と訝しんだ苗木だったが、なまえが首を振ると喜々として笑みパシリ、と彼女の手を掴み優しく引いた。

なにがどうなってこうなった。

なまえはぽかん、と間抜けに口を開け呆然とした。