体育の時間新たな教科担任が追加されることとなった。なまえはふーん。昨日は補佐って言ってたのに体育持っていっちゃうんだ。と体操座りしながら目を細め頬肘をついた。なまえは烏間の授業は欠かさず出ることに決めていた。烏間先生の授業じゃないならさぼろうか。
「お父さんの言うことは絶対だ」
なまえはこっそりと息を大きく吐いた。
そのおどろおどろしい目を隠さないと意味ないよー。そして敵意を生徒に向けるな。
「鷹岡先生ねぇ…」
「しかしこの時間割は…ないわぁ…」
私も次からさぼろー。なまえはカルマがサボッて居るのを知って…ぼんやりと空を眺めていれば前原が鳩尾に蹴りをいれられるのが見えた。
ピキリ。なまえの米神に苛立ちが襲う。
神崎に絡むのを見てなまえはゆらりとオーラが揺れるのが感じ取れた。
「私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」
手出し出来ない自分が悔しい。なまえは茅野をちらりと見た。彼女は本当に天才だね。彼女を見るだけでなまえは落ち着くことができた。
スクワット300回、それくらいならばみょうじなまえならば全然問題ない。しかし、E組のみょうじなまえはそれが出来たらおかしい。緩く息を荒げる。
倉橋が烏間に助けを求め根を上げた瞬間影が落ちる。
「オイ烏間は俺たちの家族じゃないぞぉ?お仕置きだなぁ。父ちゃんだけを頼ろうとしない子は!」
頭をかばう倉橋に殴りかかる鷹岡が振りかぶった瞬間、烏間がその腕を抑えた。
お。なまえはスクワットをやめて堂々とそれを眺めた。
「そこまでだ…暴れたいなら俺が相手をしてやる」
「烏間…横槍を入れて来る頃だと思ったよ。言ったろ?これは暴力じゃない、教育だ。暴力でお前とやりあう気はない。やるならあくまで教師としてだ。」
そのまま自身のボストンバッグに向かって歩き出す鷹岡。
「烏間、お前が育てたこいつらの中で一押しの生徒を1人選べ。そいつが俺と戦い、一度でも俺にナイフを当てられたらお前の教育は俺より優れていたと認めて出て行ってやる。ただし使うのはコレじゃない。殺す相手は俺なんだ。使う刃物も本物じゃなくっちゃな…。」
なまえは烏間が誰を選ぶのかを理解した。
この中だと、彼…だろう。案の定渚を選ぶ。男子の中で一番非力そうな烏間が渚に受け取らなくてもいい。と断らせようとしているのがわかる。だが渚の目は烏間の目に真っ直ぐ向いていた。
なまえは烏間の台詞を頭でもう一度再生する。地球を救う暗殺任務を依頼した側として君たちとはプロ同士だと思っている。プロとして君たちに支払うベク最低限の報酬は、当たり前の中学生活を保障することだと思っている。
烏間の台詞に胸が締め付けられた。烏間の台詞と彼の声になまえは泣きたくなった。記憶から掠れかけていた彼の声とそっくりだったからだ。
真っ直ぐと自分の目を見て話してくれる彼をなまえはクロノと重ねていた。
「やります」
渚の決意した声になまえはブルリと震えた。
数秒逡巡してからゆっくりと渚は笑顔で鷹岡に近づいた。そのときの鷹岡の顔を見てなまえは勝負あり。とつぶやいた。流れる動作でナイフを振るい鷹岡の巨体の重心を後ろに持って行き、背後に回って首元にナイフを当てて「捕まえた」。力ない渚の満点な解答だった。
「あっあれ、峰打じゃダメなんだっけ!?」
そんな渚に小さく笑いなまえは勝者に駆け寄る。みんなから賞賛される渚に、前原は真剣な顔で近づく。そしてパンッ!と音を立てて頬を叩いた。
「いった!なんで叩くの!?!?」
「ああ…わるいちょっと信じられなくて…っでもサンキュー!さっきの暗殺スカッとしたわぁ!」
前原はグリグリと渚を撫で回す。
そんなE組の彼らに意識の戻った鷹岡が息を荒げ起き上がり睨みを利かせた。
「このガキィ…父親も同然の俺に歯向かって…マグレの勝ちがそんなに嬉しいか!もう一回だ!心も体も全部残らずへし折ってやるァ!」
もはや理性のない獣だった。そんな鷹岡に渚は落ち着き払って真っ直ぐと彼をみた。
「………たしかに、次やったら絶対僕が負けます。でもはっきりしたのは、僕等の担任は殺せんせーで、僕等の教官は烏間先生です。これは絶対譲れません。父親を押し付ける鷹岡先生よりプロに徹する烏間先生の方が僕はあったかく感じます。」
「本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝します。でもごめんなさい。出て行ってください。」
渚の言葉に激情した鷹岡に烏間が殴り飛ばし止めに入る。そして理事長がゆっくりと歩いて近づいてきた。
「新任の教師の手腕に興味がありまして…」
「たしかに教育に恐怖は必要です。ですが暴力でしか恐怖を与えられないのならばその教師は三流以下だ…解雇通知です。ここの教師の任命権は防衛省にはない。すべて私の支配下です。」
おーお。すごいなぁ。渚も、理事長も。自分の言いたいこと主張はっきりといえてて。なまえは眩しいものを見るように彼らを見た。すごいなぁ、このクラスはどごでも真っ直ぐだ。口を一文字に結び奥歯を噛みしめる。
烏間の財布でデザートを食べられると聞いて少しだけ胸が高まった。烏間先生の声を聞いていたい。なまえは烏間が参加するということで参加を決めた。コイスルオトメじゃないけど、これまた近い何かなのかな。なまえは湧き上がる気持ちをギリッと噛み潰した。
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零