「プール!?」

顔を真っ赤にして口元を押さえるなまえに茅野と渚は揃って首をかしげた。

「そりゃ夏だし」
「ぷーる…」
「指定水着買わなかった?」
「買った、けど…」
「なら今日持ってきてないとか?」

絶句するなまえに渚は薄々違うだろうと感じながらも水泳バッグを担ぎ問う。

「もしかして、泳げない?」
リオの茶化した問いに下唇を噛みながら俯き気味に首をふる。
ならば渚の問いが正解だったか。リオはフムと一つ頷く。渚にトンっと肘打ちしニシシと口角をあげ笑ってみせる。つまり言葉の責任は取れよ、そんな意味を持った行動だった。

「えええ!?」

その意味を正確に読み取った渚は前のめりにフラつき非難の悲鳴をあげた。

「だーいじょうぶだよ、なまえちゃん!つるぺたは正義だから!」
「茅野ちゃん…!」
「ええ!?そっち!?」
「もちろん水着も持ってきてない」

なまえがドヤっと胸を張ったとき、殺せんせーが現れた。

「ダイジョーブですみょうじさん。そんなこともあろうかと水着の予備は何着もあります。」

「それは殺せんせーの趣味なんじゃ…そして必要ないです」
なまえの突っ込みに場が笑いに包まれた。
「にゃ!?にゃにを言っているんでスカみょうじさん!?!?水着を忘れても授業を受けれるようにという先生のなけなしの給料を叩いた…」
「はいはい、先生、みょうじさんも茅野もドン引いてるよ」



前原と磯貝が教室の入り口でその様子を見て苦笑していた。
そのとき片岡と原が通りかかりどうしたの?と首をかしげた。ふたりはほら、とみょうじを指し
「みょうじ、ずいぶんクラスに馴染んだよなあ」
「ほんとほんと、初めはどうなることかと思ったけど。」
「片岡、仲いいっしょ?」
「そうねぇ、なかなか面白い子だよ」
「へえ、意外だなー。」
「ってかみょうじ聞いてみたらアニメとか漫画とか好きらしいぜ?最初控えめに話してたのに途中から普通に掲示板用語使ってたし」

前原の言葉に片岡が「そうそう」と同意するように笑う。

「ゲームとかも好きみたいで、サバゲーとかRPGとかオンラインのゲームもテレビゲームも好きみたいでE組来る前はゲームばっかりやってたって言ってたよ」

へえ、と原と磯貝、そこに菅谷と千葉がまざり普段は大人しい奴なのになぁ、と頷きあっていた。

「お!あっち話しついたみたい」



「やだ、見学します。それか烏間先生に遅れてる体育の授業を教えてもらいます」
「そんにゃこと言わないで!センセー頑張ってプール作ったんですよ!」
「え?」
「オォ?興味湧いてきましたか?」
「物作りゲームもしてきたんで」


「相変わらずゲームの事となると揚々と話すなぁ」
「ってかプール作ったってまじかよ!」

おーい!と呼びかける前原たちになまえはハッとなり目をそらした。

「帰りたいなあ、帰りたいよおメグちゃん渚くんー…」
「プールくらいじゃなんともないでしょ」
「この暑いE組で涼めるのなんてプールくらいだしね、楽しまなきゃ損だよみょうじさん」

渚の言葉になまえは情けない顔を見せながら肩を落とした。