なまえは旧校舎にて烏間に恒例の放課後体育のために教室に残っていた。その突如爆発音がし目を見開く。烏間に一言も入れずその場を駆け出す。周りに円をし全速でかける。自分の前にはカルマと寺坂がいた。寺坂に言われプールに位置していたであろう生徒が水ごと姿を失せた光景を見てなまえは目を見開いた。


「何…これ…?」
「俺は何もしらねぇ…話が違ぇよ、イトナを呼んで突き落とすって聞いたのに…」
「なるほどねぇ…自分で立てた計画じゃなくてまんまと操られてたってわけ」
「言っとくが俺のせいじゃねぇぞっこんな計画やらす方が悪ィんだ!みんなが流されてったのも全部奴らがわる」

カルマは寺坂がそこまで言うやいなか寺坂を殴り飛ばした。

「流されたのは、みんなじゃ無くて、アンタだよ」

なまえは姿を見せると冷たく寺坂をみた。
「ごめん赤羽くん。台詞とっちゃった。
あのさー、人のせいにする前にその空っぽな頭で何したらいいか考えたら?いくら自分は脳筋だからって言い訳なんてしてないで早くクラスメイトを助けようと言うそぶりくらい見せなよ」

そこまで言い切って、ああもう。柄じゃないのにとなまえは苦虫を噛んだ様に顔をしかめた。

「ごめん、私行くよ」

キョトリと目を丸くしていたカルマを一瞥しなまえはE組の生徒たちの気配を辿り駆け出す。


「まじかよ」

「あの程度の水のハンデどうにかなるんじゃ」
片岡や他の生徒が驚いたように殺せんせーを見ていたが現れたなまえやカルマ、寺坂に視線が集まる。

「水だけじゃねえ」

「力を発揮できないのはお前らを助けたからよ」


見ろよタコの頭上。そういって促した寺坂の視線の先には今にも落ちそうな原さんがいた。彼は更に続けた。

「殺せんせー原さんたちを守るために…」
「アイツヘビーでふとましいからあぶねぇぞ」

渚が焦った様子で助けないと!と声を発した。

「どうやって?!」
「もしかして!今回のこと、全部あいつらに操られてたのか!」


「んー…そのイトナくんがどういう人なのかわからないけど、彼のことなら大丈夫なんじゃないかな。この状態みて危険なことなんて一つも無いから。」

なまえは何の気なしに状況を一瞥したあとこっそりと呟き安堵していた。

「ああ、そうだよ!目的もビジョンもねぇ短絡的なやつは頭のいい奴らに操られる運命なんだよ。だがよ、操られる相手くらい選びてえ。奴らはこりごりだ。賞金持ってかれるのもやっぱ気にいらねぇ!…だからカルマ。てめぇが俺を操って見せろや。」

ん…?と今まで戦闘に視線がいってたカルマは寺坂に視線をやった。

「てめえのその狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!完璧に実行して、あそこに居るのを助けてヤラァ。」

なまえは寺坂の言葉に口角をあげた。
カルマも同じだったんだろう、体ごと寺坂に向き合いにんまりとわらう。

「いいけど…実行できんの?」

おもむろに手を伸ばし寺坂の制服のボタンを千切った。なまえはKYの如く糸がやわすぎるのか、カルマの手が強靭すぎるのか真剣に考えていた。
「…俺の作戦…死ぬかもよ?」
「やってやんよ。こっちとら実績持ってる実行犯だぜ?」

その言葉でカルマの作戦が決行されることが決定した。

なまえは現在の様子をぼんやりと見ながら茶番だねぇ、とため息を吐いた。別にバカにしているわけではないけれども。やはり意識の相違というものか。寺坂が川に降り白と呼ばれる覆面に「オイ!」と声をかける。

「寺坂くん」
「よくも俺を騙してくれたな」
「まあそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組に浮いてた君にとっちゃちょうどいいだろ?」

悪びれなくいう白に寺坂は「うるせえ!」と声を荒げた。
「てめえらは許すさねぇ。イトナ!てめえ俺とタイマン張れや!」

ボタンのとれた制服を脱ぎイトナに向かい合う。
殺せんせーは止めるが寺坂はとめない。なまえはこれから目の前で起こることに肩の力を抜いた。出番、なかったなぁ。少しだけ彼らの役に立つつもりだったんだけどなぁ。まあ、仕方ないか。

カーディガンの上から手首につけていた腕輪を掴んでいた手を離し今では水遊びする彼らを見て苦笑いをこぼす。静かに教室に戻ろうとしたなまえは、絶妙なタイミングでそれを逃した。

「みょうじさん」

気を抜いたタイミングでカルマから声がかかったからだ。

「…は、はい。」
「ずっと冷静だったね?」
「え?れ、冷静…?」
「うん。怒りや焦りを見せたのはあのプールを見たときだけ。それ以降はじっと様子を見てただけだったね。」

なんで?と言外に問われているのを感じとり、その台詞になまえはへらりと笑って見せた。意味もなく突如笑みを見せたなまえにカルマは目を瞬く。

「だって、状況を見たらわかるよ。もう安全だって。」
「安全?」
「爆弾とか実銃…っていうんだけ?本物の銃とか無差別に人を殺す道具じゃなくて、殺せんせーを狙ってるだけみたいですし?…………それなら殺せんせーやE組のみんななら大丈夫だって確信があの時もてたから、かなぁ。」
「ふーん。このクラスにいてもそうそう実銃とか爆弾とかみないんだけど…逞しいねぇ」
「そもそもアニメとか漫画でしか見たことないよ」

そしてそれは実銃とは呼ばない。なまえは自分で突っ込みを入れる。

「ふーん?まぁいいや。アンタがちゃんとクラスメイトをやるっていうなら俺からは今の所は言うことはないしね。真っ黒だけど。」
「そ、そんなこと言われても、なあ…なんならもういっそ殺せんせーに調べて貰ってよ…わざわざ、この教室で自分の身を隠すなんて、そんな非効率的なこと…」
「まあそれは改めて聞くけど。」

聞くんだ。

なまえは告げられた内容に思わず苦笑いを示す。ならばウルに気をつけろと声をかけねばならない。頭に算段を並べながらチラリとカルマを横目で見て、目を閉じ、今度は目の前で起こっている勝利の喜びに笑みを浮かべた。