一学期期末試験。本校舎の教室にて席に着いたなまえは挑む気満々の彼らを見て肩身の狭い思いをしていた。

問題解けるかなあ…。入学試験の時自力で解けないものはルークに手伝ってもらっていた。念話で脳内に直接答えを教えてもらい事をなしていた。わからない問題を自力でできる気はさらさらない。

この日のために勉強はしてみた。自力では60点5教科でとれば300点。いや、70点ならば350点か。となまえは脳内で計算する。そもそも自力で英語の点数を取れる気なんてしない。そして元々自力に頼る予定もない。

「なまえ、どう?」
「メグちゃん…んっとね、目指せ4教科満点、かな?」
「4教科…?」
「言うだけならターダー。英語なんて捨てました」
「しかし満点なんてとれるの?」
「うっ…がんばるし」
「はいはい。頑張ってね。」
「むー。」


どの道貢献しなければならないのだから、今のうちに貢献しておきますか。なまえはペンをグルリと一周させる。ポトリと机の上に落ちたシャーペンを見て遣る瀬ない気持ちになるが、気を取りなおして回ってきた用紙を裏面で机にセットする。




そして期末9教科を乗り越えた結果…
5教科でのトップをクラスで発表された。

「まあまずはトップが取れたかを発表します」

殺せんせーの言葉にクラス全員固唾を飲んで結果を待つ。

「まずは英語から…E組1位そして学年でも1位は!
中村莉桜!完璧です君のやる気にムラっ気があるので少々心配でしたが」
「んふふー。なんせ賞金100億かかってっから。触手1本忘れないでよ」
「ぬるふふ勿論です」

「続いて国語…E組1位はみょうじなまえ!学年トップはみょうじさんとA組の浅野学秀!お互い満点です。そして神崎さんも大変惜しかった」
「えっ…」
「おめでとうございますみょうじさん。これで2本目です。」

「しかし浅野は点取るな…5英傑なんて呼ばれてるけど結局あいつを倒さなきゃ」
「どの教科も相変わらず隙がないな」
「英語も中村と1点差だってよ…」

「続けて返します…社会…E組1位…磯貝悠馬くん!学年では…おめでとう!浅野くんを抑えて学年1位です!」
「うっし!」
「そして、2位はみょうじなまえさん、磯貝くんと1点差ですがんばりましたねぇ!」

そこでなまえはようやく答案用紙に目をやった。社会でも満点目指してたのに。眉をひそめなまえは答案用紙を机に戻す。

「マニアックな問題が多い社会でよくこれだけの点数が取れました!」
「続いて理科!E組1位みょうじなまえ!奥田愛美!学年1位もこのお二人です!」
「おいおいまじかよみょうじ!!お前スッゲーなぁ!」
「触手はお前らのもんだー!」
「数学を待たずして勝ち越し決定!」

「そして残す数学…クラス1位はみょうじなまえ。学年トップは浅野学秀君でした。」

手に渡った4枚のテスト用紙になまえは苦笑した。実力なんてこれの半分くらいだよと。ただ満点を狙ったなまえとしては不服の残る結果だった。



「それぞれ思うところはあるでしょう、その思いは暗殺と来期のテストにぶつけて下さい」

綺麗に締めたかと思われた直後殺せんせーが顔にバッテンにし色を変えた。

「しーかーし、みょうじさん。」
「うぇ…」
「4教科でこれだけ優秀な成績を叩き出したあなたならば言わなくてもわかるでしょうが……英語は赤点スレスレですよ!あれだけ教えたのに復習をしていないでしょう!!」
「む、むしろ初めて赤点取らなかったことに今!ものすごく感動しています!すごい、先生ありがとう!」

なまえは答案用紙で顔を隠し言い切った。
なまえのテストは英語38点国語100点社会96点理科97点数学99点。合計430点と言う高値だった。

「E組のとった1位5教科ではみょうじさんが2本、奥田さん、中村さん、磯貝くんが1本ずつ。計5本ですね」

(5本ならなんとかなるでしょう。もう1,2本やられてたら危なかったですが…)
ヌルフフと笑う担任になにいってんだ?と声をあげるものがいた。

クラスで湧き上がる家庭科さんへの持ち上げが凄まじくなまえは吹き出して笑った。

「そうだねぇ、家庭科さんは立派な5教科の一つだ。」

なまえは噛み締めながらクラスメイトと一緒になりながら野次を飛ばした。





なまえは殺せんせーが旧校舎を出るのを目にし首をかしげその後を追った。
その場にいたカルマとのやり取りを見て、かっわ…と思わず口元を抑える。イヤしかし、豆腐メンタルな私が実際やられたらと思い直し湧き上がる嘔気に目を背け急激にその湧き上がった無理やり気持ちを押さえつけた。

まあ、余裕こいたわけじゃないけど私もカルマと同じような配点だしなぁ。むしろ私のが成績下だったわ。彼ホント地頭いいねぇ。なまえは立ち去ったカルマをぼんやり眺めながら担任が近づいてくるのを感じ取った。

「おやみょうじさん。聞いてらしたんですね。」
「みょうじさんか…」

担任と副担任が揃った木下になまえはあまり見ない光景だなといらないことを考える。

「や、えっと、あの盗み聞きするつもりはさらさらなかったんです…殺せんせー」
「そうですねぇ、あなたは私の後を追っただけですしね」
「あ、はい…ただほんとに、赤点回避できたお礼を言いたくって」

「みょうじさんは几帳面ですね。」
「几帳面とか、そんなそんな…」


そんなことはないし、むしろズボラ…っというよりもやらなきゃならないこととやるべきこと、やりたいことの区別もつかないまだまだ子供ですよ…本当に…。

「みょうじさん。先生はね、いろいろなことを経験して欲しいんです。」
「……。」
「みょうじさんは素行も、クラスの仕事振りも丁寧です。けれど、人と距離がありすぎる。」

言われなくても知ってる。なまえは吐き出すように心の中で吐露した。次いで、うるさい。そんな言葉が頭によぎった。

「みょうじさんの心の内が読めないんです。だけど、性格から察してあげることはできます。」
「……へぇ…」
「その愛想笑いの下ではきっと別のことを考えているでしょう?」
「………だが、根が真面目で一生懸命だ。」


会話を黙って聞いていた烏間の言葉になまえは目を見開いた。褒め、られた?

「俺もみょうじさんの様にコミュニケーションは上手くないし、みょうじさんよりも愛想はない。だが、短い期間だが、君と関わって思ったことがある。一途に取り組む姿勢は素晴らしいと思うし、文句を言いつつもギリギリまで根を上げない、その志しは美点だが、欠点でもある。」

「仲間をもっと信頼してあげてください」

烏間の言葉に続いて殺せんせーが言葉を紡ぐ。

「キミはこのクラスに心を揺さぶられて転入してきたのでしょう?君の心を揺さぶった仲間に2枚も三枚も壁を作らないで、協力して健全な暗殺に勤しんでください。みょうじさんはいつ爆発してもおかしくないですから。」

「信頼、信用……」

殺せんせーの言葉に目頭が熱くなり、顔を隠すように前髪ごと手で覆った。

ああもう。
なんでこんなに見抜かれてしまうんだろう。