夏休み、ついに始まる地獄の日程。夏期講習2泊3日の常夏の沖縄にてなまえはゲームもできない、漫画も読めない環境に絶望していた。

「帰りたい…本気で帰りたい…」

なんでテスト頑張っちゃったんだろ…もうやだよ、帰ろうよ。帰れるならウルのお小言も喜んで聞くのに…。

「みょうじさーん?湿気っていないで班行動よー?」
「……はーい…」

岡野さんに声をかけられ、よっこいしょと重たい腰をあげる。ペットボトルを売店で購入していたなまえは氷結魔法で凍らして溶け出したそれを2口ほど飲み鞄へしまう。

正直なまえは暇を持て余していた。
嬉々として暗殺準備を始める彼らを眺めながらぼんやりと眺める。


「なーんでそんなに絶望に浸ってるの?」
「……え、」
「この世の終わりみたいな顔してるよ?」
「……」

ぺち、と顔を押さえ首を傾げる。
「だって折角の夏休みなのに家でゲームできるはずだったのにィ…」
「ひきこもり発言」
「うう…実行以外はお部屋いていいかなぁいいよね…」
「だめだよ、ちゃんと準備もしなきゃ!この計画は下準備が大事だよ」

矢田の台詞に項垂れるがなまえの足は彼女らと共にすでに動いており文句を言いながらも作業をきっちりとこなした。

夕飯を美味しくいただき、ついにチャペルへ向かう。私が2本戴く手筈だが基本手出しをしない方向で検討しているため対先生銃をもち待機する。

しかし、この動画すごいなぁ。
中々羞恥だ。

船酔い、動画責めの羞恥、海水で触手をふやかし、水圧で檻を作りその中でねらい撃つ。すごい計画だ。そして中学生らしい豪快な戦術でもある。全員が力を合わせ彼を殺すために奮起する。

スナイパー2人の止めの一撃

完全形態にて防御されたこれらの計画を銃を片手になまえは無感動に眺めていた。

さあ、ホテルへ帰ろう。

暗くなったみんなの最後尾でホテルへ戻り反省しきりな彼らの様子が可笑しい。なまえは首をかしげながらリオや神崎をみる。

顔が赤い

水の中にいたから…?風邪を引いた??そんな柔な彼女達じゃ…前原の様子や岡島が鼻血を噴いて膝をつく。そのとき烏間の携帯に着信があった。

そうか、そうだった。

なまえはこの状況に納得した。
渚にぶつかったリオの体を支えながらなまえは眉を寄せた。こんなとき前髪を下ろしておいてよかったと場違いながら感じる。私のと友人にこんな目に合わせるなんて…奥歯を噛み締め1度目を固くつむり息を吐いた。大丈夫、彼らは絶対に助かるから。その言葉は口に出せないため大きく息を吐くことで気持ちを昇華させる。

通話が終わった烏間は殺せんせーを力いっぱい机に叩きつけた。

一番小さな男女生徒2人。その言葉がなまえと茅野のどちらが行くかなまえは目を伏せ、私が行きますと烏間に告げるが烏間が固辞した。

「敵の目的がヤツでも渡しに行った生徒がどうなるかの保証はない。」

「ぬるふふ、ならばこうしましょう!」

律さんに頼んでおいたホテルの情報で向こうに潜入します!動ける人は汚れてもいい服装で!!

んん、潜入か。突如降って湧いた得意分野になまえは考える仕草をしながら計画を聞いていく。

「みょうじさん、君も行くでしょ?」
「赤羽くん…うん…行くよ」
「みょうじさんの好きなゲームと一緒だよ、うまく侵入して時間内に敵から薬を手に入れたら俺らの勝ち。どう?テンション上がらない?」
「………上がる。」

そこまで言われたらね、思わず口角が上がってしまった。にんまりと笑う。難易度の低いイージーゲームだけれど、掛けられた命の重さを感じミスは出来ないな、とはやる気持ちを押さえつける。
ナイフをクナイのように持ち一回転させる。

「さながらスパイゲームだね、燃えてきた」
「その調子だよ」
「乗せるの上手いね、カルマ君」
「みょうじがわかりやすいだけだって」

ハハッと笑い合いなまえたちは潜入先へ続く高い壁へと向き合う。ソワリと気が焦ぐが今回演技に使う体力をほどほどに抑えるために最後尾に着かず目立たない位置をキープする。

「よいしょ、っと」

登り終えたなまえは周りと合わせるように手首や足首、肩などを回した。あー、アドレナリン出すぎて物足りない。今の好戦的な気持ちを落ち着かせないと敵にばれてしまう。スーハーと数度息を正しクラスメイトへ目を向ける。

んふふ、さすが烏間先生の生徒たち素晴らしいね、この険しい崖を簡単なんて言って軽々登りきっている。チラリと後ろをみれば烏間の背中にビッチ先生がしがみついていて口を噤む。

今度こそ最後尾でジッと経過を大人しく見ていれば普通に通れば良いじゃない。と、酔いを顔に出しガードマンを誘惑し始める。ビッチ先生の十八番ハニートラップが披露された。すごい。艶やかだ。即興曲を奏でるピアノの腕前もこれが一流のハニートラップか、と納得できる素晴らしい腕だった。

リオたちに薬を盛ったガス使いに素早く対応する不破や磯貝たち。いや、参加メンバー全員。その一人に紛れるのはとても容易く動きやすい。烏間がガスを食らってしまったが、その状態で強烈な蹴りを食らわす彼にE組のメンバーとともに驚く。

像が動けなくなるんだよね…?
全員の心の声が一致した。


次に素手を使う敵に出くわした。
カルマくんが顎を引き正面から立ち会う。ねえ、どこから持ってきたのその武器。なまえは首をかしげながら成り行きを見守る。

「案外プロって大したことないんだね、ガラスや頭蓋骨を割るなんて俺でもできるよ。しかも速攻仲間呼んじゃうなんて、もしかして中坊とタイマン張るの怖い人?」

カルマの問いに敵は不敵に笑う。

「いい威勢だ。」

んふふ、カルマの烏間の捌きを利用した攻防に思わず楽しくなる。まずは敵が、そしてカルマが、お互いが麻酔ガスを噴射。ああ、楽しそうな攻防。騙し騙され、次の手を読みあう。ああ久々の実戦にゾクゾクする。

まあカルマくんの戦い方はだいぶ喧嘩寄りだけど、烏間の動きを取り入れたことにより実戦に近づいた。

その後渚くんが女装したりナンパされたり不思議なダンス見せられたりなかなか無い楽しめる潜入捜査であった。

「取るなら早いほうがいいらしいよ?」
「取らないよ!?大事にするよ!!」

ああダメだこの子達。
思わず草を生やしてしまった。