「皆さん。あのボスについて分かってきた事があります。黒幕の彼は殺し屋ではない。殺し屋の使い方を間違っています」


殺せんせーの言葉に烏間は難しい顔をして逡巡した。既に動けるようになっている彼は本当に人間なのだろうか。だって、ほらえっと、像が動けなく…なるん、だよね??

「烏間先生?」

「...いや、さあ時間が無い。個々に指示を出していく。まずは...」

烏間の指示に耳を傾けている時、汗をかいてる寺坂の首に渚が触れた。目の前にいる彼らの様子を一歩ずれて様子を伺う。

「凄い熱だよ寺坂君。まさかウイル…」

「黙ってろ。俺りゃ体力だけはあんだから、こんなモン放ほっときゃ治んだよ」

「そんな無茶だよ...」

「烏間の先公が麻痺ガス浴びちまったのは俺が下手に前に出たからだ。それ以前に俺のせいでクラスの奴等殺しかけた事もある。こんなとこで脱落してこれ以上足引っ張れるわけねーだろ」

その台詞に何を思ったのか渚は寺坂の名を口にするだけで口を噤んだ。全員でナンバを使用し、忍び込んだ先に黒幕がいる。
クラスメイトの技術力になまえは苦笑いを浮かべた。忍び込めば烏間から説明があったように全員で取り押えるため息をひそめる。

「痒い」

モニターに向かう黒幕のその一言でE組の生徒の動きが完全に止まった。

「思い出すと痒くなる。でもそのせいかな。いつも傷口が空気に触れるから感覚が鋭敏になってるんだ」

そう言って黒幕は起爆装置のダミーリモコンを大量に空へ投げた。

「言ったろう。元々マッハ20の怪物を殺す準備で来てるんだ。リモコンだって超スピードで奪われないよう予備も作る。うっかり俺が倒れ込んでも押す位のな」

用意周到のその発言にE組の生徒たちは困惑した。邪悪感が増したが、どこかで聞いたことある声。烏間は怒りを抑えず黒幕の座る椅子を睨みつけた。

「連絡が付かなくなったのは3人の殺し屋の他に身内にもいる。防衛省の機密費────暗殺に使う筈の金をごっそり抜いて...俺の同僚が姿お消した。...どう言うつもりだ...」

男はイスを回転させ生徒達の方へ向き直った

「鷹岡ァ!!」

烏間の叫びを無視し口角を上げてE組へ話しかける。

「悪い子達だ。恩師に合うのに裏口から来る。父ちゃんはそんな子に教えたつもりは無いぞ。仕方ない。夏休みの補習をしてやろう」

屋上へと促す鷹岡にワクチンを引き合いに出されて仕舞えば悔しくついていくしかなかった。鷹岡と向き合ったE組の生徒と烏間は顔を強張らせていた。

茅野を利用した殺せんせーの暗殺になまえは茅野の側に立つ。

渚が鷹岡に呼ばれヘリポートに向かう。鷹岡に謝罪を要求された渚は床に頭を擦り付け鷹岡に言われた通り謝罪を口にする。

「僕は実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。...ごめんなさい」

「おう。その後で偉そうな口も叩いたよな。<出ていけ>とか。ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に向かってだぞ」

「ガキの癖に、生徒の癖に、先生に生意気な口を叩いてしまいすいませんでした。本当に...ごめんなさい」

全員が悔しそうに歯を噛み締め、渚の謝罪を受けた鷹岡は笑う

「よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ。褒美に良い事を教えてやろう。あのウィルスで死んだらどうなるかスモッグの奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜ、全身デキモノだらけ。顔面が葡萄みたいに腫れ上がってな。見たいだろう?渚君」

本心?はぁ?となまえは前髪の下で眉をしかめる。ニヤニヤと卑しく笑いながら鷹岡は空中に治療薬が入ったケースを投げた。

「やっ...やめろ────っ!!」

リモコンを構えた様子に誰もがこのあとの展開を予期した。烏間が叫ぶが、鷹岡はそのまま起爆リモコンのスイッチを押した

ワクチンが爆発し全員が絶望した。
なまえは飛び散るガラスに目を細める。

「あはははははははは!!そう!!その顔が見たかった!!夏休みの観察日記にしたらどうだ?お友達の顔面がブドウみたいに化けていく様をよぉ。はははは!!」

ああ、こんなのが教官なのか。なまえは苦々しく別の世界で自分の立ち位置に近い目の前で歪に笑う鷹岡を見る。烏間のように短期間であれほどのナンバを落ちこぼれクラスに仕込める素晴らしい人間もいれば、彼のような外道な人間のクズもいる。こんな奴が政府を名乗るのか。

……彼らにとって私はちゃんと先生だっただろうか。ふと鷹岡を見据え疑問がよぎる。怯えるように右肘を左手で掴み、誤って渚の援護に回らないように、過ってしまった恐ろしい考えを振り払うように意識を前に向ける。

渚が絶望に満ちた渚の目が目の前のナイフを見つめ、抱いた殺意で目の前のナイフを無意識に掴む。ころ、殺してやる、渚から溢れた言葉になまえの目がゆらりと揺れる。

そんな渚へウイルスに魘されている寺坂から檄が入る。

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ!!薬が爆破された時よ、テメー俺を哀れむような目で見ただろ。いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞモヤシ野郎!!ウィルスなんざ寝てりゃ余裕で治せんだよ!!」

「寺坂...お前!!」

「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ…テメーはキレるに任せて百億のチャンスを手放すのか?」

スタンガンが渚の背に当たり、寺坂の言葉で怒りに身を任せていた渚の雰囲気が変わった。