わー。王子様普通に腕が立つよ。いや、まあ白雪の救出に一人で向かう王子様なんだから、自衛を超える腕を持っていても変ではないか。

王子様に偏見を持っていたな。

ああ、いや、でも二次元的に言ったら王道でもあるか。すんごく強いとか逆に儚げ王子とか。あー、ありだ。うん、ごめんなさい、偏見な目で見てしまいました。ああ乙女ゲームも今度やりたいなぁ。

そのまま訓練に参加していれば兵士とゼンが白雪について話しているのが聞こえた。ふーん…薬草園を使うのか。こっそりと位置を探ってみれば移動し終えたのか一人でいた。ソワソワとした様子を隠さずに薬草を見ているのか狭い範囲をウロウロしていた。

「白雪」

なまえがゆっくり声をかけると白雪はビクリと肩を跳ね上がる。

「なまえかぁー。驚かさないでよぉ、訓練は終わったの?」
「ごめんなさい、いっぱい人がいたから逃げてきちゃった」
「なまえ…」
「それに鍛錬なら夜にやるよ」
「成長期なのに夜更かしはダメだよ」
「んー、寝るときはちゃんと寝るよ?」

それでも。と白雪は腰に手を当てる。それになまえはわらって誤魔化す。そもそも、白雪が徹夜や夜更かしをして身体を壊すことが多いからなまえが管理するのだ。なまえならば影分身を使いいつでも自身の休息がとれるが白雪はそうではない。
「試験、大丈夫そう?」
「うん、これから一晩薬草園の管理が試験なんだ。」
「なら私はキキさんのところに戻るね…ちゃんと白雪も寝るんだよ??」
「わかってるよ。」
「何かあったら名前を呼んで、助けに行くから。」

心配性だなあと白雪が笑うが、白雪が大事なんだよ、口をとがらせてむくれる。本来なら昼間でも護符なり影分身なりサーチなりつけていたいところを、白雪の尊厳を尊重して我慢しているというか、そんなことして、もし彼女に嫌われたら、なまえは自分の世界から出てこなくなる。

彼女は助けなんか呼ばないだろう。
それでいい。私のお姫様のヒーローは王子様なのだから。
今の私はあきらめた末に彼女のために生きると決めたから。彼女が笑顔で前を向いていられるように手助けできることが今の私の生きる道。

「重くてごめんね、白雪」

ちいさくつぶやいて床を軽く蹴りキキとミツヒデのもとへいく。

「どこいってたんだ?」
「白雪のとこ」
「そう、調子よさそうだった?」
「そうだね、いつも通り心配性だったよ」
「はは、そっか。なら白雪に心配かけないように余り1人で出歩くなよ」

ミツヒデから注意を促されなまえは口をとがらせはぁい。と肩をすくめた。

本日はキキさんの部屋に泊まり込みということで、ミツヒデと別れ、なまえは肩を縮ませて毛布を頭からかぶっていた。

「なまえ、そんなに隅にいないでもっと真ん中にいていいんだよ」
「う、うん…」
「白雪がいなくて寂しい?」
「…一晩どころか数日会わないとか普通だったから、大丈夫。キキさん疲れてるでしょ?寝ていいよ、私は白雪がまだ起きているから、寝れないよ。」

キキは瞠目し、寝間着に着替えながら白雪の姿を思う。

「試験中だからね、さすがにまだ起きてるか」
「ねえ、キキさん。白雪と仲良くしてくれてありがとう」
「いったいどうしたの」

カサリと布音を立ててキキは、来客用のソファベッドへ腰掛けているなまえへ近づく。ソッと頭を撫でられ大人しく目をそらす。実際は気恥ずかしくて堪らない。柄でもないこんなセリフにでも心から感謝の言葉が出てくる。

「白雪は自分の事も自分の道も、選べる子だから、私なんか必要ないことはわかってるんだ。でも…それでも私が白雪の側が心地よくて彼女に迷惑をかけてるってわかってても離れたくなくて、」

キキはなまえの髪を撫でながら、目を細めた。小さい子供が一生懸命言葉を紡ぐ様をジッと待っている、とまではいかないがたどたどしく言葉をつなぐなまえにキキは彼女が伝えたいことを待った。

ホントはみんなに感謝してるんだよ。私と知り合ってからの白雪はずっと薬草の勉強とお店だけだったから…そんな生活もたのしかったけど、貴方達と出会ってからの白雪の顔が輝いてるんだ。

「すごくすごく悔しいけど、白雪の幸せが今の私の全てだから。だからとても感謝してるんだ。とくに、白雪を救ってくれたゼン殿下には…」

内緒だよ?となまえが恥ずかしそうに笑うとキキは口角を上げて頷いた。

白雪以外と部屋を同じにすることが久しぶりすぎてなまえは珍しく饒舌であった。緊張で何かを話さなければと頭を回転させたところ、思わず口を滑らしてしまった。あんな恥ずかしいこと言うつもりはなかったのに。なんたる自爆なのであろうか。でもキキとの共通の話題は白雪だし、白雪のこと以外話しても気まずい空気になるのは目に見えてるし。

「きっと同じくらい白雪もなまえのこと大事に思ってるよ」

キキの言葉になまえは下げていた顔をガバリと持ち上げた。

「だって白雪の唯一の"家族"何だろう?」

「う…お世話になりっぱなしなんだけど…」
「それでも白雪が言ってたじゃないか、家族だって。嬉しかったんじゃないの?」
「…そんなにわかりやすい?」
「お互いが大切なのは伝わってくるよ」
「ふふ…自分だと一方的な依存としか思わないんだけど、キキさんの言葉は凄いなぁ。」

グッと伸ばした手がキキの手に触れる。
小さな手と女性らしくも鍛えられた手になまえは顔を綻ばせる。
ミツヒデさんとはどうなんですか?

内緒話のように小さめに笑いかければ目を丸くしたキキと視線が交わる。視線だけで、わかる?と尋ねられる。見知らぬ人とのアイコンタクトは苦手だがその意味は理解できて返事として、ヘラリと笑う。女の子はいつだってオマセですから。