「南先輩、邪魔っす」
「南沢な」
「んなのはどうでもいいです、俺がどけっていってるんだからさっさと退いてくださいよ」
「……」


二人して不機嫌になっている今の状態がいったいどれだけ経過したんだろうか。いや、時間としては1、2分なんだろうが、このひんやりとした背筋が凍る感覚に霧野は肩が強張った。

それはもちろん奏が全面的に悪いわけではない。……ないのだが、相手は南沢先輩である。俺様何様南沢先輩はもちろん先輩後輩の関係には厳しかった。ひきつっている顔をにっこり笑顔に変えた南沢先輩はゆっくりとその腕を奏の方へと伸ばした。

やばい!と思った瞬間奏も手を伸ばしていた。ギリギリと片腕だけで掴み合うようすはまさに異常であった

………は?


「やだなあ南先輩、怒っちゃいました?悪気はなかったんですけど怒っちゃったならしょうがないっすね、丸刈りにしません?」
「ふざけてるのか?断る」


「悪気はなくても悪意の塊だよな」倉間のぼそりと呟いた言葉に密かに確かに、と賛同していたら神童から声がかかった。

「遅いぞ、監督から集合がかかってる」

もう練習は終了しているが何か連絡事項でもあるのだろうか。神童から伝えられたその内容に奏は…はーいと緩く返事をし南沢先輩は、ふん、と鼻を鳴らしただけだった。まだユニフォームを着ている俺たちに神童が首をかしげる。


「霧野、倉間お前たちも早く着替えろよ」


解せぬ