ダイニングに通された俺たちは最近の悩みである久遠監督の除籍について話していた。
「なんで監督が…原因のは俺の行動なのに…俺があんな行動したせいで」
「久遠さん?」
お茶を机の上にのせたそらさんにお礼を伝えれば気にしないでとわらった。
「久遠さんって雷門の監督さんだよね?」
「はい、…先日退任しましたが…」
「久遠さんかー、なつかしいねぇ。
ね、久遠さんのこと、教え子の君たちは知ってるかな?」
「え?」
「ねーちゃんなにいってるの?事実俺等が教え子だよ?さすがにねーちゃんよりは知ってるよ?」
奏がお茶を両手で持ち首を傾げて何をいきなり、と瞬いた。
「雷門イレブン…これはとある彼の教え子から聞いた話なんだけどね?
久遠さんが監督復帰したとき、信頼されているとは程遠い監督だったって」
まあ勿論今では信頼されて落ち込んでくれる教え子までいるんだけどね。神童に目を向け笑いかければ自分に話がいくとは思っていなかったのか慌て頭を下げ目線をそらし膝の上で手のひらを握りしめた。
「久遠監督が怪しい、信用できない、久遠監督は呪われた監督だ。彼の考えていることが理解できない…そんな話題ばかりだったらしいよ。まあ、久遠さんも久遠さんなんだけどね」
「久遠監督が…」
「聞いたときは、なんて私みたいなんだろうなんて思ったなぁ」
あはは、と乾いた音をもらすそらを視界にいれてから奏はチラリと神童を見やった。
興味深そうに話を聞く姿にまあ、落ち込んでいるよりかはいいか、とお茶をまた一口すする
「久遠さんはなにを言われても否定しなかったんだって。無口とでもいうか、寡黙というか、用件だけ伝えるとその場にはもういなかって」
それは君らが教わっているときもそうだったのかな?そらが尋ねると奏が答えようと口をあけた。
「そー…」
「いえ、監督は俺たちに足りないものを自分で気づかせて…」
「うん、そうだねその子も言ってた。誰よりも一番チームのことをよく見て、考えてくれていたって
…なら、さ…神童くん、キャプテンなキミの葛藤だって久遠さんならお見通しだったのかもね」
「え?」
「奏よりも神童くんよりも誰よりも雷門のことを考えて先の先まで見据えてくれる人みたいだからね」
「神童」
奏が名前を呼ぶと振り向く。やっと前向いたな。ニッと笑ってやれば昨日とは違った力強い笑みが帰ってくる。
「きっと監督はこうなることすら考えていたんだ」
「うんうん、久遠さんはそんな人だね。転がされたら倍やり返すタイプだ」
「そらさん、水鏡…」
「何か悩んでいる神童くんはこれから、どうしたい?」
「オレは……」
言い淀んだ神童の肩に奏がガシッと腕を回す。
「だから今度はその手伝いをしようぜ?俺たちのサッカーでさ!誰が何人やめる?関係ない、諦めなかったからこそ廃部の危機からフットボールフロンティアに出場して優勝した雷門イレブンの、俺たちは後輩だぞ?潰れたらまた、作り直せば良いだろ!」
「あら、楽しそうな話をしてるわね」
カチャリ、と扉が開いたらそこには茶髪の落ち着いた女性が。そらさんの知り合いかと、立ち上がっていたそらさんを見上げれば、
「おかえりーなっちゃん」
「ただいま、お客様?」
「そう、奏のお友達」
「こんにちは、円堂夏未です」
「おかえりなさい、お邪魔してます夏未さん」
「神童拓人です」
「ゆっくりしてってね」
ありがとうございますと返す二人に夏未は笑った。私にもあった思い悩む時期が多い年頃だ。そらに視線を向ければ「ご飯の準備するね」とエプロンに手を伸ばしていた。
それじゃあ私はこの子達のお相手でもしますか。
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零