※ベーコンレタス表現あり


こう、ふと、水鏡が色っぽく見える時がある。だなんて、口が裂けてもそんなこと言えない。神童がじっと見ている先が水鏡だなんて、それこそいえない。

ていうか神童、お前はあからさま過ぎる。

「おーい、水鏡、今日も姉さんの愛情たっぷりなドリンクか?」

笑いを含みながらからかうように言えば此方を見ずどんよりとした空気を隠しもしない水鏡に、あ、やべ地雷じゃね。と笑ったまま顔を引きつらせた。倉間が御愁傷様と呟いて部活へと向かった。おい、知ってたなら止めろよ。そして逃げんな。

「聞いてくれるか霧野…ねーちゃん、さ、昨日からアメリカに行っちまったんだよ…」

「あー、」

なるほどそれでか。さめざめと泣く水鏡にどうしたもんかと悩むことなんてしない。こういう時は良くある。それはもう、アメリカの話は極稀にだが、従姉妹関連は良くある。

「水鏡、その、姉さんはいつ帰ってくるんだ?」
「3日後…」

3日、なるほど特に長期ということもないのか。よかったよかった。しかしこいつは「3日もねーちゃんに会えないなんて鬱だ引きこもろう」と早々に帰り支度を始めた。おいおい。相変わらず事従姉妹に関して歪みないなこいつ。

「水鏡、帰ろうとするなよ。従姉妹が帰ってきたら3日分の報告したらいいじゃないか」

ピクリと身体が反応したのがわかった。驚きの分かり易さだ。チラリとこちらを見て

「そっか、や、でも疲れてるのに長々話されてウザいとか思われたらオレ…もう生きていけない….」

「なーに言ってんだよ、お前の大好きな従姉妹がそんなことでうざいなんて言うのか?」

「い!わない、けど、内心思ってそう…」

あの人なら。と絶望に満ちた表情で膝から崩れ落ちる水鏡にこれは筋金入りだな。と肩を落とす。

「なあ、水鏡、ここで部活3日休んでそれが従姉妹に知られて怒られるか、休まず行って褒めてもらうかどっちがいい?」
「褒めてもらう」

キリッとした表情で水鏡は即答する。相変わらずこいつちょろいよな。カバンを背負いなおし意見が変わらないうちに、それじゃあ行くか。と水鏡を促す。

今の状況でこいつまで、しかもあんな理由で休まれては、神童が聞いたら泣くぞ確実に。あいつの胃に穴が空いてもオレのせいじゃないからな。ことのほか自信過剰な水鏡も泣くし、今日は飛んだ厄日だ。これが3日続くとかたまったもんじゃないな。


内心思いながらも、こいつ泣くとヘタレというか乙女というか、仔犬属性になるの面白いよなぁ。まあ従姉妹関連以外泣いてるの見たことないけど。わしゃわしゃしたくなる。

今だに、肩を落としてしょんぼりとする水鏡を見て畜生、可愛いなんて思う俺はもうダメだと思う。しかし何故だかこいつの従姉妹に嫉妬しようとは思えない不思議だ。こいつにこれだけ思ってもらえるならさぞ嬉しいと思うのに。相手が既婚者だからだろうか。わからん謎だ。


(何してんだよ霧野、置いてくぞ)
(あ、悪い今行く)

今の関係に満足している霧野さん