「そらちゃん、さっき先生呼んでたよ?行かなくていいの?」

「………うーん…面倒だし…」

だらーっと机に伏せる、今から寝に入る体勢の彼女に秋は慣れた様子で苦笑い。どうやら普段からのようだ。

彼女は水鏡そらといって、容姿は悪くないにしても性格普通……ただ難を挙げれば極度の面倒臭がり。

性格普通云々と述べたが、彼女の自称だけで一般論ではない。実際は凄くイイ性格をしている。

要するに自分本意な奴だ。

「またそんな事言って…」
「ホントに用あるんならあっちから来るから別にかまわないよ」

もう、と可愛らしくため息を吐いたオレの幼なじみは諦めたように彼女の前の席に腰を下ろした。

「それで、一之瀬くんは何か用事?」
「いや、特に何もないよ強いて言えば水鏡も相変わらずだなーって思ってただけ」

転校した当初、隣の席だったことにも関わらず俺を一瞥しただけで今と同じ様に机に突っ伏した彼女を見たときは思わず唖然としてしまった。

それでも彼女からはキツいオーラは感じないし、尋ねれば気だるそうにしながらも答えてくれたので嫌われてもいないようだった。……つまり、極度の面倒臭がりなんだと転校数日目にして漸く理解した。

「そういえば今日の体育凄かったね」

「え…?」

「水鏡があんなに動いてるとこ始めてみた」

「あー…そらちゃん運動神経凄く良いからね…」

秋が水鏡に目線を落とし彼女の髪を掬う。凄く柔らかそう……じゃなくて、それにしても水鏡は運動神経が良いのか、かなり意外だ。

そのまま秋に伝えれば目尻を下げ微笑まれた。

「理由聞いたら納得するよ」
「は…?」


ここ数日で分かったこと、何げに水鏡はクラスの中でも発言力があるらしい。

公平に物事を決めてくれる、とみんな凄く頼りにしている。基本そういう時間の時は6限目の場合が多い。

理由は"早く帰りたい"から。


ああ…思わず凄く納得した。
今回の体育も似たようなモノなんだろう。

突然水鏡が顔を上げた。ぼんやりとした表情で口を開く

「なんで学校にエスカレーターないわけ?エレベーターとか」
「そらちゃん…」

はぁぁあ…と先ほどよりも大きな溜め息を吐く秋にソっと心中察するよ。と同情する。だが、水鏡だって若いのにエレベーターを必要とする理由が解らない。

「だって階段昇るの面倒でしょ一之瀬」
「……そういう子だよね、君は」
「じゃ、帰るんで」

「またねー」
「会話しようよ!?」


(秋、よく親友やってられるね……)
(一之瀬くん最近それ毎日言ってるよ?)