「ちょっといい?」

「ん……?」

ぽやーんと寝起きの顔を上げ目の前にいる人物を目を擦りながらチラリと見上げた。目薬あったかな。ゴソリとポッケを探ればそこには鍵とハンカチしか入っておらず、あ、忘れちゃった。と一度目を瞑る。目を瞬き焦点を合わせれば、これまた見覚えのある人物だった。

伏せたまま顔を上げたるのは流石に疲れるので状態を起こし腕を組んでいる彼女に目を向ければ満足そうに微笑まれた。

「これはこれは…夏未嬢……何か御用で?」

「……それは何を見て憶えたのかしら」

「昨日見たサスペンスでちょっと」

あからさまに溜め息を吐かれた。本人を目の前にして溜め息とは…なんて頭に過るが、いつものことなので別段気にもしない。そのまま流した。

「…で?」

「まあ…その方が貴女らしいと言えばらしいのだけど…ちょっと頼まれて欲しいことがあるの」
「ごめん、無理」

「そら…?」

いくらなんでも怒るわよ、と目尻を立てていう夏未を前に欠伸をひとつ。話を聞くくらいならまぁ良いでしょう。

「全くもう。…それで頼みたい事なんだけど――――…」


話を一通り聞き終わり至極面倒そうな顔をするそら。夏未は予想していたのかその表情は無視し頼むわね?と念を押し去っていった。

ガシガシと頭を掻き、

「面倒な事になったな…」
しみじみと呟き肩を落とす。彼女といたことで奇怪な目で見られたがそらは気にする様子もなく再び持っていた専用のクッションで夢心地に入った。



(そらちゃん、次移動だよ)
(やーだー…動きたくない)