「え、帰る?」
「へー…」
私と秋の知らされた事実
土門が申し訳なさそうに謝っているのを私は目の当たりにしたが、なぜ申し訳ないのか分からない
「そらちゃん、へーって…」
土門が苦笑いを浮かべながらくしゃりと顔を歪める。
そんなこと言われても、と内心思った。いや、寂しくないかと聞かれたら否だが、決めたことに対してグダグダこちらが言ってもどうしようもないし、何より「また会えるんでしょ?」なら良いじゃないか
「水鏡!!」
今まで俯いていたこのイケメンなお隣さんは私の手をとりきらきらと顔を輝かせ、は?きらきら?
「オレ、初めて水鏡の意見に同意するよ!」
「おい」
「そうだよね、二度と会えなくなるわけじゃないし、会おうと思えば会える距離だし!」
唖然と私と一之瀬を見る土門と秋にこいつめんどくせー助けてくれ、と視線でヘルプを求めるが合った途端サッと目を反らされた、え、酷くない?
「どうかな水鏡」
「………はい?」
「あれ、聞いてなかった?」
何やらマシンガントークを終え真剣な表情をしていた一之瀬に思わず頭を傾げる
「全部終わったら水鏡を迎えに行ってもいい?」
「………は?」
「こっちに帰ってきたらプロポーズしてもいいですか?」
思わずフリーズする頭
ちょっと待っておかしいかな私たち断じてそんな関係じゃない
「………………一之瀬」
「なに水鏡」
恥じらうように照れ笑う一之瀬に、なんとも言いがたいがとりあえず尋ねなければならない
「私たち、付き合ってすらないよね」
むしろ知り合い以上友達未満
ただ席が隣なだけ、な関係のはずだ
「え、ああうん。今まで何この子凄い手のかかる子だなーっとかうわ、円堂と秋可哀想…って確かに思ってたけど……」
また会える、て言ってくれたのが凄く泣きたくなる位嬉しかったんだ。はにかむ一之瀬に戸惑う。いや、思わず突っ込みたくなったが本当に嬉しそうに笑うので私も真剣に答えてみる
「そうだな、なら今度会うまでに私を惚れさるくらいカッコよくなって帰ってきてよ一之瀬。今はまずお友達から、ね」
明日の午前発の便に乗るらいしい一之瀬に手を差し出し「またね」と笑いかける
「そういう所も大好きだよ」
二本指を立て爽やかに挨拶する一之瀬を前に「なにそれ」と表情を崩した
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零