日本エリアに宿をとることとなったそらは考えるまでもなくすぐさま部屋にこもった。
ここまで来といてなんだけど別にいいかな、なんて。べ、別に相手にされなかったとかそんなんじゃないから、違うんだから。誰に言うわけでもなく言い訳を続ける彼女に寂しそうなオーラが漂う。
「たしかにさ、私はサッカーに関しては部外者だけど」
日が傾き夜になり現在日本時間で19時。まだ寝るには早いしいつも夜はほとんど睡眠をとらないため眠気も訪れない。どこにやるべきか、ベシベシと枕を殴って鬱憤を晴らすそらの耳にノックの音が聞こえた。
「……はい」
「そらー?」
どこかで聞いたことのある声が、するなー、なんて。誰だっけ。はいはい、とドアノブを開きながら「どなたですか」と尋ね訪れた人物の顔を見ればピンクとアオ。ギャルと男勝り。インパクトのある人たちだな、素直な感想を内心述べる。
「ひっさびさやな」
「元気にしてたか?」
「…ん、」
まて、まて、超フレンドリーなんだが。インパクト強くても思い出せる範囲外程度の強さだ。彼女たちは誰だ。
「そらー?暇なんだろ?遊びにきたよ」
「あ、うん」
「なんやノリ悪いなあ」
テ、テンション高いですね。たぶんおそらくきっと私の意識が断片してるって事は睡魔と格闘中の時に出会ったイコール昼間。ってことは学校?いやでもさすがにここまでインパクト強い子ら毎日会ってたら覚えるだろ…たぶん…
「ほら、ボール持ってきたしサッカーしよ!」
「…あー…ここまで来てサッカー…」
「しゃーないやろ?塔子がやる言うてきかないんやから」
「トランプとかあるんだけど」
「寝る前にでもやろーな、ほらサッカー!」
な?と苦笑する彼女に私も思わず苦笑い。
「なんや、自分ぜんぜん印象ちゃうんやな」
「あーたしかに!前会ったとき円堂にべっっっったりだったもんな」
「あとはマネージャーたちにな」
えーと、塔…子、さん?力入れすぎではないだろうか。
「円堂もぜんぜん嫌がらなくて享受してたから始めは驚いたけどさ、雷門の皆はこれが日常って感じで気にしてなかったから」
そんなもんなのかと。まあ練習始まった途端消えてそれから会えなかったんだけど、と持っていたボールを脇にかかえ手を出す塔子は迷惑そうにリカが放った「今から外行くとか正気なん?」をスルーし楽しそうに宿の入り口に向かった。
「に、してもや円堂にだーいぶなついてるみたいやなー?」
ははん?らぶか?ラヴなんやな?とにじり寄る彼女に対し興味の無さげな…「え、そら円堂のこと好きなのか!」そうでもなかった。
そりゃあ好きさ。円堂のこと。良いやつだしね。でも私よりも円堂のこと大好きで大好きで、その人生の一部を犠牲にしてまで円堂のことどうにかしてあげようと思ってる子を知ってるからね、ふへへと気の抜けた笑みを浮かべたそら
「それでジブン、自分の恋諦めるん?」
「いやだな、だから私と円堂のこれは愛だの恋だのそんな軽いものじゃないんだよ」
「はあああ、よおわからんなー、つまり一番大切な人なんとちゃうん?」
「……大切?
……んーだから、この感情は、好きなんだよ大好きなんだ。恋愛感情じゃないんだけど…そうだなあ…一番近いのは…依存?」
満足そうに笑えばなんとも言えない顔をしていた二人がいた。知ってる、解ってる。お互い愛とか恋とかそんな簡単…いや、難しいなものじゃないんだ。
「ただ必要としてるだけだよ」
実はそんな簡単な関係。噛み締めるように紡げば広がる温もり。あったかいな。緩む頬にふと浮かんだ一人の姿。
「それに私には迎えに来てくれる人がいるらしいんだ」
夜が明け日が昇り、試合会場にやって来たのはいいが、おいおいなんだこれは。両手に花?甘えちゃってもいい?でも虎丸がいるからだらしのないところは見せられない。いい姉さんを目指したんだ突き通すよ。
虎丸、と話しかければそら姉、約束守ってくれたんだね俺勝つから!と笑顔で抱きつかれました。普段なら恥ずかしがってなかなかしてくれないから頬が緩んだ緩んだ。目の前には虎丸、隣には秋とかもうまさに楽園。
「水鏡、顔顔」
「…風丸、だまれー至福を邪魔するなよ」
「そら!」
「円堂!」
間に「変わり身はや!」という風丸の言葉が聞こえた気もしたがそらは無視して会話を進めていた。
「あの、さ…昨日は…」
「うん」
「ごめ…「円堂!そろそろアップ始めるぞ!」…ああ!…悪いまた後で、優勝してくるな!」
鬼道に呼ばれた円堂は微妙そうに眉をしかめてからくしゃりと歪め力強く彼とそらの突き出した拳を合わせ笑った。
「行ってらっしゃい」
「ああ!」
→
零