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クローム髑髏さんが並盛中学校に転校して来たという。どうやら六道くん達はフランを獲得する為にフランスへ向かっているらしい。以前話していたシモンファミリー達とのパーティーを、彼女の歓迎会として我が家で行う事になった。「なまえちゃん手伝ってくれてありがとう」
「わたしからパーティーの料理頼んだんだから、これくらい手伝うよ」
母は上機嫌に次々と料理を作っていく。自慢では無いが、母の料理はとても美味しいと思っている為、皆に食べてもらうことは嬉しい事であった。
「お母さん」
「なあに?」
「恋愛と依存って似ているのかな」
小さく呟いたわたしの言葉に母は驚いて目を瞬かせたが、すぐさまふわりと笑うとわたしの手を握った。
「好きな人でもいるの?」
「多分……。でも、違う人にそれは依存だって言われて……」
こんな事、母に話すことでは無いのかも知れないが、わたしは今まで誰かを恋愛感情として好きになった事もないし、周りに話せる人間もいなかった。
「そうね、確かに似ているかも知れないわね。でも誰だって少しくらい依存するものよ。それに依存は相手に頼って成立するもの、恋は相手に対してドキドキしたり暖かい気持ちになったりするもの、愛は相手の為に何かをしてあげたいという気持ちから生まれるものだと、お母さんは思っているわ」
「…………。」
「でも恋してる人だって、愛している人だって相手に対して頼ることだって絶対にあるじゃない?」
「うん……」
「なまえちゃんだけが頼ってばかりでいたら依存かも知れないけれど、その人に対してドキドキしたり、何かをしてあげたいって思っているのならそれは依存じゃないって思うけどな」
「何かをしてあげたいという気持ち……」
守りたいと思っている気持ちはそういう事なのだろうか。
「でも、なまえちゃんがそう思える人が出来て本当に良かった」
「え……?」
「なまえちゃん、あんまり我儘も言わないし、一人で何でもやろうとするから心配だったのよ」
「それは……」
それはわたしが養子であるとずっと心の中で引きずっていたからであるが、母はそれをずっと心配していたらしい。
「もしかして、その人イタリアにいるの?」
「……えっ!ちが……いや、違わないけど……」
「やっぱり!あの時も珍しくなまえちゃんがお願いしてきたから驚いたの。そう……、その人がなまえちゃんを素直にさせてくれたのね。今度、お母さんも会いたいな」
「でも、向こうはわたしのことそんな風に思っていないかも」
前回会った時に髪に口付けられたが、ザンザスさんのそれは恋愛感情では無いかもしれない。わたしが幼い頃から知っているし、歳も離れている。
「でも、大切にしてもらっているんでしょう?」
「うん……」
「それならなまえちゃんが好きなその彼を信じてあげなさい」
そう言って母は朗らかに笑った。
「さあ、そろそろパーティーも始まるから急いで仕上げなくちゃ!」
「うん。お母さん」
「なあに?」
「ありがとう」
母は優しく笑った。