枝分かれ徒花

episode 01

 ここのクラスに転校生?

 そう。少し前に地震があったじゃない?それで地震が多い地区に通ってた人達は、地震が少ない地区の学校に集団転校してるんだって。
まあうちに来るのは一人らしいんだけどね。



 枝分かれ徒花



「へえ!蘭姉ちゃんのクラスに転校生が来たんだ!」

「そうなの、この間の地震のせいみたい。コナンくんの所には転校生来なかった?」

「僕のところにも何人か来たよ!」

 そんな会話がつい数日前。
 ポアロで灰原や元太達と共に博士にジュースを奢ってもらっている所、カランと扉のベルが鳴り、見慣れた顔ぶれが入店してきた。

「あ!蘭お姉さんに園子お姉さん!こんにちは!」

「歩ちゃん達もポアロに来てたんだね、こんにちは」

「後ろのねーちゃん見たことねーぞ?誰だ?」

 元太の言う通り、蘭達の後ろには見たことの無い女子高生がいる。蘭と同じくらいの背丈で、癖のない黒髪のロングヘア。透き通った琥珀色の瞳を持つ女性。

「この子はね、つい最近うちの高校に転校生してきた沢田なまえさん。」

 そう紹介された本人は少し間を開けてから、元太達に向かい、「沢田です、よろしくね」と簡単に挨拶を済ませるとにこり静かに微笑んだ。

 俺たちの隣の席に座った蘭や園子達は地震についてや、前の学校について詳しく話しているようだった。

「え?!じゃあなまえは地震の後、日本にいなかったの?!」

「うん。イタリアにいて」

「イタリア?旅行?」

「親戚がイタリアに住んでて少しだけそっちに」

 どうやらここ数ヶ月イタリアにいたらしい。親戚がイタリアに住んでるとはいえ、学校もある中数ヶ月もイタリアに滞在するだろうか。

「って事はなまえはイタリア語も話せるの?」

「簡単なものなら大丈夫よ」

「そういえばこの間の英語の小テストも満点だったわよね。もしかして英語も得意なの?」

「得意では無いけれど多少なら……」

 蘭と園子のお陰で話は盛り上がっている様に見えるが、沢田なまえは蘭達の質問に淡々と答えていくだけである。彼女は人見知りでは無い様だが、自分からあまり多くを語らない人間の様だ。

「でも災難ね、久々に日本に来たら母校には通えずそのまま転校でしょ、大変だったわね」

 園子にそう言われた沢田なまえだったが、少し考える素振りをした後「うーん、そうだね」と曖昧に答え、アイスティーを飲んだ。言葉とは裏腹に彼女の表情はそこまで悲観していない様にも見える。学校にあまりいい思い出が無いのか関心が無いのか……、イタリアに数ヶ月居たという事も何か関係があるのだろうか。
 彼女がストローでアイスティーをひと混ぜする。その時右手中指に嵌めてある指輪が目に付いた。少し太く大きいその指輪は彼女の雰囲気と少し違う気がしたが、真ん中に埋め込まれている琥珀色の石は彼女の瞳と同じ様に澄んでいてとても綺麗だった。

「ずっと気になっていたんだけどなまえさんの着けているその指輪とっても綺麗」

「本当!ちょっと大きいから一見なまえっぽくない気もするけど、瞳の色と同じでとっても似合ってるわね」

「石もなんだか模様が入っていてお花みたい」

 蘭達の言葉に歩ちゃんも気になったのか、沢田なまえの指輪を下から覗き込んだ。

「わあ!本当だ〜!お花みたいできれい!」

「ありがとう、わたしもこの指輪気に入っているの」

 そう言う彼女の笑顔はとても優しかった。それに目敏く気付くのは園子達で「もしかして彼氏?!」と身を乗り出した。
 沢田なまえは驚いた様に目を屡叩くと「違うわよ」と、再び微笑んだ。

「なんだぁ〜、絶対そうかと思ったのに」

「でもなまえさん、その指輪大切にしているのね」

「ええ。わたしの宝物よ」

 彼女はそう言って指輪をひと撫でした。





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