episode 02
沢田なまえと初めて会ってから数日後、再び俺は彼女に遭遇した。どうやら蘭達から頻繁に放課後誘われているらしく、今日も彼女達はポアロに寄り道をする予定らしい。「あ、コナンくんも今帰り?」
「うん、蘭姉ちゃん達はポアロに行くの?」
「そうなの、実はもうすぐテストなんだけどなまえさんに勉強を教わろうと思って」
沢田なまえはどうやら頭が良いらしい。次のテストは広範囲な為、蘭達も苦戦している様だ。
今日は特に放課後の予定も無かったので、俺もポアロについて行く事にした。扉を開け、カランとベルが鳴ると安室さんが此方を振り返り、いつもの笑顔で俺達を迎えた。
「やあ、いらっしゃい」
「四人でお願いします」
ソファ席に俺と蘭が座り、通路側に園子と沢田なまえが座る。彼女は初めて会った時と変わらず涼し気な表情をしていて、秋の涼やかさを想像させた。
「ねえねえ、なまえさんってハーフ?」
俺はずっと疑問に感じていた事を尋ねた。
「イタリアと日本の血が混ざっています」
「へえ〜!だから目鼻立ちがしっかりしているのね、瞳の色も綺麗だし」
蘭や園子達も気になっていらしい。園子は横から覗く様に彼女の瞳を見つめた。
彼女は少し恥じらっていたが、少しだけ体を硬直させると突然後ろを振り返った。
「ああ、驚かせてすみません。話し込んでいたので……。ドリンクをお持ち致しました。なまえさんはアイスティーでしたよね」
「はい。ありがとうございます」
「そう言えば安室さんもハーフでしたよね?」
園子は安室さんの方を向くと再び身を乗り出した。
「……ええ、まあ」
「安室さんもとっても綺麗な目をしているわよね」
「ありがとうございます。この見た目のせいで昔はあまりいい思い出が無かったんですけどね」
その言葉に沢田なまえは安室さんの瞳をじっと見つめた。
「勿忘草色の様な綺麗な色ですね」
「え……?」
「勿忘草?」
勿忘草色と言うのはその名の通り、勿忘草の花のような明るい青色の事である。彼女は同じ様に皆に説明してからぽつりと呟いた。
「勿忘草の花言葉は、誠の愛と真実の友情、そして私を忘れないで」
「!」
「誠実さを持った強さもありながら儚さもありますよね」
そう言って彼女は再び安室さんの瞳を見つめる。彼は驚いた表情をしたが、すぐにいつもの表情に戻り「ありがとうございます」と笑みを零した。
彼女の教えはとても分かりやすく、丁寧であった。
「なまえのお陰で何とか乗り切れそう!」
「本当にありがとう」
「どういたしまして」
「これが終わったら連休!その為にも頑張るわよ、蘭!」
拳を握りながら園子は意気込んだ。
「なまえさんはテスト後の連休予定あるの?」
「イタリアに帰るつもりよ」
「ええ!三連休で行くの?随分ハードスケジュールね」
確かに園子の言う通り、日本からイタリアまでのフライト時間は十二時間程かかる。だが沢田なまえは気にしていない様に首を横に振った。
「やらなきゃいけない事があるから」
そう言う彼女の表情は何処か嬉しそうだった。