03


幼い頃から、男の子が苦手だった。

何もしていないのにからかわれたり、意地悪をしたりされるのが、昔から嫌だった。

そんな私だったけれど、ひとりだけ。

「…あれ、紗英ちゃん」
「夜助兄…」

すきなひとが、できた。

夜助兄は愛紗兄のお友達で、小さい頃からよく遊んでもらっていた。

物静かで、多くを語らない夜助兄。

周りの男の子と違って、大人で優しかった。

「そっか…からかわれたり…か」
「私は何もしていないのに…」
「んー…それ、たぶん…紗英ちゃんが可愛いからだよ」
「えっ」
「男は…というか、その年代の男子特有の、好きな子ほどいじめたい?ってやつ?」
「…私には、わからないよ」
「俺も。だって、」


「紗英ちゃんには、優しくしたいもん」


その一言と、暖かい笑顔が、何故か忘れられなくて。

夜助兄がいるときは極力おしゃれして、背筋を伸ばして。背伸びして。

それがただ楽しくて、嬉しくて。







「…っていうわけだから、太陽の気持ちには答えられないの!」

わかった!?と、何が楽しいのか毎日毎日私の家を訪れては日課である素振りを横で眺める太陽に人差し指をむける。

すると太陽は、いつものへらへらとした笑顔で私を見て、

「別に紗英がほかの人を見ていてもいいよ。それは悪い事じゃない。だってそれが紗英なんだ。そんな紗英が俺は好きなんだ。」

と言った。

「…意味わかんない」

報われない思いに、何の意味があるというのか。

太陽の言葉を真っ直ぐ受け止めるにはむず痒くて、でも裏の見えないそれに言い訳なんてできるはずもなく。

耐えきれなくなった私は「走ってくる!」と家を飛び出した。







眩しすぎる
(言い訳くらいさせなさいよね)

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